169/210リバティー 「明日は帝国解放会の入会式があるから、早朝だけ迷宮に行って、後は休みにしよう」 夕食のとき、明日の予定を話した。  การแปล - 169/210リバティー 「明日は帝国解放会の入会式があるから、早朝だけ迷宮に行って、後は休みにしよう」 夕食のとき、明日の予定を話した。  ไทย วิธีการพูด

169/210リバティー 「明日は帝国解放会の入会式があるから、早朝だ

169/210
リバティー

「明日は帝国解放会の入会式があるから、早朝だけ迷宮に行って、後は休みにしよう」

夕食のとき、明日の予定を話した。
エステル男爵から言われた入会儀礼の日取りは明日だ。
入会儀礼には俺以外の四人は立ち会えないから、休みにするのがいいだろう。

「ありがとうございます。お休みをいただけるのですね」
「そうだ。ロクサーヌは何がしたい?」
「そうですね……」
「休みとは、どういうことでしょう?」

ロクサーヌが考え込むと、ベスタが質問してきた。
そういえばベスタが来てからは初めての休日か。

「明日は、朝食前は迷宮に入るが、その後は自由に過ごしていい」
「そんなことを。よろしいのですか」
「たまにはリフレッシュすることも必要だろう」
「ありがとうございます」

ベスタが頭を下げる。

「半日だが好きなことをしてくれ」
「好きなことですか」

ロクサーヌに続いてベスタも思案顔になった。
急に休みと言われても戸惑うのだろう。
どこかの二人と違って。

「セリーは、図書館か解放会の資料室か?」
「はい。せっかくですので資料室に行ってみたいと思います」
「ミリアは、釣りだよな」
「はい、です」

この二人については、ほとんど聞くまでもない。
ミリアの顔が輝いていた。
釣る気だ。

「私は、買い物でもしてのんびり過ごしたいと思います。本当はどこかの迷宮にでも行きたいのですが」

やりたいことが同じという点ではロクサーヌも似たようなものか。
なんで休みだというのにロクサーヌは迷宮に入りたがるのだろう。
迷宮に行くのを休んでこその休みだろうに。

「入会式は昼からだ。午前中少しなら一緒に迷宮に入ってもいい」
「本当ですか?」
「大丈夫だ。どこかでボス狩りでもするか。今の俺とロクサーヌなら、多少上の階層でも行けるだろう」

二十二階層より下なら、ボス部屋に出てくる魔物は二匹だ。
ロクサーヌが一匹の相手をしている間に俺がもう一匹を片づければいい。
ミリアから硬直のエストックを借りる手もある。

もちろん俺はデュランダルを使う。
ロクサーヌの目的が鍛錬だろうとしても。
経験値的にはデュランダルを出さず魔法で戦った方がいいが、そこまでこだわることもない。
どうせそんなに経験値を稼げはしないはずだ。

「ブラックダイヤツナ、です」
「ハルバーの二十二階層ならブラックダイヤツナだが、そこまで行けるかどうかは分からんな。クーラタルの十七階層ならなんとかなるかもしれないが」

ミリアが進言してくるが、ブラックダイヤツナを相手にできるかどうかは分からない。
ボス部屋に出てくる魔物は二匹だが、ボス部屋以外では普通に多数の魔物を相手にしなければならない。
二十二階層で二人はきついかもしれない。

ボス部屋や待機部屋に直接ワープするのはまずい。
試したことはないので行けるかどうかも分からない。
階層の途中にある小部屋からボス部屋までは歩いていくことになる。

ロクサーヌがいるから途中の魔物は回避することも可能だが、相手をしなければならない場合もあるだろう。
二人なのであまり上の階層には行きたくない。

「そうですね。クーラタルの十七階層くらいなら鍛錬にいいかもしれません」
「赤身かトロが残ったら、お土産に持ってきてやろう」
「んん。釣り……。んん。ブラックダイヤツナ……」

ミリアが悩みだした。
土産にすると言ったのに聞いてない。
ブラックダイヤツナを相手にするならミリアも行きたいということだろうか。
休みより魚の魔物の方がいいのだろうか。

それなら、ケープカープの出る階層を探索している現在、休みよりも迷宮に入っていた方がいいということだろうか。
それはまた別か。
ケープカープは食材を残さないし。

自分の手で食材を獲るというのは、一つの楽しみではある。
観光の地引網とかやな漁みたいな感じだろう。
魔物相手では危険もあるが。

「ミリアも一緒にどうですか?」
「どうせ日の出時間からはできないのだし、少し迷宮に入ってから釣りに行くくらいでもいいんじゃないか」
「いく、です」

ロクサーヌと俺の勧めに、ミリアが食いついた。
何が悲しくて迷宮探索を休む日に迷宮に行きたがるのか。
まあ本人がしたいというのだからいいだろう。

これで結論が出ていないのはベスタだけだ。
ベスタは首をひねっている。
まだ決まっていないようだ。

「ベスタはどっか行ってみたいところとか、ないか」
「行ってみたいところですか」
「もしくは、昔行けなかったところとか、もう一度行ってもいいと思ったところとか」
「昔行きたかったところなら。いや。なんでもないです」

ベスタが意見を引っ込めた。
なんだろう。
行きたいところがあったなら、そこでいいのではないだろうか。

あ、そうか。
亡くなった祖父の家とかか。
昔は行きたかったが、今は行けない、もしくは行きたくないところとか。

「あー。なんかやなこと思い出させちゃったか」
「いえ。そんなことはありません」
「それなら昔行きたかったところでも」
「あの。本当に大丈夫です。今は行きたいとも思っていませんので」

ちょっと気になるが、大丈夫だというならいいのだろうか。
あまり深く尋ねるわけにも。

「ひょっとして、ステーラですか?」

俺が引き下がろうと思っているのに、セリーがズバリと切り込んだ。
空気読め。

「い、今はまったく行きたいとは思ってもいません」

ベスタが手を振って行きたくないと否定する。

「ステーラ?」
「ステーラにある神殿は奴隷を買い取ってくれます。お金を持っている人なら自分で自分を買い取ってもらうことができます。そうすれば解放奴隷になれます。お金を持っていない人でも、神殿に逃げ込めば他の人が自分を売るために支払ったお金や寄付金浄財を使い神殿が奴隷として購入してくれることがあるそうです」

セリーが教えてくれた。
なるほど。そんな場所があるのか。
中世にあった聖的な避難所、アジールってやつだ。
駆け込み寺みたいなものだろう。

「ですから今はまったく」

ベスタがあわてて否定するわけだ。
ステーラに行きたいということは、俺から解放されたいということを意味する。
奴隷になることが決まっていた昔はステーラに行きたかったと。

ステーラに行けば、奴隷から解放されることができる。
いや、身分的には神殿が所有する奴隷ということになるのだろうか。
税金的にもその方が得だ。

「逃げるとは考えていないので、気にするな」
「はい。とてもよい主人に購入していただいたと感謝しています。いつまでもこのまま働かせていただきたいです」
「頼むな」

今まで休日はみんなを自由にさせていたが、よかったのだろうか。
少なくともセリーは知っていたわけだし。

ただ、奴隷側としてもある程度は逃げた後に稼ぐ算段がないと駄目だろう。
うまく逃げおおせたとしても、自立する手段がなければ奴隷か盗賊に逆戻りだ。
ロクサーヌくらいなら迷宮に入ってやっていけそうだが。
ロクサーヌが逃げることは考えにくい。

セリーも鍛冶師でなんとかなるか。
しかし逃げるつもりならステーラのことを俺に教えたりしないだろう。

「わ、私も一緒に迷宮に行きたいと思います」
「いや。あんまり大勢で行ってもしょうがない。ベスタは休んでいろ。クーラタルか帝都をのんびりと観光してくるといい」
「それなら、午前中は家かクーラタルにいてください。昼過ぎから私と一緒に帝都に行きましょう」

ロクサーヌがベスタに提案する。

「はい。そうしようと思います」

ベスタが受け、全員の予定が決まった。
今のところ、ベスタには特にやりたいことはないようだ。
そのうちに何か見つけてくれればいい。


次の日は朝から暑かった。
今年一番の暑さかもしれない。
ベッドを囲んで置いてある桶の上の空気が微塵も冷たくなかったので、氷は全部解けたのだろう。

こんな日はあまり暑くない迷宮の中で一日過ごしたかった。
愚痴ってもしょうがないことだが。
早朝は迷宮に入り、パンや食材を買った後、家に戻る。
朝なのでまだそれほどでもないが、クーラタルの街中も陽射しがきつかった。

「今日は暑くなりそうだな」
「はい。ミリアにはしっかり言い聞かせてますので、大丈夫でしょう」

確かに、こんな暑い日に海に釣りに行ったら入りたくなりそうだ。
ロクサーヌもミリアの行動パターンはしっかりお見通しらしい。
ちなみに、この世界に海水浴というのはないようだ。
外に出るのは魔物がいて危険だろうし。

「休みなのでお金を渡そう。今回からは多少増額して、銀貨十枚にしようと思う」

朝食の後でお金をみんなに渡す。
セリーが行くロッジは高いみたいだし、小遣いも増やすべきだろう。
ロクサーヌとセリーだけというわけにもいかないだろうから、全員平等に増やす。

「ありがとうございます」

最初にロクサーヌに銀貨十枚を渡すと、喜んで受け取ってくれた。
何ごとも順番が大切である。

「ロクサーヌはいろいろ必要なものも買ってきてくれたしな。今回は自分のものを買ってくるといい」
「はい」

全員平等にしたが不満はないようだ。

「ロッジは高いみたいだからセリーには足りないかもしれないが」
「ありがとうございます。大丈夫です」

セリーは銀貨をアイテムボックスにしまった。
鍛冶師のアイテムボックスは同じアイテムが十個入るのでちょうど一列分だ。
ロッジにはどうせ入会儀礼で俺も行く。
いざとなればなんとかなるだろう。

「釣り道具で必要なものは基本的にはこのお金でまかなってくれ。釣具屋は迷宮に入った後で連れて行ってやる」
「はい、です。ありがとう、です」

厳密にいえば、ミリアが釣った魚を食べたりするのだから、その分は俺が買い取ってしかるべきではあるよな。
ミリアもそんなことは要求してこないが。
そのうち新しい釣竿でも買ってあげよう。

「ベスタにも渡しておく。自由に使っていいぞ」
「こんなにたくさん。ほんとによろしいのでしょうか」
「好きに使え」
「ありがとうございます。こんなに自分のお金を持ったのは初めてです」

奴隷の衣食住は所有者が責任を持って用意する。
ベスタがお金を持つような必要はこれまでなかったのだろう。

「では、とりあえず先にセリーをロッジに送ってくる。セリーもいいか」
「すみません。少し待ってもらえますか」

セリーが他の部屋に消えた。
どうしたのかと様子をうかがうと、パピルスと筆記具を用意しているらしい。
あれも確かセリーが自分の小遣いで買ったんだよな。
全部が全部呑み代に消えているわけではない。

「ベスタも、外に出るならもう行っていいぞ。それとも、冒険者ギルドまで送っていこうか?」
「いえ。大丈夫です。歩いて出かけようと思います」

ベスタは歩いて出るようだ。
そういえば、冒険者ギルドと家との間はほとんどワープを使っている。
ベスタに道が分かるだろうか。
通りに出たら一本道だから大丈夫か。

「お待たせしました」
「じゃあ行くか」
「いってらっしゃいませ」

セリーが戻ってきたので、三人に見送られロッジへとワープする。
ロッジではすぐにセバスチャンが迎えてくれた。

「これは、ミチオ様、セリー様。ようこそおいでくださいました」

下げる頭の角度も深い。
名前もよく覚えているものだが、今日俺が来ることは分かっているか。

「セリーに資料室を閲覧させたいが、大丈夫か」
「かしこまりました。係りの者を呼びますので、少々お待ちいただけますか」

セバスチャンが奥にいる男に何か合図を送り、その人が早足で去る。
走ってはいないが、かなり速い。
あっという間にいなくなった。

「何か必要なものはあるか?」
「いいえ。特にはございません。羊皮紙や筆記具、軽食なども、ご用命いただければこちらでご準備いたします」

羊皮紙ときたよ。
銀貨十枚で足りるのだろうか。

「筆記具は持ってきているのですが」
「もちろん、それをお使いいただいて結構でございます」

セリーが尋ねると、持ち込みはオッケ
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169/210リバティー 「明日は帝国解放会の入会式があるから、早朝だけ迷宮に行って、後は休みにしよう」 夕食のとき、明日の予定を話した。 エステル男爵から言われた入会儀礼の日取りは明日だ。 入会儀礼には俺以外の四人は立ち会えないから、休みにするのがいいだろう。「ありがとうございます。お休みをいただけるのですね」「そうだ。ロクサーヌは何がしたい?」「そうですね……」「休みとは、どういうことでしょう?」 ロクサーヌが考え込むと、ベスタが質問してきた。 そういえばベスタが来てからは初めての休日か。「明日は、朝食前は迷宮に入るが、その後は自由に過ごしていい」「そんなことを。よろしいのですか」「たまにはリフレッシュすることも必要だろう」「ありがとうございます」 ベスタが頭を下げる。「半日だが好きなことをしてくれ」「好きなことですか」 ロクサーヌに続いてベスタも思案顔になった。 急に休みと言われても戸惑うのだろう。 どこかの二人と違って。「セリーは、図書館か解放会の資料室か?」「はい。せっかくですので資料室に行ってみたいと思います」「ミリアは、釣りだよな」"ใช่" ไม่ให้ได้ยินเล็กน้อยเหล่านี้คนที่สอง ใบหน้าของ milia ส่องแสง ได้เช่นตกปลา"ฉันแม้ร้านจะต้องใช้ อยากไปในดันเจี้ยนบางแห่ง" Roxanne จะคล้ายในแง่ของสิ่งที่คุณต้องการทำสิ่งเดียวกันหรือไม่ ไม่ทราบว่า อะไรปิดและ Roxanne ต้องการให้เข้าไปในเขาวงกต จะวางตัวไปในเขาวงกตของจะปิด"จากการเหนี่ยวนำของวันพิธี สวัสดีกันเล็กน้อยในเขาวงกต""เป็นเรื่องจริง?? 」"ก็ไม่เป็นไร บอสล่าไหน Roxanne และอายุใช้งานค่อนข้างในบนชั้น" ยี่สิบสองปีศาจออกมาห้องบอสด้านล่างชั้นที่สองถ้า Roxanne มีฝ่ายตรงข้ามหนึ่งขณะดีฉัน 片dzukereba หนึ่ง มีให้เช่า estock แข็งจาก miria แน่นอนผมใช้ durandal Roxanne ประสงค์จะได้รับการอบรมเป็นอย่างดี ไม่ดี ประสบการณ์ค่า durandal สู้ กับมายากล แต่ติดค่ามี ต่อไป จึงจะได้รับ exp ควรไม่"การ blackdiatsuna การ"เต้นส่ง Aakar 22 ชั้นชั้น blackdiatsuna ของไปขึ้นมี หรือไม่ ของภัณฑารักษ์ 17 ชั้นชั้นอาจจะอย่างใด" ไม่ทราบว่าต่อสู้ millia, blackdiatsuna สามารถของฝ่ายตรงข้าม ของสองปีศาจออก ไปห้องบอส แต่ นอกห้องปกติจะกับปีศาจมากมายเจ้านาย ชั้น 22 ในระดับสองอาจจะแน่น กับเส้นยืนโดยตรงไปยังห้องบอสและห้องไม่ดี ไม่ทราบว่าไม่ได้พยายามหรือไม่ จะนำคุณไปห้องบอสจากห้องขนาดเล็กกลางลำดับชั้น Roxanne จากมอนสเตอร์ไปพร้อมกันได้เพื่อหลีกเลี่ยงการฝ่ายตรงข้ามจะต้องอยู่ คนสองคนดังนั้นไม่ต้องมากเกินไปในลำดับชั้น"ไม่ได้เรื่อง อาจฝึกดีถ้า curators ยาว 17 ชั้น""Lean หรือไขมันยังคง อยู่ แต่ และนำไปทำ""ผม ตกปลา ฉัน Blackdiatsuna..." Millia เริ่มกังวล ของระลึกสำหรับฟังไม่กล่าว สงสัยว่า Milia ที่จะ blackdiatsuna ถ้าคุณต้องการ 休みより魚の魔物の方がいいのだろうか。 それなら、ケープカープの出る階層を探索している現在、休みよりも迷宮に入っていた方がいいということだろうか。 それはまた別か。 ケープカープは食材を残さないし。 自分の手で食材を獲るというのは、一つの楽しみではある。 観光の地引網とかやな漁みたいな感じだろう。 魔物相手では危険もあるが。「ミリアも一緒にどうですか?」「どうせ日の出時間からはできないのだし、少し迷宮に入ってから釣りに行くくらいでもいいんじゃないか」「いく、です」 ロクサーヌと俺の勧めに、ミリアが食いついた。 何が悲しくて迷宮探索を休む日に迷宮に行きたがるのか。 まあ本人がしたいというのだからいいだろう。 これで結論が出ていないのはベスタだけだ。 ベスタは首をひねっている。 まだ決まっていないようだ。「ベスタはどっか行ってみたいところとか、ないか」「行ってみたいところですか」「もしくは、昔行けなかったところとか、もう一度行ってもいいと思ったところとか」「昔行きたかったところなら。いや。なんでもないです」 ベスタが意見を引っ込めた。 なんだろう。 行きたいところがあったなら、そこでいいのではないだろうか。 あ、そうか。 亡くなった祖父の家とかか。 昔は行きたかったが、今は行けない、もしくは行きたくないところとか。「あー。なんかやなこと思い出させちゃったか」「いえ。そんなことはありません」「それなら昔行きたかったところでも」「あの。本当に大丈夫です。今は行きたいとも思っていませんので」 ちょっと気になるが、大丈夫だというならいいのだろうか。 あまり深く尋ねるわけにも。「ひょっとして、ステーラですか?」 俺が引き下がろうと思っているのに、セリーがズバリと切り込んだ。 空気読め。「い、今はまったく行きたいとは思ってもいません」 ベスタが手を振って行きたくないと否定する。「ステーラ?」「ステーラにある神殿は奴隷を買い取ってくれます。お金を持っている人なら自分で自分を買い取ってもらうことができます。そうすれば解放奴隷になれます。お金を持っていない人でも、神殿に逃げ込めば他の人が自分を売るために支払ったお金や寄付金浄財を使い神殿が奴隷として購入してくれることがあるそうです」 セリーが教えてくれた。 なるほど。そんな場所があるのか。 中世にあった聖的な避難所、アジールってやつだ。 駆け込み寺みたいなものだろう。「ですから今はまったく」 ベスタがあわてて否定するわけだ。 ステーラに行きたいということは、俺から解放されたいということを意味する。 奴隷になることが決まっていた昔はステーラに行きたかったと。 ステーラに行けば、奴隷から解放されることができる。 いや、身分的には神殿が所有する奴隷ということになるのだろうか。 税金的にもその方が得だ。「逃げるとは考えていないので、気にするな」「はい。とてもよい主人に購入していただいたと感謝しています。いつまでもこのまま働かせていただきたいです」「頼むな」 今まで休日はみんなを自由にさせていたが、よかったのだろうか。 少なくともセリーは知っていたわけだし。 ただ、奴隷側としてもある程度は逃げた後に稼ぐ算段がないと駄目だろう。 うまく逃げおおせたとしても、自立する手段がなければ奴隷か盗賊に逆戻りだ。 ロクサーヌくらいなら迷宮に入ってやっていけそうだが。 ロクサーヌが逃げることは考えにくい。 セリーも鍛冶師でなんとかなるか。 しかし逃げるつもりならステーラのことを俺に教えたりしないだろう。「わ、私も一緒に迷宮に行きたいと思います」「いや。あんまり大勢で行ってもしょうがない。ベスタは休んでいろ。クーラタルか帝都をのんびりと観光してくるといい」「それなら、午前中は家かクーラタルにいてください。昼過ぎから私と一緒に帝都に行きましょう」 ロクサーヌがベスタに提案する。「はい。そうしようと思います」 ベスタが受け、全員の予定が決まった。 今のところ、ベスタには特にやりたいことはないようだ。 そのうちに何か見つけてくれればいい。 次の日は朝から暑かった。 今年一番の暑さかもしれない。 ベッドを囲んで置いてある桶の上の空気が微塵も冷たくなかったので、氷は全部解けたのだろう。 こんな日はあまり暑くない迷宮の中で一日過ごしたかった。 愚痴ってもしょうがないことだが。 早朝は迷宮に入り、パンや食材を買った後、家に戻る。 朝なのでまだそれほどでもないが、クーラタルの街中も陽射しがきつかった。「今日は暑くなりそうだな」「はい。ミリアにはしっかり言い聞かせてますので、大丈夫でしょう」
確かに、こんな暑い日に海に釣りに行ったら入りたくなりそうだ。
ロクサーヌもミリアの行動パターンはしっかりお見通しらしい。
ちなみに、この世界に海水浴というのはないようだ。
外に出るのは魔物がいて危険だろうし。

「休みなのでお金を渡そう。今回からは多少増額して、銀貨十枚にしようと思う」

朝食の後でお金をみんなに渡す。
セリーが行くロッジは高いみたいだし、小遣いも増やすべきだろう。
ロクサーヌとセリーだけというわけにもいかないだろうから、全員平等に増やす。

「ありがとうございます」

最初にロクサーヌに銀貨十枚を渡すと、喜んで受け取ってくれた。
何ごとも順番が大切である。

「ロクサーヌはいろいろ必要なものも買ってきてくれたしな。今回は自分のものを買ってくるといい」
「はい」

全員平等にしたが不満はないようだ。

「ロッジは高いみたいだからセリーには足りないかもしれないが」
「ありがとうございます。大丈夫です」

セリーは銀貨をアイテムボックスにしまった。
鍛冶師のアイテムボックスは同じアイテムが十個入るのでちょうど一列分だ。
ロッジにはどうせ入会儀礼で俺も行く。
いざとなればなんとかなるだろう。

「釣り道具で必要なものは基本的にはこのお金でまかなってくれ。釣具屋は迷宮に入った後で連れて行ってやる」
「はい、です。ありがとう、です」

厳密にいえば、ミリアが釣った魚を食べたりするのだから、その分は俺が買い取ってしかるべきではあるよな。
ミリアもそんなことは要求してこないが。
そのうち新しい釣竿でも買ってあげよう。

「ベスタにも渡しておく。自由に使っていいぞ」
「こんなにたくさん。ほんとによろしいのでしょうか」
「好きに使え」
「ありがとうございます。こんなに自分のお金を持ったのは初めてです」

奴隷の衣食住は所有者が責任を持って用意する。
ベスタがお金を持つような必要はこれまでなかったのだろう。

「では、とりあえず先にセリーをロッジに送ってくる。セリーもいいか」
「すみません。少し待ってもらえますか」

セリーが他の部屋に消えた。
どうしたのかと様子をうかがうと、パピルスと筆記具を用意しているらしい。
あれも確かセリーが自分の小遣いで買ったんだよな。
全部が全部呑み代に消えているわけではない。

「ベスタも、外に出るならもう行っていいぞ。それとも、冒険者ギルドまで送っていこうか?」
「いえ。大丈夫です。歩いて出かけようと思います」

ベスタは歩いて出るようだ。
そういえば、冒険者ギルドと家との間はほとんどワープを使っている。
ベスタに道が分かるだろうか。
通りに出たら一本道だから大丈夫か。

「お待たせしました」
「じゃあ行くか」
「いってらっしゃいませ」

セリーが戻ってきたので、三人に見送られロッジへとワープする。
ロッジではすぐにセバスチャンが迎えてくれた。

「これは、ミチオ様、セリー様。ようこそおいでくださいました」

下げる頭の角度も深い。
名前もよく覚えているものだが、今日俺が来ることは分かっているか。

「セリーに資料室を閲覧させたいが、大丈夫か」
「かしこまりました。係りの者を呼びますので、少々お待ちいただけますか」

セバスチャンが奥にいる男に何か合図を送り、その人が早足で去る。
走ってはいないが、かなり速い。
あっという間にいなくなった。

「何か必要なものはあるか?」
「いいえ。特にはございません。羊皮紙や筆記具、軽食なども、ご用命いただければこちらでご準備いたします」

羊皮紙ときたよ。
銀貨十枚で足りるのだろうか。

「筆記具は持ってきているのですが」
「もちろん、それをお使いいただいて結構でございます」

セリーが尋ねると、持ち込みはオッケ
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