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※ 帝国暦四百三十一年五月……クロノはハシェルの南側にある畑を眺めてい
※
帝国暦四百三十一年五月……クロノはハシェルの南側にある畑を眺めていた。一辺が百メートルの畑が三つ、一つは木の枝が伸びていて、残る二つはビート畑だ。無事に種まきも終わり、可愛らしい緑の葉が地面から生えている。
あれ？ とクロノは首を傾げた。おかしい。紙の原料となる木を栽培するための畑だったのにビート畑が二つもある。
「……シオンさん？」
「どうかなさったんですか？」
クロノが問い掛けると、シオンも不思議そうに首を傾げた。
「クローバーの栽培はどうかな？」
「はい、問題ありません。ただ、クローバーを食べさせると、家畜の育ちが良いという噂が流れているらしくて、ほ、他にも乳の出が良くなるとか。私が試した時は、そこまで確認していなくて」
自分を責めているのか、シオンは俯いて肩を震わせた。
「理屈は分からないけど、気にする必要ないんじゃないかな」
「そうですか？」
クロノがシオンと畑を眺めると、カチャリと小さな音が響いた。
振り向くと、そこには完全装備のタイガが立っていた。
防具は新調され、腰のベルトにはポーチが二つ着けられている。
ポーチの中身は応急処置を施すための道具一式と固パンである。
『クロノ様、出発の準備が整ったでござる』（がう）
「すぐに行くよ。シオンさんは畑の管理と救貧院の経営をよろしく」
城壁伝いに門のある場所に出ると、箱馬車が一台、幌馬車が十台、その周辺を取り囲むように騎兵が七騎並んでいた。
七騎中六騎はフェイが率いる軽騎兵、残る一騎は弓兵から弓騎兵に華麗なジョブチェンジを果たしたレイラだ。
レイラが装備しているのは短めの機工弓で、これはゴルディが工房の倉庫に保管していたものだ。
弓兵が装備している機工弓に比べると、射程距離と破壊力に劣るが、至近距離なら鋼の鎧を貫通する威力があるらしい。
たった一騎の弓騎兵が戦況を左右するとは思っていないが、レイラは優れた視力の持ち主なので斥候として申し分ない働きをしてくれるだろう。
その他、タイガ率いる歩兵が四十人、エルフとハーフエルフの弓兵が十人という構成である。
「むぅ……どうして、私が留守番をしなければならないんだ」
「ティリア、自分の立場を理解してる？」
ティリアはクロノに歩み寄ると、不満そうに唇を尖らせた。
「私が果たすべき役割は新貴族との関係強化だ」
「いや、多分、それって転地療養と同じレベルの建前だと思うんだけど。でも、暗殺されてないってことは利用価値があると思って泳がされているのかな？」
「ほ、本人を目の前に暗殺とか言うな！」
ティリアは顔を真っ赤にして怒鳴った。
「大体、お前はデリカシーが足りない！ 昨夜だって！ 昨夜だって……もう少し優しくしてくれても良いじゃないか」
ティリアは恥ずかしそうに頬を染め、不満そうに呟いた。
「早く戻って来てくれよ」
次に声を掛けてきたのはケインだった。
「最低でも二ヶ月は戻って来れないよ」
クロノが言うと、ケインは深々と溜息を吐いて髪を掻き毟った。
「領主代行なんざワイズマン先生か、そこの皇女様に任せりゃ良いじゃねーか」
そんなことを言いつつ、しっかりと仕事をするのがケインなのだ。
「そんな勤勉なのに、どうして盗賊なんてやってたの？」
「俺のことは良いから、生きて戻って来いよ」
「大丈夫であります」
ケインの台詞に反応したのはフェイだった。
「クロノ様は私がお守りするであります」
「んなこと言って、盗賊に袋叩きにあったんだろ？」
「あの時のままではないであります！」
フェイは馬上で胸を張って言った。
「ほら、さっさと乗っちまいなよ」
箱馬車の扉を開け、普段より露出度を抑えた女将が言った。
「気合い入ってるね？」
クロノは箱馬車に乗り込み、女将を見つめながら言った。
「久しぶりの里帰りなもんでね」
「女将って南辺境の出身なの？」
「言ってなかったっけかね。城で働いている時に軍人だった旦那と知り合ってね。エラキス侯爵領に転属ってんで、追い掛けて強引に口説き落としたんだよ。いや、あん時はあたしも若かったね」
そこから苦労して二人で店を建てたのか、とクロノは照れ臭そうにする女将を見つめた。
「……旦那さんに申し訳ないことしちゃったな」
「どうして、アンタが申し訳なく思うんだい？」
「そんな熱愛の末に結ばれたのに寝取っちゃったから」
クロノが見つめて言うと、女将は顔を真っ赤にして口をパクパクさせた。
「な、なな、何を言ってるんだい！」
女将はクロノから顔を背けた。
「さあ、出発だ」
箱馬車の扉を閉め、クロノは右目を撫でながら呟いた。
※
ケフェウス帝国の東北、ベテル山脈と海に挟まれた地域に存在する十の都市国家は自由都市国家群と総称されている。
自由都市国家群の成立は帝国暦四百年にまで遡る。当時、ケフェウス帝国は皇兄派と皇弟派に分かれて内戦を繰り広げていたが、帝国北東部の領地を治めていた十人の貴族はどちらの陣営にも加わろうとしなかった。
彼らが動いたのは蛮族が帝国に侵入し、混乱に拍車が掛かってからだ。いや、それ以前から彼らは自分達の目的を果たすために水面下で準備を進めていたのだ。その目的とは帝国からの独立だった。
だが、彼らとて馬鹿ではない。交通の要地を抑え、莫大な財産を有していても、それを守る力がなければ何の意味もないと理解していた。
まず、彼らは駐留していた軍を懐柔した。もっとも、当時の軍は領主の私費で維持されていたから、帝国に寝返らないように雇用条件を引き上げ、裏切りそうな人物を排除したくらいだろう。
次に自衛の名目でベテル山脈に住んでいた蛮族を傭兵として雇い入れ、戦力の増強を図った。
ケフェウス帝国黎明期にベテル山脈に追いやられた歴史的経緯から反発する者も少なくなかったらしいが、貧困から逃れるために傭兵として生きる道を選んだ。
そして、彼らは独立を宣言した。経済・軍事同盟を結び、自由都市国家群と呼ばれる勢力を築き上げたのである。
その後、十人の貴族の内、ある者は商人として栄華を極め、ある者は商人の娘を妻として迎え、ある者は没落して、その地位を奪われた。
どの貴族も商人と浅からぬ縁を持っていた点を鑑みれば本当に独立を欲していたのが誰なのか察しが付く。
以上の経緯を踏まえると、経済・軍事同盟の影響が及ぶ範囲……勢力圏こそが自由都市国家群であると言える。
まあ、この連中は自分達こそ自由都市国家群って言いかねないけど、とエレインは穏やかな笑みを浮かべて十一対の視線を受け止めた。
自由都市国家群東端の都市・イーメイは香辛料や絹などの交易で古くから栄えた街である。
エレインがいるのはイーメイの中心部にある館の一室だ。その館はケフェウス帝国の元貴族であり、イーメイの商人ギルドを支配するソークの住居でもある。
目眩を起こしそうなほど高い天井と寒々しささえ感じさせる広い室内……中心に馬蹄型の机が置かれ、ソークは自由都市国家群の中央に、十人の男が左右を固めるように座している。
ソークを含めた十人の男は各都市国家の元首であり、都市国家の全商人を支配するギルドマスターだ。
取り扱っている商品に違いはあっても、やっていることは基本的に変わらない。
職人を囲い込み、商人を支配して共存共栄の名の下に商品の価格を設定し、逆らった職人と商人をあらゆる手段を講じて排斥する。商人ギルドのギルドマスターとはそういうものなのだ。
ちなみにエレインの席はない。エレインは都市国家を治める元首ではないし、ギルドマスターと言っても娼婦という限られた職業を纏めているだけに過ぎないという理屈らしい。
その理屈通りならば傭兵ギルドのギルドマスターも席に座る資格はないはずだが、娼婦と傭兵では自由都市国家群に対する貢献度が違うそうだ。
娼婦が自分達と肩を並べるのが気に食わないって言えば良いのに、と考えながらもエレインは穏やかな笑みを崩さなかった。
自分の立場を弁えていると思われていた方が今は都合が良いし、些細な情報でも海千山千の爺さんどもに与えるつもりはない。
情報は金と同等の価値を持つ。ベッドの上で漏らす一言、情事の前、その後で男達と交わす他愛もない遣り取り……そんな言葉に価値があると気づき、それらを利用してエレインはのし上がってきた。
今も規模が大きくなっただけでやっていることは一介の娼婦だった頃と変わらない。自由都市国家群やケフェウス帝国にある息の掛かった娼館から情報を集め、高く買ってくれる相手に売る。
「……エラキス侯爵領の様子はどうだった？」
「あまり前と変わらないわよ」
労いの言葉の一つも掛けて欲しいわね、とエレインはソークに答えた。
「そのようなことを聞いているのではない！ 紙はどうだったかを聞いているのだ！」
机の端に座っていた老人が顔を真っ赤にして叫んだ。
老人……トロワ・クラフトはケフェウス帝国に紙を輸出している。
紙だけを扱っている訳ではないのだが、クロノを商売敵として認識しているのだ。
「心配する必要はないんじゃないかしら？ 紙を造っていると言っても、侯爵邸の庭に小さな工房を構えているだけだもの」
今はね、とエレインは心の中で付け加えた。
クロノの紙工房は生産量が限られているが、今よりも大きな工房を構えたり、製法が公開されて帝国各地で紙を生産するようになったりすれば、トロワの紙など誰も買わなくなるだろう。
「……砂糖も作っていると聞いたが？」
ソークが言うと、ガタッ！ と誰かが体を震わせた。
「ええ、作っているみたいね。マイルズから聞いた話によれば黄土神殿の神官を囲い込んだみたいよ」
それだけじゃなくて塩も作っているのよね、とエレインは心の中で付け加える。
どちらも今は問題ないが、砂糖の原料となる野菜を作る畑の面積が増えれば砂糖を取り扱っているギルドは大打撃を受けるし、神聖アルゴ王国に塩を輸出するようになれば塩を取り扱っているギルドも大打撃を受ける。
つまり、クロノが領地を繁栄させればさせるほど自由都市国家群のギルドは衰退していくのである。
「……エラキス侯爵は女好きと聞いたが？」
「ええ、エロガキよ」
誘っても寄ってこないけど、胸とか、太股とか見てるのよね、とエレインはソークに答えた。
「でも、一応、分別はあるみたいよ？」
「……厄介な男だ」
ええ、あの子は奴隷も躾けられないほど甘いけれど、何を背負っているか理解しているし、そのためになら何でもする悪魔みたいな子よ。あのゾッとするほど冷たい目を一度でも見ていたら、そんな所で安穏としていられないわよ、とエレインは穏やかな笑みを維持した。
痛々しいほどの沈黙が舞い降りる。
「まあ、まあ、そんな深刻な顔をせずとも良いではありませんか」
沈黙を破ったのはでっぷりと肥え太った中年男だった。
布を頭に巻いた男は奴隷商人……奴隷だけを取り扱っている訳ではなく、金貸しも営んでいる。
ある意味で、この男こそ自由都市国家群の象徴かも知れない。一介の商人から自分の才覚と幾ばくかの幸運に恵まれ、ギルドマスターの地位にまで成り上がったのだから。
他のギルドマスターと違い、この男はクロノの領地が発展すれば自分の利益に繋がると考えているのだろう。
「ここでエラキス侯爵の処遇について話し合っても意味がない。エレイン、下がれ」
「ええ、そうするわ」
労いの言葉一つ掛けてくれてもバチは当たらないでしょうに、とエレインは穏やかな笑みを浮かべたまま部屋を後にした。
白い、ただ白いだけで生活感のない廊下をエレインは穏やかな笑みを維持したまま歩いていた。
エレインは立ち止まり、
「……私に何か用かしら？」
「ああ、エラキス侯爵領について話を聞きたい」
振り向くと、傭兵ギルドのギルドマスター……シフはエレインと肩を並べて囁くような声音で言った。
傭兵ギルド……身も蓋もない表現をすれば荒事専門の口入れ屋である。元々はベテル山脈の諸部族によって構成されていたが、傭兵団や流れ者、失業者を取り込み、ギルドに所属する傭兵に仕事を斡旋して仲介料を取るようになった。
ギルドマスターであるシフは三十代半ば、肌は日に焼けていて引き締ま
帝国暦四百三十一年五月……クロノはハシェルの南側にある畑を眺めていた。一辺が百メートルの畑が三つ、一つは木の枝が伸びていて、残る二つはビート畑だ。無事に種まきも終わり、可愛らしい緑の葉が地面から生えている。
あれ？ とクロノは首を傾げた。おかしい。紙の原料となる木を栽培するための畑だったのにビート畑が二つもある。
「……シオンさん？」
「どうかなさったんですか？」
クロノが問い掛けると、シオンも不思議そうに首を傾げた。
「クローバーの栽培はどうかな？」
「はい、問題ありません。ただ、クローバーを食べさせると、家畜の育ちが良いという噂が流れているらしくて、ほ、他にも乳の出が良くなるとか。私が試した時は、そこまで確認していなくて」
自分を責めているのか、シオンは俯いて肩を震わせた。
「理屈は分からないけど、気にする必要ないんじゃないかな」
「そうですか？」
クロノがシオンと畑を眺めると、カチャリと小さな音が響いた。
振り向くと、そこには完全装備のタイガが立っていた。
防具は新調され、腰のベルトにはポーチが二つ着けられている。
ポーチの中身は応急処置を施すための道具一式と固パンである。
『クロノ様、出発の準備が整ったでござる』（がう）
「すぐに行くよ。シオンさんは畑の管理と救貧院の経営をよろしく」
城壁伝いに門のある場所に出ると、箱馬車が一台、幌馬車が十台、その周辺を取り囲むように騎兵が七騎並んでいた。
七騎中六騎はフェイが率いる軽騎兵、残る一騎は弓兵から弓騎兵に華麗なジョブチェンジを果たしたレイラだ。
レイラが装備しているのは短めの機工弓で、これはゴルディが工房の倉庫に保管していたものだ。
弓兵が装備している機工弓に比べると、射程距離と破壊力に劣るが、至近距離なら鋼の鎧を貫通する威力があるらしい。
たった一騎の弓騎兵が戦況を左右するとは思っていないが、レイラは優れた視力の持ち主なので斥候として申し分ない働きをしてくれるだろう。
その他、タイガ率いる歩兵が四十人、エルフとハーフエルフの弓兵が十人という構成である。
「むぅ……どうして、私が留守番をしなければならないんだ」
「ティリア、自分の立場を理解してる？」
ティリアはクロノに歩み寄ると、不満そうに唇を尖らせた。
「私が果たすべき役割は新貴族との関係強化だ」
「いや、多分、それって転地療養と同じレベルの建前だと思うんだけど。でも、暗殺されてないってことは利用価値があると思って泳がされているのかな？」
「ほ、本人を目の前に暗殺とか言うな！」
ティリアは顔を真っ赤にして怒鳴った。
「大体、お前はデリカシーが足りない！ 昨夜だって！ 昨夜だって……もう少し優しくしてくれても良いじゃないか」
ティリアは恥ずかしそうに頬を染め、不満そうに呟いた。
「早く戻って来てくれよ」
次に声を掛けてきたのはケインだった。
「最低でも二ヶ月は戻って来れないよ」
クロノが言うと、ケインは深々と溜息を吐いて髪を掻き毟った。
「領主代行なんざワイズマン先生か、そこの皇女様に任せりゃ良いじゃねーか」
そんなことを言いつつ、しっかりと仕事をするのがケインなのだ。
「そんな勤勉なのに、どうして盗賊なんてやってたの？」
「俺のことは良いから、生きて戻って来いよ」
「大丈夫であります」
ケインの台詞に反応したのはフェイだった。
「クロノ様は私がお守りするであります」
「んなこと言って、盗賊に袋叩きにあったんだろ？」
「あの時のままではないであります！」
フェイは馬上で胸を張って言った。
「ほら、さっさと乗っちまいなよ」
箱馬車の扉を開け、普段より露出度を抑えた女将が言った。
「気合い入ってるね？」
クロノは箱馬車に乗り込み、女将を見つめながら言った。
「久しぶりの里帰りなもんでね」
「女将って南辺境の出身なの？」
「言ってなかったっけかね。城で働いている時に軍人だった旦那と知り合ってね。エラキス侯爵領に転属ってんで、追い掛けて強引に口説き落としたんだよ。いや、あん時はあたしも若かったね」
そこから苦労して二人で店を建てたのか、とクロノは照れ臭そうにする女将を見つめた。
「……旦那さんに申し訳ないことしちゃったな」
「どうして、アンタが申し訳なく思うんだい？」
「そんな熱愛の末に結ばれたのに寝取っちゃったから」
クロノが見つめて言うと、女将は顔を真っ赤にして口をパクパクさせた。
「な、なな、何を言ってるんだい！」
女将はクロノから顔を背けた。
「さあ、出発だ」
箱馬車の扉を閉め、クロノは右目を撫でながら呟いた。
※
ケフェウス帝国の東北、ベテル山脈と海に挟まれた地域に存在する十の都市国家は自由都市国家群と総称されている。
自由都市国家群の成立は帝国暦四百年にまで遡る。当時、ケフェウス帝国は皇兄派と皇弟派に分かれて内戦を繰り広げていたが、帝国北東部の領地を治めていた十人の貴族はどちらの陣営にも加わろうとしなかった。
彼らが動いたのは蛮族が帝国に侵入し、混乱に拍車が掛かってからだ。いや、それ以前から彼らは自分達の目的を果たすために水面下で準備を進めていたのだ。その目的とは帝国からの独立だった。
だが、彼らとて馬鹿ではない。交通の要地を抑え、莫大な財産を有していても、それを守る力がなければ何の意味もないと理解していた。
まず、彼らは駐留していた軍を懐柔した。もっとも、当時の軍は領主の私費で維持されていたから、帝国に寝返らないように雇用条件を引き上げ、裏切りそうな人物を排除したくらいだろう。
次に自衛の名目でベテル山脈に住んでいた蛮族を傭兵として雇い入れ、戦力の増強を図った。
ケフェウス帝国黎明期にベテル山脈に追いやられた歴史的経緯から反発する者も少なくなかったらしいが、貧困から逃れるために傭兵として生きる道を選んだ。
そして、彼らは独立を宣言した。経済・軍事同盟を結び、自由都市国家群と呼ばれる勢力を築き上げたのである。
その後、十人の貴族の内、ある者は商人として栄華を極め、ある者は商人の娘を妻として迎え、ある者は没落して、その地位を奪われた。
どの貴族も商人と浅からぬ縁を持っていた点を鑑みれば本当に独立を欲していたのが誰なのか察しが付く。
以上の経緯を踏まえると、経済・軍事同盟の影響が及ぶ範囲……勢力圏こそが自由都市国家群であると言える。
まあ、この連中は自分達こそ自由都市国家群って言いかねないけど、とエレインは穏やかな笑みを浮かべて十一対の視線を受け止めた。
自由都市国家群東端の都市・イーメイは香辛料や絹などの交易で古くから栄えた街である。
エレインがいるのはイーメイの中心部にある館の一室だ。その館はケフェウス帝国の元貴族であり、イーメイの商人ギルドを支配するソークの住居でもある。
目眩を起こしそうなほど高い天井と寒々しささえ感じさせる広い室内……中心に馬蹄型の机が置かれ、ソークは自由都市国家群の中央に、十人の男が左右を固めるように座している。
ソークを含めた十人の男は各都市国家の元首であり、都市国家の全商人を支配するギルドマスターだ。
取り扱っている商品に違いはあっても、やっていることは基本的に変わらない。
職人を囲い込み、商人を支配して共存共栄の名の下に商品の価格を設定し、逆らった職人と商人をあらゆる手段を講じて排斥する。商人ギルドのギルドマスターとはそういうものなのだ。
ちなみにエレインの席はない。エレインは都市国家を治める元首ではないし、ギルドマスターと言っても娼婦という限られた職業を纏めているだけに過ぎないという理屈らしい。
その理屈通りならば傭兵ギルドのギルドマスターも席に座る資格はないはずだが、娼婦と傭兵では自由都市国家群に対する貢献度が違うそうだ。
娼婦が自分達と肩を並べるのが気に食わないって言えば良いのに、と考えながらもエレインは穏やかな笑みを崩さなかった。
自分の立場を弁えていると思われていた方が今は都合が良いし、些細な情報でも海千山千の爺さんどもに与えるつもりはない。
情報は金と同等の価値を持つ。ベッドの上で漏らす一言、情事の前、その後で男達と交わす他愛もない遣り取り……そんな言葉に価値があると気づき、それらを利用してエレインはのし上がってきた。
今も規模が大きくなっただけでやっていることは一介の娼婦だった頃と変わらない。自由都市国家群やケフェウス帝国にある息の掛かった娼館から情報を集め、高く買ってくれる相手に売る。
「……エラキス侯爵領の様子はどうだった？」
「あまり前と変わらないわよ」
労いの言葉の一つも掛けて欲しいわね、とエレインはソークに答えた。
「そのようなことを聞いているのではない！ 紙はどうだったかを聞いているのだ！」
机の端に座っていた老人が顔を真っ赤にして叫んだ。
老人……トロワ・クラフトはケフェウス帝国に紙を輸出している。
紙だけを扱っている訳ではないのだが、クロノを商売敵として認識しているのだ。
「心配する必要はないんじゃないかしら？ 紙を造っていると言っても、侯爵邸の庭に小さな工房を構えているだけだもの」
今はね、とエレインは心の中で付け加えた。
クロノの紙工房は生産量が限られているが、今よりも大きな工房を構えたり、製法が公開されて帝国各地で紙を生産するようになったりすれば、トロワの紙など誰も買わなくなるだろう。
「……砂糖も作っていると聞いたが？」
ソークが言うと、ガタッ！ と誰かが体を震わせた。
「ええ、作っているみたいね。マイルズから聞いた話によれば黄土神殿の神官を囲い込んだみたいよ」
それだけじゃなくて塩も作っているのよね、とエレインは心の中で付け加える。
どちらも今は問題ないが、砂糖の原料となる野菜を作る畑の面積が増えれば砂糖を取り扱っているギルドは大打撃を受けるし、神聖アルゴ王国に塩を輸出するようになれば塩を取り扱っているギルドも大打撃を受ける。
つまり、クロノが領地を繁栄させればさせるほど自由都市国家群のギルドは衰退していくのである。
「……エラキス侯爵は女好きと聞いたが？」
「ええ、エロガキよ」
誘っても寄ってこないけど、胸とか、太股とか見てるのよね、とエレインはソークに答えた。
「でも、一応、分別はあるみたいよ？」
「……厄介な男だ」
ええ、あの子は奴隷も躾けられないほど甘いけれど、何を背負っているか理解しているし、そのためになら何でもする悪魔みたいな子よ。あのゾッとするほど冷たい目を一度でも見ていたら、そんな所で安穏としていられないわよ、とエレインは穏やかな笑みを維持した。
痛々しいほどの沈黙が舞い降りる。
「まあ、まあ、そんな深刻な顔をせずとも良いではありませんか」
沈黙を破ったのはでっぷりと肥え太った中年男だった。
布を頭に巻いた男は奴隷商人……奴隷だけを取り扱っている訳ではなく、金貸しも営んでいる。
ある意味で、この男こそ自由都市国家群の象徴かも知れない。一介の商人から自分の才覚と幾ばくかの幸運に恵まれ、ギルドマスターの地位にまで成り上がったのだから。
他のギルドマスターと違い、この男はクロノの領地が発展すれば自分の利益に繋がると考えているのだろう。
「ここでエラキス侯爵の処遇について話し合っても意味がない。エレイン、下がれ」
「ええ、そうするわ」
労いの言葉一つ掛けてくれてもバチは当たらないでしょうに、とエレインは穏やかな笑みを浮かべたまま部屋を後にした。
白い、ただ白いだけで生活感のない廊下をエレインは穏やかな笑みを維持したまま歩いていた。
エレインは立ち止まり、
「……私に何か用かしら？」
「ああ、エラキス侯爵領について話を聞きたい」
振り向くと、傭兵ギルドのギルドマスター……シフはエレインと肩を並べて囁くような声音で言った。
傭兵ギルド……身も蓋もない表現をすれば荒事専門の口入れ屋である。元々はベテル山脈の諸部族によって構成されていたが、傭兵団や流れ者、失業者を取り込み、ギルドに所属する傭兵に仕事を斡旋して仲介料を取るようになった。
ギルドマスターであるシフは三十代半ば、肌は日に焼けていて引き締ま
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※ Imperial Calendar 5/431... Chrono was watching the field is on the South side of the Hasher. Side branches growing 100-meter field is 3, is one thing, two things remain beet fields. Successfully seeding, lovely green leaves growing from the ground. What's this? With tilted head Chrono. Funny. Farm for growing trees become the raw material for paper to two different beet fields;「…… Sion's? 」"Whether he is? 」 Chrono /a/ and Zion also curiously tilted head."The cultivation of clover?? 」"Yes, no problem. Livestock breeding is good to eat clover, however, and it has been rumored, cheeks, or other milk is better. Even when I tried that far " Zion don't do I kick myself, began to tremble."I don't have to worry about, but I don't understand the reason it's not?""That's what? 」 Views of Zion and field Chrono and sounded Zachary and little noise. Turned around and is fully equipped with Taiga stood there. Two pouch worn on the waist belt, and new armor. Pouch contents are tools to aid in complete and solid-bread."Chrono-like the departure in the ready and your waist' （ subject ）"I'll go soon. Shion regards management of vineyard management and Poorhouse ' Gate locations along the city walls, and 箱馬車 is one, surrounded around wagon train enough units, so the cavalry Seventh Cavalry lined up. Seven's cavalry in six Cavalry light cavalry led by Faye, Ikki remain Layla from Archer Cavalry played a brilliant job change. Short machine engineering bow is equipped with Layla, it's kept a gold factory warehouse. There power to penetrate steel armor if noise is inferior compared to the Archer is equipped with aircraft engineering bow range and destructive power. Only will so am not going to make or break battle Ikki Cavalry, but Layla is a man of vision as a Scout on the impeccable work. Infantry, those rates are 40 people, elves and half-Elf Archer is in the configuration of dozens."Thank you... Why, I must voice I'm '"I understand the tyria and position? 」 And Tilia peered to the Chrono to complain that he pouted lips.My role is the new nobility and ties"I think no, maybe, supposedly of the same level as the air is it. However, I would not been assassinated? that is worth using, go for a swim, have? 」"Miho, a person say or assassination in front of! 」 Tilia yelled red in the face."Roughly, you lack delicacy! Coz last night! Coz last night. Also being a bit kind to me no good? " Tilia tinted cheeks shyly, to complain that muttered."Soon come back!' It was Kane has been hailed in the next.Can't come back at least two months. Chrono says, Kane and deeply sigh, 掻ki毟tta hair.' Lords acting like Prevod 任serya Wiseman teacher or so Princess like it's good?-? ' While saying such a thing to work with Kane's."So diligent, but why did what thieves? 」"Live from my good and come back.'See all right in' Reacting to the words of Caine was Faye."To protect a Chrono I have '"It is said that the thieves were scared, right?? 」"Until that time not be in! 」 Faye on horseback with confidence, said."Hey, hurry up and carried away or that. ' Open the 箱馬車 door, less skimpy than usual mistress said."I'll go yell? 」 Chrono 箱馬車, watching the landlady said."A homecoming for a long time.""Southern frontier from a landlady? 」"Didn't say that again?. I met my husband was a soldier when working in the Castle. Arakis Marquis territory transferred was I forcibly one-sided pursuit of him in. No, jam when I'm young. " Struggled from there, built a store on two people, and Chrono looked embarrassed to Okami.「…… I'm sorry that her husband is ""Why are you sorry for?? 」From my 寝取tchi I was connected at the end so madly in love " Says staring at the Chrono and Okami will face red with a packpack that mouth.See, that's, what I'm saying?! 」 The landlady turned away from the Chrono."Come on, departure. Close the doors of 箱馬車, Chrono mutter patted his right eye.※ City-State of dozens in the region sandwiched between Northeast Cepheus Empire Bethel mountains and sea are collectively known as the free State towns. Formation of the free State towns Imperial Calendar 400 years before dating. And the nobles ruled the Empire Northeast territory divided into Imperial brother sect and the Emperor's brother Cepheus Empire at that time, was engaged in a civil war, but dozens get involved in both camps did not. Barbarians invade empire they moved from hanging over the spur confusion. It's under the surface of the water was gearing up for Yes, ago they serve their purpose. The goal was independence from the Empire. However, as idiots and they don't. Was understanding and ability to protect traffic important place, a vast fortune, even though it means nothing without. First of all, they were appeased army was stationed. 寝返ranai, however, army at that time was maintained in Lords financed from Empire to raise employment conditions, eliminate the figures seem a betrayal?. Hired as a mercenary barbarian then lived in Bethel mountains on the pretext of self-defense, aimed at the reinforcement of equipment. Chose to escape poverty but rebounded to Cepheus Empire Dawn was relegated to a Bethel mountains for historical reasons as well did not seems to be living as a mercenary. Then they declared independence. In built to tie economic and military alliance, called the free State towns. Afterwards, in dozens of aristocrats, who has as a merchant glory, who has picked up the merchants daughter as a wife, downfall is the one who, deprived of its status. Of who wanted independence really considering how nobles also had close ties with merchants point with you can imagine. Considering the history of more than economic and military alliance is impacted. Only the sphere of said free State towns. 11 vs. gaze caught, and well, this guys is their own free State towns say could end up, but Elaine smiling calm. City of Liberty City National Group at the East end and yimei in city flourished since ancient times in the spice and silk trade. Is Elaine's room yimei centrally located hotel. There is, former nobility of Cepheus Empire that dominate the merchant Guild of yimei soak it. The Sunbeam nearly high ceilings and cold staff to feel supported. Focusing on horseshoe-shaped desk, soak sits in the Central free State towns left to solidify enough man. Ten men including Salk's Guild master head of each city-State, which govern all merchants of the City State. Difference remains, even if doing that is basically the products. Merchant and artisan craftsmen dominated enclosure, merchant and set the price under the name of coexistence and co-prosperity, defied any means necessary, to boycott. And Guild master of the merchant Guild and that's what's. By the way no Elaine's seat. Seems to be just that summarized the limited professional whores that Elaine is not head of State govern the City-State and the Guild master to say that reason. Should not qualify if its reason as mercenary Guild Guild master even sit in, with whores and mercenary looks different contribution to the free State towns. While considered repugnant in par with their whores if it says good, Elaine lip a gentle smile. Not going to give in even trivial information to Toya's crazy like a Fox, and who seemed to know my position right now is good. Information has a value equivalent of gold. Word leaked on the bed, innocent before the affair, then between you and the men are not deteriorated. To realize such a Word is worth, Elaine has worked to take advantage of them. Just now also becomes larger when I was a mere whore is doing the same. Collect information from licensed prostitution took breath located in Liberty City State group and Cepheus Empire, will buy more to sell.「…… How was the arakis Marquis area appearance? 」Does not change much before and done. " Word phoned me one multiplied by I want done, and Elaine replied to soak.' Wouldn't have heard something like that! Listen to what the paper! 」 An old man was sitting on the edge of the desk shouted to bright red, face. An old man. Trois craft has exported paper to Cepheus Empire. It is not dealing with just paper, but "recognized as a competitor."I wonder if it's not I don't need to worry about? Only has a garden of Marquis in small workshop also said that building the paper stuff ' Now splash, and Elaine said in mind. Chrono paper workshop are limited production, but now than they a big Studio, would like to or if the paper throughout the Empire produced, published methods Trois paper No wrenching.「…… I heard that make sugar? 」 Salk said, gatatsu! And someone has resonated through the body."Yes, making like it. I surrounded the loess Temple priest according to the story I heard from Myles! ' It is not only that salt also creates the right?, Elaine added in mind. Guilds get Guild deals with sugar increases the area of field vegetables and raw sugar will neither now is fine, but to make a big hit, if export salt to the Kingdom of Holiness ARGO sells salt and even suffer a severe blow. In a Word, so make you prosperous territory Chrono society Guild of liberty city.「…… I heard arakis Marquis midgets? 」"Yes, erogaki! ' Doesnt even to ask, but I see breasts or thighs or guess, and Elaine replied to soak."But once the sorting is like? 」「…… Nasty man. " Yes, child like the devil is carrying what she can't discipline slaves too much sweet, but we do understand, you do whatever you need to. And quietude at such a place that shockingly cold eyes after seeing at least once they are done, and Elaine maintained a serene smile. Painfully of silence descends."Well, well, that serious face even better? ' It was fat and middle-aged man broke the silence. The man wrapped in the head slave traders... Doesn't deal with only slaves, lenders are being operated. In a sense, this man's symbol of liberty city. Something from a mere merchant and his knack of's good fortune, worked his way up to the Guild master position. Might think would lead to their interests and Guild master of the other differences, this man develops a Chrono."Talking about treatment of arakis Marquis here makes no sense. Elaine, go down '"Yes, I'll do that" Slam it wouldn't hurt me multiply words phoned me one thing Elaine and parting floated a gentle smile leave room after. While maintaining a calm smile Elaine white, white only, no sense of living Hall was walking. Stopped the Elaine,「…… I wonder for what? 」'Oh, about arakis Marquis territory to listen to" I turned around, and Guild master of the mercenaries Guild. Schiff said in the voice side whispered to Elaine. Mercenaries Guild. If no body and lid in ruffian specialist an employment agency. Organises work on mercenaries originally consisted of Bethel mountain tribes, the mercenaries and Drifter, unemployed persons, belong to the Guild, take the mediation fee. Schiff in the Guild master is the mid-thirties, skin on and burnt policy tightening.
การแปล กรุณารอสักครู่..
※
帝国暦四百三十一年五月……クロノはハシェルの南側にある畑を眺めていた。一辺が百メートルの畑が三つ、一つは木の枝が伸びていて、残る二つはビート畑だ。無事に種まきも終わり、可愛らしい緑の葉が地面から生えている。
あれ？ とクロノは首を傾げた。おかしい。紙の原料となる木を栽培するための畑だったのにビート畑が二つもある。
「……シオンさん？」
「どうかなさったんですか？」
クロノが問い掛けると、シオンも不思議そうに首を傾げた。
「クローバーの栽培はどうかな？」
「はい、問題ありません。ただ、クローバーを食べさせると、家畜の育ちが良いという噂が流れているらしくて、ほ、他にも乳の出が良くなるとか。私が試した時は、そこまで確認していなくて」
自分を責めているのか、シオンは俯いて肩を震わせた。
「理屈は分からないけど、気にする必要ないんじゃないかな」
「そうですか？」
クロノがシオンと畑を眺めると、カチャリと小さな音が響いた。
振り向くと、そこには完全装備のタイガが立っていた。
防具は新調され、腰のベルトにはポーチが二つ着けられている。
ポーチの中身は応急処置を施すための道具一式と固パンである。
『クロノ様、出発の準備が整ったでござる』（がう）
「すぐに行くよ。シオンさんは畑の管理と救貧院の経営をよろしく」
城壁伝いに門のある場所に出ると、箱馬車が一台、幌馬車が十台、その周辺を取り囲むように騎兵が七騎並んでいた。
七騎中六騎はフェイが率いる軽騎兵、残る一騎は弓兵から弓騎兵に華麗なジョブチェンジを果たしたレイラだ。
レイラが装備しているのは短めの機工弓で、これはゴルディが工房の倉庫に保管していたものだ。
弓兵が装備している機工弓に比べると、射程距離と破壊力に劣るが、至近距離なら鋼の鎧を貫通する威力があるらしい。
たった一騎の弓騎兵が戦況を左右するとは思っていないが、レイラは優れた視力の持ち主なので斥候として申し分ない働きをしてくれるだろう。
その他、タイガ率いる歩兵が四十人、エルフとハーフエルフの弓兵が十人という構成である。
「むぅ……どうして、私が留守番をしなければならないんだ」
「ティリア、自分の立場を理解してる？」
ティリアはクロノに歩み寄ると、不満そうに唇を尖らせた。
「私が果たすべき役割は新貴族との関係強化だ」
「いや、多分、それって転地療養と同じレベルの建前だと思うんだけど。でも、暗殺されてないってことは利用価値があると思って泳がされているのかな？」
「ほ、本人を目の前に暗殺とか言うな！」
ティリアは顔を真っ赤にして怒鳴った。
「大体、お前はデリカシーが足りない！ 昨夜だって！ 昨夜だって……もう少し優しくしてくれても良いじゃないか」
ティリアは恥ずかしそうに頬を染め、不満そうに呟いた。
「早く戻って来てくれよ」
次に声を掛けてきたのはケインだった。
「最低でも二ヶ月は戻って来れないよ」
クロノが言うと、ケインは深々と溜息を吐いて髪を掻き毟った。
「領主代行なんざワイズマン先生か、そこの皇女様に任せりゃ良いじゃねーか」
そんなことを言いつつ、しっかりと仕事をするのがケインなのだ。
「そんな勤勉なのに、どうして盗賊なんてやってたの？」
「俺のことは良いから、生きて戻って来いよ」
「大丈夫であります」
ケインの台詞に反応したのはフェイだった。
「クロノ様は私がお守りするであります」
「んなこと言って、盗賊に袋叩きにあったんだろ？」
「あの時のままではないであります！」
フェイは馬上で胸を張って言った。
「ほら、さっさと乗っちまいなよ」
箱馬車の扉を開け、普段より露出度を抑えた女将が言った。
「気合い入ってるね？」
クロノは箱馬車に乗り込み、女将を見つめながら言った。
「久しぶりの里帰りなもんでね」
「女将って南辺境の出身なの？」
「言ってなかったっけかね。城で働いている時に軍人だった旦那と知り合ってね。エラキス侯爵領に転属ってんで、追い掛けて強引に口説き落としたんだよ。いや、あん時はあたしも若かったね」
そこから苦労して二人で店を建てたのか、とクロノは照れ臭そうにする女将を見つめた。
「……旦那さんに申し訳ないことしちゃったな」
「どうして、アンタが申し訳なく思うんだい？」
「そんな熱愛の末に結ばれたのに寝取っちゃったから」
クロノが見つめて言うと、女将は顔を真っ赤にして口をパクパクさせた。
「な、なな、何を言ってるんだい！」
女将はクロノから顔を背けた。
「さあ、出発だ」
箱馬車の扉を閉め、クロノは右目を撫でながら呟いた。
※
ケフェウス帝国の東北、ベテル山脈と海に挟まれた地域に存在する十の都市国家は自由都市国家群と総称されている。
自由都市国家群の成立は帝国暦四百年にまで遡る。当時、ケフェウス帝国は皇兄派と皇弟派に分かれて内戦を繰り広げていたが、帝国北東部の領地を治めていた十人の貴族はどちらの陣営にも加わろうとしなかった。
彼らが動いたのは蛮族が帝国に侵入し、混乱に拍車が掛かってからだ。いや、それ以前から彼らは自分達の目的を果たすために水面下で準備を進めていたのだ。その目的とは帝国からの独立だった。
だが、彼らとて馬鹿ではない。交通の要地を抑え、莫大な財産を有していても、それを守る力がなければ何の意味もないと理解していた。
まず、彼らは駐留していた軍を懐柔した。もっとも、当時の軍は領主の私費で維持されていたから、帝国に寝返らないように雇用条件を引き上げ、裏切りそうな人物を排除したくらいだろう。
次に自衛の名目でベテル山脈に住んでいた蛮族を傭兵として雇い入れ、戦力の増強を図った。
ケフェウス帝国黎明期にベテル山脈に追いやられた歴史的経緯から反発する者も少なくなかったらしいが、貧困から逃れるために傭兵として生きる道を選んだ。
そして、彼らは独立を宣言した。経済・軍事同盟を結び、自由都市国家群と呼ばれる勢力を築き上げたのである。
その後、十人の貴族の内、ある者は商人として栄華を極め、ある者は商人の娘を妻として迎え、ある者は没落して、その地位を奪われた。
どの貴族も商人と浅からぬ縁を持っていた点を鑑みれば本当に独立を欲していたのが誰なのか察しが付く。
以上の経緯を踏まえると、経済・軍事同盟の影響が及ぶ範囲……勢力圏こそが自由都市国家群であると言える。
まあ、この連中は自分達こそ自由都市国家群って言いかねないけど、とエレインは穏やかな笑みを浮かべて十一対の視線を受け止めた。
自由都市国家群東端の都市・イーメイは香辛料や絹などの交易で古くから栄えた街である。
エレインがいるのはイーメイの中心部にある館の一室だ。その館はケフェウス帝国の元貴族であり、イーメイの商人ギルドを支配するソークの住居でもある。
目眩を起こしそうなほど高い天井と寒々しささえ感じさせる広い室内……中心に馬蹄型の机が置かれ、ソークは自由都市国家群の中央に、十人の男が左右を固めるように座している。
ソークを含めた十人の男は各都市国家の元首であり、都市国家の全商人を支配するギルドマスターだ。
取り扱っている商品に違いはあっても、やっていることは基本的に変わらない。
職人を囲い込み、商人を支配して共存共栄の名の下に商品の価格を設定し、逆らった職人と商人をあらゆる手段を講じて排斥する。商人ギルドのギルドマスターとはそういうものなのだ。
ちなみにエレインの席はない。エレインは都市国家を治める元首ではないし、ギルドマスターと言っても娼婦という限られた職業を纏めているだけに過ぎないという理屈らしい。
その理屈通りならば傭兵ギルドのギルドマスターも席に座る資格はないはずだが、娼婦と傭兵では自由都市国家群に対する貢献度が違うそうだ。
娼婦が自分達と肩を並べるのが気に食わないって言えば良いのに、と考えながらもエレインは穏やかな笑みを崩さなかった。
自分の立場を弁えていると思われていた方が今は都合が良いし、些細な情報でも海千山千の爺さんどもに与えるつもりはない。
情報は金と同等の価値を持つ。ベッドの上で漏らす一言、情事の前、その後で男達と交わす他愛もない遣り取り……そんな言葉に価値があると気づき、それらを利用してエレインはのし上がってきた。
今も規模が大きくなっただけでやっていることは一介の娼婦だった頃と変わらない。自由都市国家群やケフェウス帝国にある息の掛かった娼館から情報を集め、高く買ってくれる相手に売る。
「……エラキス侯爵領の様子はどうだった？」
「あまり前と変わらないわよ」
労いの言葉の一つも掛けて欲しいわね、とエレインはソークに答えた。
「そのようなことを聞いているのではない！ 紙はどうだったかを聞いているのだ！」
机の端に座っていた老人が顔を真っ赤にして叫んだ。
老人……トロワ・クラフトはケフェウス帝国に紙を輸出している。
紙だけを扱っている訳ではないのだが、クロノを商売敵として認識しているのだ。
「心配する必要はないんじゃないかしら？ 紙を造っていると言っても、侯爵邸の庭に小さな工房を構えているだけだもの」
今はね、とエレインは心の中で付け加えた。
クロノの紙工房は生産量が限られているが、今よりも大きな工房を構えたり、製法が公開されて帝国各地で紙を生産するようになったりすれば、トロワの紙など誰も買わなくなるだろう。
「……砂糖も作っていると聞いたが？」
ソークが言うと、ガタッ！ と誰かが体を震わせた。
「ええ、作っているみたいね。マイルズから聞いた話によれば黄土神殿の神官を囲い込んだみたいよ」
それだけじゃなくて塩も作っているのよね、とエレインは心の中で付け加える。
どちらも今は問題ないが、砂糖の原料となる野菜を作る畑の面積が増えれば砂糖を取り扱っているギルドは大打撃を受けるし、神聖アルゴ王国に塩を輸出するようになれば塩を取り扱っているギルドも大打撃を受ける。
つまり、クロノが領地を繁栄させればさせるほど自由都市国家群のギルドは衰退していくのである。
「……エラキス侯爵は女好きと聞いたが？」
「ええ、エロガキよ」
誘っても寄ってこないけど、胸とか、太股とか見てるのよね、とエレインはソークに答えた。
「でも、一応、分別はあるみたいよ？」
「……厄介な男だ」
ええ、あの子は奴隷も躾けられないほど甘いけれど、何を背負っているか理解しているし、そのためになら何でもする悪魔みたいな子よ。あのゾッとするほど冷たい目を一度でも見ていたら、そんな所で安穏としていられないわよ、とエレインは穏やかな笑みを維持した。
痛々しいほどの沈黙が舞い降りる。
「まあ、まあ、そんな深刻な顔をせずとも良いではありませんか」
沈黙を破ったのはでっぷりと肥え太った中年男だった。
布を頭に巻いた男は奴隷商人……奴隷だけを取り扱っている訳ではなく、金貸しも営んでいる。
ある意味で、この男こそ自由都市国家群の象徴かも知れない。一介の商人から自分の才覚と幾ばくかの幸運に恵まれ、ギルドマスターの地位にまで成り上がったのだから。
他のギルドマスターと違い、この男はクロノの領地が発展すれば自分の利益に繋がると考えているのだろう。
「ここでエラキス侯爵の処遇について話し合っても意味がない。エレイン、下がれ」
「ええ、そうするわ」
労いの言葉一つ掛けてくれてもバチは当たらないでしょうに、とエレインは穏やかな笑みを浮かべたまま部屋を後にした。
白い、ただ白いだけで生活感のない廊下をエレインは穏やかな笑みを維持したまま歩いていた。
エレインは立ち止まり、
「……私に何か用かしら？」
「ああ、エラキス侯爵領について話を聞きたい」
振り向くと、傭兵ギルドのギルドマスター……シフはエレインと肩を並べて囁くような声音で言った。
傭兵ギルド……身も蓋もない表現をすれば荒事専門の口入れ屋である。元々はベテル山脈の諸部族によって構成されていたが、傭兵団や流れ者、失業者を取り込み、ギルドに所属する傭兵に仕事を斡旋して仲介料を取るようになった。
ギルドマスターであるシフは三十代半ば、肌は日に焼けていて引き締ま
帝国暦四百三十一年五月……クロノはハシェルの南側にある畑を眺めていた。一辺が百メートルの畑が三つ、一つは木の枝が伸びていて、残る二つはビート畑だ。無事に種まきも終わり、可愛らしい緑の葉が地面から生えている。
あれ？ とクロノは首を傾げた。おかしい。紙の原料となる木を栽培するための畑だったのにビート畑が二つもある。
「……シオンさん？」
「どうかなさったんですか？」
クロノが問い掛けると、シオンも不思議そうに首を傾げた。
「クローバーの栽培はどうかな？」
「はい、問題ありません。ただ、クローバーを食べさせると、家畜の育ちが良いという噂が流れているらしくて、ほ、他にも乳の出が良くなるとか。私が試した時は、そこまで確認していなくて」
自分を責めているのか、シオンは俯いて肩を震わせた。
「理屈は分からないけど、気にする必要ないんじゃないかな」
「そうですか？」
クロノがシオンと畑を眺めると、カチャリと小さな音が響いた。
振り向くと、そこには完全装備のタイガが立っていた。
防具は新調され、腰のベルトにはポーチが二つ着けられている。
ポーチの中身は応急処置を施すための道具一式と固パンである。
『クロノ様、出発の準備が整ったでござる』（がう）
「すぐに行くよ。シオンさんは畑の管理と救貧院の経営をよろしく」
城壁伝いに門のある場所に出ると、箱馬車が一台、幌馬車が十台、その周辺を取り囲むように騎兵が七騎並んでいた。
七騎中六騎はフェイが率いる軽騎兵、残る一騎は弓兵から弓騎兵に華麗なジョブチェンジを果たしたレイラだ。
レイラが装備しているのは短めの機工弓で、これはゴルディが工房の倉庫に保管していたものだ。
弓兵が装備している機工弓に比べると、射程距離と破壊力に劣るが、至近距離なら鋼の鎧を貫通する威力があるらしい。
たった一騎の弓騎兵が戦況を左右するとは思っていないが、レイラは優れた視力の持ち主なので斥候として申し分ない働きをしてくれるだろう。
その他、タイガ率いる歩兵が四十人、エルフとハーフエルフの弓兵が十人という構成である。
「むぅ……どうして、私が留守番をしなければならないんだ」
「ティリア、自分の立場を理解してる？」
ティリアはクロノに歩み寄ると、不満そうに唇を尖らせた。
「私が果たすべき役割は新貴族との関係強化だ」
「いや、多分、それって転地療養と同じレベルの建前だと思うんだけど。でも、暗殺されてないってことは利用価値があると思って泳がされているのかな？」
「ほ、本人を目の前に暗殺とか言うな！」
ティリアは顔を真っ赤にして怒鳴った。
「大体、お前はデリカシーが足りない！ 昨夜だって！ 昨夜だって……もう少し優しくしてくれても良いじゃないか」
ティリアは恥ずかしそうに頬を染め、不満そうに呟いた。
「早く戻って来てくれよ」
次に声を掛けてきたのはケインだった。
「最低でも二ヶ月は戻って来れないよ」
クロノが言うと、ケインは深々と溜息を吐いて髪を掻き毟った。
「領主代行なんざワイズマン先生か、そこの皇女様に任せりゃ良いじゃねーか」
そんなことを言いつつ、しっかりと仕事をするのがケインなのだ。
「そんな勤勉なのに、どうして盗賊なんてやってたの？」
「俺のことは良いから、生きて戻って来いよ」
「大丈夫であります」
ケインの台詞に反応したのはフェイだった。
「クロノ様は私がお守りするであります」
「んなこと言って、盗賊に袋叩きにあったんだろ？」
「あの時のままではないであります！」
フェイは馬上で胸を張って言った。
「ほら、さっさと乗っちまいなよ」
箱馬車の扉を開け、普段より露出度を抑えた女将が言った。
「気合い入ってるね？」
クロノは箱馬車に乗り込み、女将を見つめながら言った。
「久しぶりの里帰りなもんでね」
「女将って南辺境の出身なの？」
「言ってなかったっけかね。城で働いている時に軍人だった旦那と知り合ってね。エラキス侯爵領に転属ってんで、追い掛けて強引に口説き落としたんだよ。いや、あん時はあたしも若かったね」
そこから苦労して二人で店を建てたのか、とクロノは照れ臭そうにする女将を見つめた。
「……旦那さんに申し訳ないことしちゃったな」
「どうして、アンタが申し訳なく思うんだい？」
「そんな熱愛の末に結ばれたのに寝取っちゃったから」
クロノが見つめて言うと、女将は顔を真っ赤にして口をパクパクさせた。
「な、なな、何を言ってるんだい！」
女将はクロノから顔を背けた。
「さあ、出発だ」
箱馬車の扉を閉め、クロノは右目を撫でながら呟いた。
※
ケフェウス帝国の東北、ベテル山脈と海に挟まれた地域に存在する十の都市国家は自由都市国家群と総称されている。
自由都市国家群の成立は帝国暦四百年にまで遡る。当時、ケフェウス帝国は皇兄派と皇弟派に分かれて内戦を繰り広げていたが、帝国北東部の領地を治めていた十人の貴族はどちらの陣営にも加わろうとしなかった。
彼らが動いたのは蛮族が帝国に侵入し、混乱に拍車が掛かってからだ。いや、それ以前から彼らは自分達の目的を果たすために水面下で準備を進めていたのだ。その目的とは帝国からの独立だった。
だが、彼らとて馬鹿ではない。交通の要地を抑え、莫大な財産を有していても、それを守る力がなければ何の意味もないと理解していた。
まず、彼らは駐留していた軍を懐柔した。もっとも、当時の軍は領主の私費で維持されていたから、帝国に寝返らないように雇用条件を引き上げ、裏切りそうな人物を排除したくらいだろう。
次に自衛の名目でベテル山脈に住んでいた蛮族を傭兵として雇い入れ、戦力の増強を図った。
ケフェウス帝国黎明期にベテル山脈に追いやられた歴史的経緯から反発する者も少なくなかったらしいが、貧困から逃れるために傭兵として生きる道を選んだ。
そして、彼らは独立を宣言した。経済・軍事同盟を結び、自由都市国家群と呼ばれる勢力を築き上げたのである。
その後、十人の貴族の内、ある者は商人として栄華を極め、ある者は商人の娘を妻として迎え、ある者は没落して、その地位を奪われた。
どの貴族も商人と浅からぬ縁を持っていた点を鑑みれば本当に独立を欲していたのが誰なのか察しが付く。
以上の経緯を踏まえると、経済・軍事同盟の影響が及ぶ範囲……勢力圏こそが自由都市国家群であると言える。
まあ、この連中は自分達こそ自由都市国家群って言いかねないけど、とエレインは穏やかな笑みを浮かべて十一対の視線を受け止めた。
自由都市国家群東端の都市・イーメイは香辛料や絹などの交易で古くから栄えた街である。
エレインがいるのはイーメイの中心部にある館の一室だ。その館はケフェウス帝国の元貴族であり、イーメイの商人ギルドを支配するソークの住居でもある。
目眩を起こしそうなほど高い天井と寒々しささえ感じさせる広い室内……中心に馬蹄型の机が置かれ、ソークは自由都市国家群の中央に、十人の男が左右を固めるように座している。
ソークを含めた十人の男は各都市国家の元首であり、都市国家の全商人を支配するギルドマスターだ。
取り扱っている商品に違いはあっても、やっていることは基本的に変わらない。
職人を囲い込み、商人を支配して共存共栄の名の下に商品の価格を設定し、逆らった職人と商人をあらゆる手段を講じて排斥する。商人ギルドのギルドマスターとはそういうものなのだ。
ちなみにエレインの席はない。エレインは都市国家を治める元首ではないし、ギルドマスターと言っても娼婦という限られた職業を纏めているだけに過ぎないという理屈らしい。
その理屈通りならば傭兵ギルドのギルドマスターも席に座る資格はないはずだが、娼婦と傭兵では自由都市国家群に対する貢献度が違うそうだ。
娼婦が自分達と肩を並べるのが気に食わないって言えば良いのに、と考えながらもエレインは穏やかな笑みを崩さなかった。
自分の立場を弁えていると思われていた方が今は都合が良いし、些細な情報でも海千山千の爺さんどもに与えるつもりはない。
情報は金と同等の価値を持つ。ベッドの上で漏らす一言、情事の前、その後で男達と交わす他愛もない遣り取り……そんな言葉に価値があると気づき、それらを利用してエレインはのし上がってきた。
今も規模が大きくなっただけでやっていることは一介の娼婦だった頃と変わらない。自由都市国家群やケフェウス帝国にある息の掛かった娼館から情報を集め、高く買ってくれる相手に売る。
「……エラキス侯爵領の様子はどうだった？」
「あまり前と変わらないわよ」
労いの言葉の一つも掛けて欲しいわね、とエレインはソークに答えた。
「そのようなことを聞いているのではない！ 紙はどうだったかを聞いているのだ！」
机の端に座っていた老人が顔を真っ赤にして叫んだ。
老人……トロワ・クラフトはケフェウス帝国に紙を輸出している。
紙だけを扱っている訳ではないのだが、クロノを商売敵として認識しているのだ。
「心配する必要はないんじゃないかしら？ 紙を造っていると言っても、侯爵邸の庭に小さな工房を構えているだけだもの」
今はね、とエレインは心の中で付け加えた。
クロノの紙工房は生産量が限られているが、今よりも大きな工房を構えたり、製法が公開されて帝国各地で紙を生産するようになったりすれば、トロワの紙など誰も買わなくなるだろう。
「……砂糖も作っていると聞いたが？」
ソークが言うと、ガタッ！ と誰かが体を震わせた。
「ええ、作っているみたいね。マイルズから聞いた話によれば黄土神殿の神官を囲い込んだみたいよ」
それだけじゃなくて塩も作っているのよね、とエレインは心の中で付け加える。
どちらも今は問題ないが、砂糖の原料となる野菜を作る畑の面積が増えれば砂糖を取り扱っているギルドは大打撃を受けるし、神聖アルゴ王国に塩を輸出するようになれば塩を取り扱っているギルドも大打撃を受ける。
つまり、クロノが領地を繁栄させればさせるほど自由都市国家群のギルドは衰退していくのである。
「……エラキス侯爵は女好きと聞いたが？」
「ええ、エロガキよ」
誘っても寄ってこないけど、胸とか、太股とか見てるのよね、とエレインはソークに答えた。
「でも、一応、分別はあるみたいよ？」
「……厄介な男だ」
ええ、あの子は奴隷も躾けられないほど甘いけれど、何を背負っているか理解しているし、そのためになら何でもする悪魔みたいな子よ。あのゾッとするほど冷たい目を一度でも見ていたら、そんな所で安穏としていられないわよ、とエレインは穏やかな笑みを維持した。
痛々しいほどの沈黙が舞い降りる。
「まあ、まあ、そんな深刻な顔をせずとも良いではありませんか」
沈黙を破ったのはでっぷりと肥え太った中年男だった。
布を頭に巻いた男は奴隷商人……奴隷だけを取り扱っている訳ではなく、金貸しも営んでいる。
ある意味で、この男こそ自由都市国家群の象徴かも知れない。一介の商人から自分の才覚と幾ばくかの幸運に恵まれ、ギルドマスターの地位にまで成り上がったのだから。
他のギルドマスターと違い、この男はクロノの領地が発展すれば自分の利益に繋がると考えているのだろう。
「ここでエラキス侯爵の処遇について話し合っても意味がない。エレイン、下がれ」
「ええ、そうするわ」
労いの言葉一つ掛けてくれてもバチは当たらないでしょうに、とエレインは穏やかな笑みを浮かべたまま部屋を後にした。
白い、ただ白いだけで生活感のない廊下をエレインは穏やかな笑みを維持したまま歩いていた。
エレインは立ち止まり、
「……私に何か用かしら？」
「ああ、エラキス侯爵領について話を聞きたい」
振り向くと、傭兵ギルドのギルドマスター……シフはエレインと肩を並べて囁くような声音で言った。
傭兵ギルド……身も蓋もない表現をすれば荒事専門の口入れ屋である。元々はベテル山脈の諸部族によって構成されていたが、傭兵団や流れ者、失業者を取り込み、ギルドに所属する傭兵に仕事を斡旋して仲介料を取るようになった。
ギルドマスターであるシフは三十代半ば、肌は日に焼けていて引き締ま
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The imperial calendar * made four hundred and thirty year may... Chrono view field in the south of the ハシェル. Three hundred meters field, one side of which is one of the branches of the tree is extended to the remaining two fields. Safe seeding, resulting in a lovely green leaves grow out of the ground. At that? Chrono and inclined his head. Funny. In order to grow trees as raw material is a two beat upland field.
「…… Zion? " If you do
「? " Chrono, trying to tell you.He tilted his head in wonder and Zion. The cultivation of clover, please? "
「 yes, no problem. However, clover, and the feed flow is like that of livestock breeding better and better, and other dry. I tried to make sure there is not to blame yourself for the 1993, tremble through the shoulders. I don't know
「 theory is 」
「 to worry or not? " AtChrono watch Zion and fields, and cachari sounded a little. At the back, where there is a fully equipped Tiger stood. At a new protector, a waist belt and two in the pouch. At work and for the contents of the first aid pouch is solid. Chrono at the ready to start with "I ）
「 too soon. Zion, and field management in the management of the poorhouse hello (1993) along the walls and gates of the wagon box, oneBut those covered wagon, seven men so as to surround the cavalry. In six of seven horsemen led by fey light cavalry soldiers, soldiers remain Leila that played a brilliant Archer archery cavalry soldiers from the job change. At which is equipped with Leila short bow in engineering, this is what the golde stored in the workshop. And that is equipped with a bow and bow in the machinery, and less destructive power range, there is a power which penetrates through the steel armor If point-blank range. AtI do not believe that only the archery cavalry left horseman battle, will not work well as a scout you excellent eyesight has since Leila. At the Fourth Infantry led by ten men, elves and taiga in that half elf archers and.
「 dances... Why do 」
「 Tilia if I have to stay at home, don't you understand your position? " The cavity at the rear up Chrono, dissatisfied with the lips. At[แม้ว่าจะ,ไม่มีอาจจะให้เป็นของที่มีบทบาทที่ผมจะต้องมีความคิดว่าจะมีหลักการของที่ระดับเดียวกันกับที่เปลี่ยนเสริม だ ]
[พร้อมด้วยที่ใหม่ชั้นสูงที่เกี่ยวข้อง.]แต่ไม่บอกว่า]
[ほ,ผู้ว่าการที่เป็นอย่างมากทางด้านหน้าพร้อมด้วยลอบสังหารว่าผมคิดว่าที่มีลอบสังหารされてないってことはยูทิลิตีมูลค่า,และผมปล่อยให้ว่ายน้ำ!]
ティリアทำหน้าสีแดง - ร้อนและตะโกน.
[ตัวคุณไม่มีร้านอาหารสำเร็จรูปเป็นอย่างมาก!คืนสุดท้าย! ......อาจจะอ่อนโยนมากขึ้นอีกในยามค่ำคืนสุดท้าย]
"I have close relationships with the new aristocracy of the role 」
「 no, maybe, but I think it is the same as the level of medical treatment, and a change of air. But, as it was believed to have use value and swim? " No,
「 himself in front of the assassination or say! " The cavity at the rear face bright red thunder.
「 about you, not enough delicacy! Last night, too! Because... Last night... It may be a bit more gentle with me (1993)From what I have 」
「 come back safe 」
「 alive was the face of cane lines (1993). There are
「 Chrono as I can charm in 」
「, insisting that it was a bandit? " At that time there
「 not! " At the Fei said on the chest. You see, it was a
「 riding, open the door of the wagon box 1993, the proprietress said less than usual. I'm
「 willpower? " AtTilia dyed her cheeks, a disgruntled muttered. It was early in the
「 cane me come back the next voice (1993). But at least two months
「 Chrono 1993 I never come back and say, he bowed to pluck out the hair. Once upon a time or a substitute teacher who
「 Wiseman, so there may be no 任せりゃ I say such a thing (1993), but to work hard.
「 so hard, why is a thief?Chrono boarded the carriage box, said, staring. A
「 home for a long time I come from the south of 」
「 landlady and the border? " Did I not tell you
「. Working in the castle when I was acquainted with her husband. The error transfer territory kiss Marquis practitioners, won by running after. No, the time that I set up a store in it as there was trouble from 1993, and gazed at her Chrono self-consciously. At"... I'm sorry, sir, you have a 」
「 why do you think I'm sorry ah? " At the end of
「 linked to take that love so I stared Chrono (1993), the landlady was red in the face with his mouth. The
「, what are you talking about! " The landlady turned away from. Come on,
「 starting the carriage door is closed, the box 1993 Chrono stroking his right eye muttered. The
※
Cepheus, Tohoku ImperialBetween the mountains and the bethel of sea area in the city state and national liberty city group. The establishment of the imperial free city community calendar dates back to the four hundred years. At that time, but the Cepheus imperial civil war against the imperial elder brother and younger brother of the emperor, who ruled the territory of the people of the northeast, which did not join in on both sides by the nobility. They are at the imperial invasion as they moved from the confusion over the Spurs. No,For before that they serve their purpose of preparing under water. Its purpose was independent from the Empire. However, at them and not a fool. The key point of traffic has a vast fortune, I realized that it doesn't mean anything to save power. At first, they were stationed his army. However, at that time, because the Lord of my expenses to maintain the defection of Empire, so as not to raise the employment conditionsIt is likely to fail. Employed as they lived in the mountains, in the name of Bethel mercenaries then tried to strengthen the self-defense forces. At the dawn of Empire in Cepheus in Bethel mountains to rebound from the history, many chose to live as mercenaries to escape from poverty. At and they declared independence. With economic and military alliance is built up forces are called free city-state. Thereafter, atAs Elaine soft pair of smiling eyes. At the east end of the city and national liberty city group E may be prosperous town of silks and spices trade since ancient times. Elaine is at the room of the museum in the centre of e Mei. He was a former Cepheus and its empire, of the Salk E may dominate the merchants' Guild house. At the wide room... Caused vertigo is a 寒々し high ceilings and even to feel... In the center of the horseshoe type deskIn ten nobles prospered as a merchant who is a merchant who married a daughter as his wife, and who is deprived of its status. Who really wants to be considering independence at any noble merchant and is closely linked to the point that sticks out. According to the history of the above range,..., effects of the economic and military alliance... It is the sphere of Liberty City is a national group. Well, at this, but they might say about free city-state, our groupNational central city group of soaking, sit down to ten men to the left and right. Ten people, including the man at the soak and the head of each of the city-states, merchant guild master to rule the whole of the city state. The difference of the product are handled, it did not change basically. The enclosure to artisans, merchants under the control of the co-existence and co-prosperity name of commodity prices, and by any means to boycott against artisans and merchants.The merchant's Guild guild master and that kind of thing. By the way, not at the Elaine. Don't keep the heads of the city-state Elaine, are not just a job and the guild master limited reason and whores. You ought to have its reason if they are not entitled to sit in the seat of the mercenary guild or guild master the different contribution in mercenaries and whores for the urban community. AtWith an air of prostitutes to align their shoulders and say it would be better if the idea with his gentle smile Elaine. At you to know yourself better, now it is trivial information will not give the old man in the old fox. The information which is equivalent to the value of gold. Let the word on the bed in front of the affair, not easy to exchange and men... To find such words worthBy using the above Elaine his profession. It is now the only large scale did not change with time, but a whore. Collect information from the breath and free city-state in Cepheus brothel, sell the Empire to buy high.
「…… How was the appearance of the Marquis's kiss? " I want to have too much before and not change between one of the words, and say thanks 1993 Elaine soak. They're not listening to what
「 like that!The paper was to hear what you are! " He shouted at the old man was sitting on the edge of the desk was red in the face. At the old man... The pas de Trois kraft paper exports in Cepheus. At the translation not only dealing with paper, Chrono is recognized as a competitor.
「 does not need to worry about it? It is to build a paper (1993), now is only a small workshop of garden residence of marquis, and Elaine is added in the mind. AtChrono workshop of paper production is not limited to, or more than a large workshop, a process to produce paper is all over the Empire, or will not buy one of Troyes.
「…… I was listening to make sugar? " ガタッ soak, and say that! And someone she. Yes,
「 make you look. From miles to listen to a Shinto priest of the temple of the Loess like made it not only as a salt (1993), made ofElaine and add in the mind. At both the problem now is not to make vegetables and raw sugar fields area of handling more sugar guild under pounding by the holy Kingdom algorithm to export salt guild handling if subjected to salt. That is, at the National Guild of Liberty City Group Chrono that if prosperity as the territory is declined.
「…… Heard the Marquis Ella kiss women? " Yes, I
「 (1993), eroticChest or not, but he stopped her thighs, I see the answer and Elaine to soak.
「 but once, like a wise? "
「…… Awkward man 1993: Yes, but he is as sweet as a slave is not put, what are you back to understand, like the devil do anything the child. If you see a cold shudder so that once the you and I don't, Elaine is a gentle smile. AtThe silence painfully. Well, well,
「 and fat to break the silence (1993) grow fat, middle-aged man was so serious? There is no good without a face. The cloth around their heads to the slave traders, man... As a slave, but runs a moneylender. In a sense, this is the man who is the national symbol of liberty city group may be. Merchants from being blessed with some of his faculties and luck, so in the guild master status. AtUnlike other guild master, this man is thinking to the development of our Chrono territory. There is no sense in the treatment of marquis Ella kiss talks about
「 here. Elaine, yes, I do 」
「 down words of appreciation (1993) and one you will not strike the bee and Elaine, after which the room with a gentle smile. At the white, is not only to Elaine white hallway calm life while keeping a smile on. AtIt takes a brokerage mediation work as mercenaries, belonging to the guild. The Guild Master Shifu is at the mid thirties, and 引き締ま skin was burnt by the sunElaine 、
「…… stop Do something for me? " Oh, and in turn
「 1993 Ella kiss Marquis area I want to hear talk about a mercenary guild guild master... Said in a faint voice SIF and Elaine and shoulder to shoulder. Mercenary guild at... Point of aragoto employment agency is a professional do not. Originally composed of Bethel mountain tribes, but one of the mercenaries and the unemployed
「…… Zion? " If you do
「? " Chrono, trying to tell you.He tilted his head in wonder and Zion. The cultivation of clover, please? "
「 yes, no problem. However, clover, and the feed flow is like that of livestock breeding better and better, and other dry. I tried to make sure there is not to blame yourself for the 1993, tremble through the shoulders. I don't know
「 theory is 」
「 to worry or not? " AtChrono watch Zion and fields, and cachari sounded a little. At the back, where there is a fully equipped Tiger stood. At a new protector, a waist belt and two in the pouch. At work and for the contents of the first aid pouch is solid. Chrono at the ready to start with "I ）
「 too soon. Zion, and field management in the management of the poorhouse hello (1993) along the walls and gates of the wagon box, oneBut those covered wagon, seven men so as to surround the cavalry. In six of seven horsemen led by fey light cavalry soldiers, soldiers remain Leila that played a brilliant Archer archery cavalry soldiers from the job change. At which is equipped with Leila short bow in engineering, this is what the golde stored in the workshop. And that is equipped with a bow and bow in the machinery, and less destructive power range, there is a power which penetrates through the steel armor If point-blank range. AtI do not believe that only the archery cavalry left horseman battle, will not work well as a scout you excellent eyesight has since Leila. At the Fourth Infantry led by ten men, elves and taiga in that half elf archers and.
「 dances... Why do 」
「 Tilia if I have to stay at home, don't you understand your position? " The cavity at the rear up Chrono, dissatisfied with the lips. At[แม้ว่าจะ,ไม่มีอาจจะให้เป็นของที่มีบทบาทที่ผมจะต้องมีความคิดว่าจะมีหลักการของที่ระดับเดียวกันกับที่เปลี่ยนเสริม だ ]
[พร้อมด้วยที่ใหม่ชั้นสูงที่เกี่ยวข้อง.]แต่ไม่บอกว่า]
[ほ,ผู้ว่าการที่เป็นอย่างมากทางด้านหน้าพร้อมด้วยลอบสังหารว่าผมคิดว่าที่มีลอบสังหารされてないってことはยูทิลิตีมูลค่า,และผมปล่อยให้ว่ายน้ำ!]
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「 no, maybe, but I think it is the same as the level of medical treatment, and a change of air. But, as it was believed to have use value and swim? " No,
「 himself in front of the assassination or say! " The cavity at the rear face bright red thunder.
「 about you, not enough delicacy! Last night, too! Because... Last night... It may be a bit more gentle with me (1993)From what I have 」
「 come back safe 」
「 alive was the face of cane lines (1993). There are
「 Chrono as I can charm in 」
「, insisting that it was a bandit? " At that time there
「 not! " At the Fei said on the chest. You see, it was a
「 riding, open the door of the wagon box 1993, the proprietress said less than usual. I'm
「 willpower? " AtTilia dyed her cheeks, a disgruntled muttered. It was early in the
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「 Chrono 1993 I never come back and say, he bowed to pluck out the hair. Once upon a time or a substitute teacher who
「 Wiseman, so there may be no 任せりゃ I say such a thing (1993), but to work hard.
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「 home for a long time I come from the south of 」
「 landlady and the border? " Did I not tell you
「. Working in the castle when I was acquainted with her husband. The error transfer territory kiss Marquis practitioners, won by running after. No, the time that I set up a store in it as there was trouble from 1993, and gazed at her Chrono self-consciously. At"... I'm sorry, sir, you have a 」
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「, what are you talking about! " The landlady turned away from. Come on,
「 starting the carriage door is closed, the box 1993 Chrono stroking his right eye muttered. The
※
Cepheus, Tohoku ImperialBetween the mountains and the bethel of sea area in the city state and national liberty city group. The establishment of the imperial free city community calendar dates back to the four hundred years. At that time, but the Cepheus imperial civil war against the imperial elder brother and younger brother of the emperor, who ruled the territory of the people of the northeast, which did not join in on both sides by the nobility. They are at the imperial invasion as they moved from the confusion over the Spurs. No,For before that they serve their purpose of preparing under water. Its purpose was independent from the Empire. However, at them and not a fool. The key point of traffic has a vast fortune, I realized that it doesn't mean anything to save power. At first, they were stationed his army. However, at that time, because the Lord of my expenses to maintain the defection of Empire, so as not to raise the employment conditionsIt is likely to fail. Employed as they lived in the mountains, in the name of Bethel mercenaries then tried to strengthen the self-defense forces. At the dawn of Empire in Cepheus in Bethel mountains to rebound from the history, many chose to live as mercenaries to escape from poverty. At and they declared independence. With economic and military alliance is built up forces are called free city-state. Thereafter, atAs Elaine soft pair of smiling eyes. At the east end of the city and national liberty city group E may be prosperous town of silks and spices trade since ancient times. Elaine is at the room of the museum in the centre of e Mei. He was a former Cepheus and its empire, of the Salk E may dominate the merchants' Guild house. At the wide room... Caused vertigo is a 寒々し high ceilings and even to feel... In the center of the horseshoe type deskIn ten nobles prospered as a merchant who is a merchant who married a daughter as his wife, and who is deprived of its status. Who really wants to be considering independence at any noble merchant and is closely linked to the point that sticks out. According to the history of the above range,..., effects of the economic and military alliance... It is the sphere of Liberty City is a national group. Well, at this, but they might say about free city-state, our groupNational central city group of soaking, sit down to ten men to the left and right. Ten people, including the man at the soak and the head of each of the city-states, merchant guild master to rule the whole of the city state. The difference of the product are handled, it did not change basically. The enclosure to artisans, merchants under the control of the co-existence and co-prosperity name of commodity prices, and by any means to boycott against artisans and merchants.The merchant's Guild guild master and that kind of thing. By the way, not at the Elaine. Don't keep the heads of the city-state Elaine, are not just a job and the guild master limited reason and whores. You ought to have its reason if they are not entitled to sit in the seat of the mercenary guild or guild master the different contribution in mercenaries and whores for the urban community. AtWith an air of prostitutes to align their shoulders and say it would be better if the idea with his gentle smile Elaine. At you to know yourself better, now it is trivial information will not give the old man in the old fox. The information which is equivalent to the value of gold. Let the word on the bed in front of the affair, not easy to exchange and men... To find such words worthBy using the above Elaine his profession. It is now the only large scale did not change with time, but a whore. Collect information from the breath and free city-state in Cepheus brothel, sell the Empire to buy high.
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- 첨부된 사진을 보고 이 곡을 촬영한 멤버들의 본명과 생년월일을 나이순대로
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