「うん、そうしようか」
旅先で出会った人と仲良くなるというのも、人生の輝ける一ページだ。
ただ旅行は移動が疲れるという問題がある。
しかし俺には空飛ぶベッドがあるのだ。
寝たまま旅行できるという寝具。いや神具!
この調子で見聞を広げれば、俺の人生はとても有意義なものになるだろう。
「テツヤさん。いつまでベッドの上にいるんですか?」
先に着席したアリアが、首を傾げながら俺を見る。
「いや。出来るだけ少ない歩数で椅子に辿り着く方法を考えていたんだ」
「……それ、逆にめんどくさいじゃないですか!」
「俺もそう思ったところ」
観念した俺は、普通に椅子まで歩いて行った。
【レベル808になりました】
【空中浮遊を習得しました】
なに、空中浮遊だって!?
グータラが捗る!
あとで試してみよう!
いや、しかし。
前、アリアに「生涯を武に捧げてもレベル100に到れるか否か」という話を聞いたけど。
俺、その八倍になってしまった。
この強さ、何に使おう?
というか、強敵が出てこないから、いまいち強くなった気がしない。
まあ、楽ちんでいいけどね。
「店員さん。これと同じエビください」
ミミリィが早速ウエイターを呼びつけ、ロゼッタさんの皿を指差して注文する。
「では、私はカニを!」
「皆、注文決めるの早いなぁ。俺は何にしよう」
ウニが食べたいのだが、今は五月。季節外れだ。
ここはオシャレに決めよう。
「タコのガーリックカルパッチョと、サーモンのマリネをください」
「テツヤさん、何か格好いいものを注文してます! 私も見習って白身魚のレモンクリーム煮というのを追加します!」
「私はエビをひたすら食べたい」
アリアは意識高い系な一面を見せた。
ミミリィは欲望に忠実だ。
「キミたちは随分と元気だな。しかしいくら元気でも、海で遊ぶのはやはり感心しないぞ。明日は控えてくれ。私の心臓が保たない」
ロゼッタさんは深刻そうに言った。
この人もしかして、俺たちのことをずっと見守ってくれていたのかな?
やはり優しい人だ。
「テツヤさん。明日は海に入らず、砂浜で遊ぶことにしましょう」
アリアもロゼッタの優しさを察したらしく、そう提案してきた。
海に入らなくても、砂遊びとかビーチバレーとか、いくらでも楽しむ方法はある。
あと昼寝とか。
ロゼッタさんのために、明日は一生懸命グータラしよう。