讃良様は鏑木パパとお話をしている最中だった。きっとマニアックな本の話をしているのだろう。これは近づいたらお邪魔かな? すると鏑木会長が先に私 การแปล - 讃良様は鏑木パパとお話をしている最中だった。きっとマニアックな本の話をしているのだろう。これは近づいたらお邪魔かな? すると鏑木会長が先に私 ไทย วิธีการพูด

讃良様は鏑木パパとお話をしている最中だった。きっとマニアックな本の話を

讃良様は鏑木パパとお話をしている最中だった。きっとマニアックな本の話をしているのだろう。これは近づいたらお邪魔かな?
すると鏑木会長が先に私に気が付いた。

「やあ麗華さん、こんばんは。今日は麗華さんが来てくれると聞いて、妻共々楽しみにしていたんだよ」
「こんばんは。本日は素晴らしい桜を拝見できる機会を与えてくださってありがとうございます。とても見事なしだれ桜で感動いたしました」
「麗華さんに喜んでもらえて光栄だな」

相変わらず、笑顔が渋くて素敵です。いいなぁ、こんなに素敵な人が自分のお父さんだったら自慢しまくっちゃうよ。

「讃良様ごきげんよう」
「ごきげんよう、麗華様」

讃良様も笑顔で迎えてくれた。でもやっぱりお邪魔だったんじゃないかなぁ。ずいぶん楽しそうだったし。

「私はおふたりのお話の邪魔をしてしまったのではありませんか?どうぞお気になさらずお話の続きをなさってください」
「邪魔だなんて、そんなことはないよ。この間ドイツで見つけた稀覯本について話していただけだから」

ドイツ?!もしや鏑木にハイネを薦めたのは鏑木パパか?!

「…もしかしてハイネですか?」
「いや?違うけど。麗華さんはハイネが好きなのかい?」
「いいえ」

私はきっぱり返事をした。父親として責任を持って息子の愛読詩集を引き取ってもらえないだろうか。

「今日は貴輝君は来ていないようだね」
「はい。兄は仕事の都合がどうしてもつかなくて。せっかくのご招待なのに申し訳ありませんわ」
「気にしなくていいよ。貴輝君が優秀なのは私もよく知っているからね。麗華さんが来てくれたので充分だよ」

はうっ、笑顔が眩しいです。

「麗華さんは吉祥院会長と兄君が大切に隠しているから、なかなか会えるチャンスがなくてね」
「そんな」
「特にお父様とはとても仲良しなんだってね。この前も手編みの膝掛けをプレゼントしたそうじゃないか。大好きなお父様へって」
「まぁ、ほほほ」

大好きなお父様へなんて言っていないぞ、狸!あの狸、懲りずにあちこちで盛りまくった話をしているようだ。帰ったら覚えていろ。

「子供の頃は、大きくなったらお父様と結婚するなんて言ってたらしいねぇ。いやぁ羨ましい」

はあっ?!話を盛ってるだけでは飽き足らず、完全な嘘まででっち上げているのか、あの狸は!
お兄様ならいざ知らず、お父様と結婚したいなんて、私は絶対に言っていない!冗談じゃないぞ!
病か。お父様、脳の病か!

「麗華さんてファザコンだったの?」

ちっがーーーう!!

「讃良様、とんでもない誤解ですわ。私には身に覚えがありません」

私が必死で否定するも、鏑木パパは鷹揚に頷くだけだ。

「思春期だからねぇ。これは私が悪かったかな。でも麗華さんの気持ちはお父様に伝わっているよ。いいねぇ、父親が大好きな娘さんというのは」

違うのに!結婚相手にあんなメタボ狸を望んでいるなんて思われたら心外だ!
そりゃあ私の父親がこの鏑木パパのような人だったら、お父様と結婚するなんて言ったかもしれない。しかし残念ながら私の父親はあのメタボ狸だ。

「いつまでも父親にべったりで困っていますなんて吉祥院会長が言っていたけどね、本当は喜んでいるんだよ」

あの大ボラ狸がぁっ!!
私は会場にいる嘘つき狸の姿を探した。嘘つき狸は今すぐ狸汁にしてやる!!

これ以上この場にいると、私の心がガリガリ抉られそうなので、すごすごと退散した。
ファザコンの汚名だけはどうにかしないといけない…。私のプライドが許さない。


その後、桜を見がてら会場を彷徨った。
テーブルにはおいしそうな料理が並んでいるけど、やはり食欲がない。
一応来る前に、お兄様からお見舞いでもらったロールケーキを1本だけ食べてきたけど…。これは食中毒からまだ胃腸が完全回復していないのかもなぁ。
飲み物ばかり飲んでいるからトイレが近くて困る。さすがに体も冷えてきたし。温かい飲み物をもらおうかな。ホットチョコレートはもうないだろうから、ミルクティーでいいか。お、ジャスミンミルクティーがあるぞ。

席に座って甘いミルクティーを飲んでいると、私の横に涼しげな和風青年が立った。

「こんばんは、麗華さん」
「…こんばんは」

え、誰だっけ?まずい、思い出せない。年の頃はお兄様と同じくらい?優しそうな雰囲気の、趣味で篠笛とか吹きそうなタイプ。着物似合いそー。って、本当に誰だ?!

「僕は市之倉いちのくら晴斗はるとといいます。麗華さんとこうして話すのは初めてかな。どうぞよろしく」
「まぁそうでしたか。初めまして、吉祥院麗華と申します」

なんだ初対面か。良かった。どうやって忘れていることをバレずに名前を聞き出そうか悩んじゃったよ。

「隣、座ってもいいかな」
「ええ、どうぞ」

市之倉さんが私の隣に座った。手にはシャンパンを持っている。年齢20歳以上確定。

「実は僕は麗華さんにお礼が言いたかったんだ」
「私にお礼ですか?」

はて、私達はほぼ初対面のはずでは?

「僕の姪が麗華さんにお世話になったみたいでね。瑞鸞初等科の早蕨麻央さわらびまおというんだけど」
「あぁ、麻央ちゃん!」

早蕨麻央ちゃんはサマーパーティーで同級生の男の子と一緒に、鐘を鳴らしていた女の子だ。後日ふたりに撮った写真をプレゼントしたらとっても喜んでくれて、私を麗華お姉様なんて呼んで慕ってくれている。あの子は手放しで可愛い!

「麻央がね、パーティーで麗華さんに凄く良くしてもらったって喜んでて、僕にも何度もその話をしてきたんだよ。きれいな鐘を鳴らしたい麻央達の背中を押してくれたんだってね。どうもありがとう。あの子本当に嬉しかったみたいで、麗華さんからもらった写真を部屋に飾って、いろんな人に見せびらかしているんだよ」
「そうでしたか。たいしたことはしていないんですけど、麻央ちゃんがそんなに喜んでくれているなら私も嬉しいですわ。あれから麻央ちゃん達には麗華お姉様なんて呼んでもらって、それも凄く嬉しいんです。可愛い姪御さんですわね」
「ありがとう。僕も初めての姪っ子なので猫可愛がりしてしまっているんです。ついつい欲しがる物をすぐ買ってあげちゃったりして」

姪の話をする市之倉さんはとても優しい笑顔をしていた。
私の周りはアクの強い人間が多いせいか、市之倉さんのような穏やかで優しいひとにはなんだか心が癒されるなぁ。
それからも麻央ちゃんや瑞鸞での学院生活を話した。市之倉さんは名門付属男子校出身で、瑞鸞出身ではなかったので、可愛い麻央ちゃんの通う学校に興味津々のようだ。

「そういえば麗華さん、なにか食べた?さっきから飲み物しか飲んでいないけど。料理をもらってこようか」

う~ん。特におなかは空いていないなぁ。

「いえ大丈夫ですわ」
「そう?あぁそれとも、すでになにか食べた?」
「いいえ。ここに着いてからは、まだなにも食べてはいませんわ」

市之倉さんが驚いた顔をした。時計を見たらもう8時過ぎだ。

「先に夕食を食べてきたの?」
「いいえ」

すると市之倉さんが「麗華さん」と真剣な顔をした。

「麗華さん、きちんと食べてる?ダメだよ食べなきゃ。麗華さん、なんだか折れちゃいそうだよ」
「えっ?!」

折れちゃいそう?!えっ、私が折れちゃいそう?!
“折れちゃいそう”。女の子が一度は言われてみたい台詞ベスト10に必ず入るというこの言葉!(注・麗華ランキング調べ)
麗華さん折れちゃいそうだよ、折れちゃいそうだよ、折れちゃいそうだよ……。
あぁ、市之倉さんの言葉が頭の中でエンドレス。

「折れちゃいそうだなんて…。大丈夫ですわ。これでも三食しっかり食べていますのよ?」
「そう?本当?」

市之倉さんは半信半疑の顔だ。

「フルーツなら食べられるかな?なにか持ってこようか?」
「いえ、本当に平気ですわ。私は元々小食でして…」
「うん、そんな感じに見えるよ。でも本当にちゃんと食べないとダメだよ?」
「はい。お気遣いありがとうございます」

市之倉さんは困ったように笑った。

「麗華さん華奢だから、なんだか心配だよ」
「えっ?!」

華奢!!
女の子が一度は言われてみたい台詞ベスト5に必ず入るというこの言葉!(注・麗華ランキング調べ)華奢!
麗華さん華奢だから、麗華さん華奢だから、麗華さん華奢だから……。
あぁ、夢のよう…。今日、来て良かった!
嬉しすぎて、羽があったらこのまま飛んでいってしまいそうだ!
“折れちゃいそう”“華奢”この二つの言葉だけで、成層圏まで舞い上がっちゃう!

それからも市之倉さんは終始、私を繊細でか弱いお嬢様のように扱ってくれた。「寒くない?」とか「疲れてない?」と心配してくれる。
考えてみれば、私は今までこういった扱いをあまりされたことがない。…ぐふふ、嬉しい。
どうしよう、私、市之倉さんを好きになってしまいそうだ…。


吉祥院麗華16歳。新しい恋の予感です。
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