「あれで?」
「雑魚を沢山ぶっ倒しただけだろ。それじゃさすがに魔術師としてはそう自慢できるモンじゃないって」
「そういった力を信条としている魔法使いも、こちらの世界にはいるのだがな。基本的に君は理想が高すぎると思うぞ」
「……理想ね。まあ確かにそうなのかも知れないな」
その理想を体現する男のことを頭の中に思い浮かべる水明。確かその男の――父の背中を見てきたため、求めるものや基準については平均よりも高いのかもしれない。それだけ、水明の父に対する憧憬がまだまだ強いのだろうが。
一方その内容を察したか、レフィールが訊ねてくる。
「時に訊くが、君の父上なら同じことができたか?」
「うん? 父さんならあの数倒すのくらいワケないだろうな」
「ラジャスもか?」
その問いに、水明はしばし考える。あの父ならば、果たしてどうだろうかと。無論倒せるか倒せないかが論点ではなく、倒せることは前提に考えて、だ。ラジャスは強壮で頑健であったが、真っ向から勝負しても、父ならば眉を一ミリも動かすことはないだろう。
ゆえに、
「拳の一発でぶっ飛ばせるはずだな、ありゃあ」
「こっ!? 拳の一発だと!?」
「ああ」