帰りの車内で
今回と次回は後日談みたいなものです
北の山脈地帯を背に魔力駆動四輪が砂埃を上げながら南へと街道を疾走する。何年もの間、何千何万という人々が踏み固めただけの道であるが、ウルの町から北の山脈地帯へと続く道に比べれば遥かにマシだ。サスペンション付きの四輪は、振動を最小限に抑えながら快調にフューレンへと向かって進んでいく。
もっとも、前の座席で窓を全開にしてウサミミを風に遊ばせてパタパタさせているシアは、四輪より二輪の方が好きらしく若干不満そうだ。何でも、ウサミミが風を切る感触やハジメにギュッと抱きつきながら肩に顔を乗せる体勢が好きらしい。
運転は当然ハジメ。その隣は定番の席でユエだ。後部座席に、ウィルが乗っている。そのウィルが、ハジメに対し、少々身を乗り出しながら気遣わし気に話しかけた。
「あのぉ~、本当にあのままでよかったのですか? 話すべきことがあったのでは……特に愛子殿には……」