肩に取り憑かれた悪霊の導きにより私が小会議室に移動すると、そこにはサロンにいなかった円城がいた。
「遅かったね」
「まあな」
今日は円城も一緒なのか。
鏑木は椅子にも座らず立ったまま、自分のカバンからゴソゴソと一冊の雑誌を取り出した。あ、それは私が前に裏切りの代償に没収したラーメン特集の情報誌。あれからまた買い直したのか…。なにやら付箋がいくつも貼ってあるのが見えるんだけど。
「テスト前に約束したラーメン体験だが、熟慮を重ね比較検討した結果、今日俺はこの3つのうちのどれかに行ってみたいと思っている」
そう高らかに宣言をした鏑木が付箋の貼ってあるページを開き、私に赤ペンで丸の付いているお店を指し示す。ここと、ここと、ここ。
私は深々と頭を下げた。
「同行は謹んでご辞退させていただきます」