私は一言二言彼に謝りながら、相手の具合を見ようと目をやると、そこには、長身でがっしりとした、体躯の大柄な男が立ち竦んでいた。
薄暗く、コートのフードで頭髪を覆っていたので表情や髪型が良くわからなかったが、非常に逞しい眉の、鼻梁のたかい、そしてきつい眼差しをした男であった。
相手も私にすみません、と消え入りそうな、しかし芯が通る声でそう告げると、慌ててエレベーターの中に入り込み、しりもちしたままに座りこんでいる私に手を貸そうとしたのか、彼はポケットから手を差し出そうとした。
が、思い留まったように腕をそのままに、手を貸そうとはしなかった。
その代わり、もういちど、今度ははっきりと謝罪の言葉を僕にかけると、深く頭を下げた。