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愛子乱心後日談二話目愛子嫌いの方は読まない方がいいかもしれませんただの
愛子乱心
後日談二話目
愛子嫌いの方は読まない方がいいかもしれません
ただの愛子の心情です
ハジメ達が去って三日経ったウルの町。
荒れた大地の整備やおびただしい数の魔物の死体処理など頭の痛い問題は多々あるが、それでも町も人も無傷という、起きた事態に対してまさに奇跡としか言い様のない結果。その吉報は、直ちに避難した住民達や周辺の町、王都に伝えられた、戻ってきた住人達は、再会した家族や恋人、友人達と抱きしめ合い、互の無事を喜び合ってウルの町はさながらお祭りのような喧騒に包まれていた。
町の周囲にはハジメが残していった防壁がそのまま残っており、戦いの一部始終を見届けた者達は、いかに常識を超えた戦いだったのかを身振り手振りで、防壁から荒れた大地に視線をやりながら神話の語り部のごとく語って聞かせた。避難していた人達、特に子供達はそんな彼等の話に目をキラキラさせている。抜け目のない商人達は、既にハジメの防壁をウルの町の新たな名物として一儲けする算段を付けていた。
そして、町の人々は、ハジメと愛子の間にあったことを知らないので、未だにハジメ達のことを“豊穣の女神”が遣わした御使いだと信じており、ハジメの防壁に“女神の盾”と名づけて敬った。また、白髪眼帯の少年ハジメの事を“女神の剣”あるいは“女神の騎士”と呼び、同じく敬った。それを聞いたデビッド達本当の護衛騎士達が、ハジメと愛子の口付けを思い出しながら「やっぱり、アイツは気に入らない！！」と荒れ狂ったのは別の話。後に、自分の二つ名を聞いてハジメが身悶えるのも別の話だ。
若干、自分自身への恥ずかしい二つ名という誤算はあったものの、ハジメの思惑通り、愛子の名声と人望は鰻登りだった。町を歩けば、全ての人間の視線が集まっているのではというほどの集中砲火を受け、中には「ありがたや～」と拝み始める人までいる。この町で、確かに目に見える形で人々を救った愛子は、正しく“女神”だった。その噂は、既に周辺へと伝播を始めている。少なくとも、ウルの町では既に聖教教会の司教よりも愛子の言葉の方が重みを持っている事は間違いないだろう。
その愛子はというと……町の復興支援やら重鎮達への対応を無難にこなしつつ、それでも親しい人には丸分かりなくらい明からさまに心ここにあらずという有様だった。原因は、言わずもがなだろう。戦いの前にハジメから伝えられた数々の衝撃の事実のこともあるが何より、ハジメが清水を殺したことが、その瞬間の光景が、愛子の脳裏から離れず心を蝕んでいるのである。
その日も、一日の役目を終えて夕食時となり、“水妖精の宿”でいつのもの様に生徒達や護衛隊の騎士達と食事をとっていたのだが、愛子は機械的に料理を口に運びつつも、どこかボーとした様子で会話の内容にも気のない返事をするばかりだった。
「愛ちゃん先生……やっぱり、愛ちゃん先生の魔法は凄いですよね！ あんなに荒れてた大地もどんどん浄化されていって……あと一週間もあれば元に戻りそうですもんね！」
「……そうですね……よかったです」
園部優香が、愛子の心ここにあらずな様子に気がつきつつも、殊更明るい様子で話しかける。愛子の変調の原因を理解しているために何とか励ましたいのだ。しかし、園部の明るさを含んだ言葉にも、愛子はまるで定型文をそのまま言葉にしたような気のない返事し返さない。園部が、「まだ、だめか～」と肩を落とす。
「愛子……今日も町長や司教様から何か言われたのか？ 本当に困ったら俺に言ってくれ。例え、司教様が相手でも愛子を困らせるような真似は俺が許さない。俺が・・、愛子の騎士なんだからな。何時でも、俺だけは・・・・愛子の味方だ」
「……そうですね……よかったです」
デビッドが、励ましたいのか口説きたいのかよくわからない言葉を愛子に贈る。神殿騎士でありながら司教に楯突くという発言はかなり危ないのだが、既に愛の戦士と成り果てているデビッドには関係ないのだろう。やたらと“俺”という部分が強調されているのは、誰に対抗しているのか……周囲の騎士達も察しはついているのでデビッドに同意しつつも、さり気なく抜け駆けしようとしている自分達の隊長に鋭い牽制の視線を送っている。
しかし、そんなデビッドのさり気ないアピールは某お昼の長寿番組の相槌の如き同じ言葉であっさり流された。聞いていたかも怪しいところだ。生徒達が肩を落とすデビッドに「ざまぁ～」という表情をする。一部の騎士達も同じ表情をしている。
そんな生徒達や騎士達のやり取りにも気がついていないのか、愛子は特に反応することもなく淡々と食事を続けていた。
（……私が、もっときちんと清水君とお話が出来ていれば……あの子の思いにもっと早く気がついていれば……そうすればこんな事にはならなかった……それに、彼に、同じ生徒である彼に、あんな事を頼まなければ……あの時、人質になんかならなければ……私が……死んでいれば……彼も清水君を殺す必要なんて……どうして、殺したの……同じクラスメイトなのに……敵だから？ ……それだけであんなにあっさり？ ……人を殺すってそんなに簡単なことなの？ ……そんな簡単に出来てしまうことなの？ ……そんなのおかしい……人は魔物ではないのに……あんな躊躇わずに……彼は……簡単に人を殺せる人間？ ……放っておけば他の子達も……彼は危険？ ……彼がいなければ清水君も死ななかった？……彼がいなくなれば他の子達は安全？ ……彼さえいなければ……ッ！？ 私は何を！ ……ダメ、これ以上考えてはダメ！）
今の愛子の心の内は、後悔と自責を延々と繰り返している状態だった……そして下手をすればハジメへの恐れと恨みが芽生えそうで、それを慌てて打ち消し、再び最初の思考に戻るということを繰り返していた。考えることが多すぎて、考えたくないことも多すぎて、愛子の心は、まるで本棚が倒壊した図書館の様に整理されていない情報が散乱しグチャグチャの状態だった。
そんな時、スっと心に響くような穏やかで温かみのある声音が愛子に届く。
「愛子様。本日の料理は、お口に合いませんでしたか？」
「ふぇ？」
“水妖精の宿”オーナーのフォス・セルオだ。彼の声は決して大きくはないどころか、むしろ小さいくらいだ。だが、この宿にいる者でフォスの言葉を聞き逃すものはいない。彼の深みがあって落ち着いた声音は、必ず相手に届くのだ。今も、心を思考の渦に囚われていた愛子へあっさり言葉を届け、その意識を現実へと回帰させた。
変な声を出してしまった事に気がつき、愛子は少し頬を染めつつ穏やかに微笑むフォスに視線を向ける。
「え、えっと何でしょう？ すいません、ちょっとボーとしてました」
「いえいえ、お気になさらず。何やら浮かないお顔でしたので、料理がお口に合わなかったのかと。宜しければ他をお出ししますが……」
「い、いえ！ お料理は、とっても美味しいですよ。ちょっと考え事をしていたもので……」
とても美味しいと言いながら、食べた料理の味が思い出せない愛子。周囲を見渡せば、生徒達や騎士達も、どこか心配そうな眼差しを自分に向けている。自分が相当、思考の坩堝にはまっていることに気がつき、これではいけないと気を取り直し、食事を再開するが、少し慌てていたため気管に入り盛大にむせた。
涙目でケホッケホッとむせる愛子に、生徒達や騎士達があわあわとする。そんな様子を視界に収めつつ、さり気なくナプキンと水を用意するフォス。
「す、すみません。ご迷惑を……」
「迷惑など、とんでもない」
愛子の失態を見ても穏やかな微笑みを崩さないフォスに、安心感を抱きつつも恐縮する愛子。そんな愛子に、フォスは目を細めると少し考える素振りを見せて、やはり静かな落ち着いた声音で語りかけた。
「ふむ。愛子様。僭越ながら一つ宜しいでしょうか？」
「え？ ええ、はい。なんでしょうか？」
「愛子様の信じたいことを信じてみてはいかがでしょう？」
「へ？」
フォスの脈絡のない言葉に愛子は頭に“？”を浮かべて首を傾げる。それに、「言葉足らずでした」と苦笑いしながらフォスが話を続ける。
「どうやら、愛子様の心は、今、大変な混乱の中にあるように見受けられます。考えるべき事も考えたくない事も多すぎて、何をどうすればいいのかわからない。何が最善か、自分がどうしたいのか、それもわからない。わからない事ばかりで、どうにかしなければと焦りばかりが募り、それがまた混乱に拍車をかける悪循環。違いますか？」
「ど、どうして……」
今の愛子の心の内をドンピシャリと言い当てられて、思わず言葉を詰まらせる愛子。そんな愛子に、フォスは「色々なお客様を見てきていますので」と穏やかに微笑む。
「そういう時は、取り敢えず“信じたいものを信じてみる”というのも手の一つかと。よく、人は信じたいものだけ信じて真実を見逃すと、そう警告的に言われることがあります。それは確かにその通りなのでしょう。しかし、人の行動は信じるところから始まると私などは思うのです。ならば、“動けない”時には逆に“信じたいものを信じる”というのも悪くない手だと、そう思うのです」
「……信じたいことを信じる」
フォスのその言葉を愛子は反芻する。愛子の心は、今、後悔と罪悪感と、芽生えそうなハジメへの疑心、恨みでぐるぐると渦巻いている。ハジメは確かに愛子の大切な生徒ではあったが、同じく大切な生徒である清水を殺害し、場合によっては他の生徒の命をも奪いかねない存在であると理解した瞬間、ハジメを自分の大切なものを奪おうとする脅威であると認識してしまったのだ。それでも、ハジメもまた生徒である以上、完全に切り捨てられない。大量虐殺をしようとした清水を見捨てられなかったように。だからこそ、どうすればいいのかわからず混乱する。難儀な性格であると、愛子自身も思うが、こればっかりは仕方ない。それが畑山愛子“先生”なのだから。
フォスは、愛子に何があったのかを知らない。彼女が、ある意味信じたいことを信じすぎたが為に今の状態にあるとは知らない。それでも、信じていたものが尽く崩れ去って身動きが取れなくなっている状態で盛大に失態を犯した今では、見え方も異なり有効かもしれなかった。
そう思った愛子は、食事の手を止めて思考に没頭し始める。
（信じたいものを信じる。私が信じたいこと……何でしょう？ 一つは、生徒達と皆で日本に帰る事です。でも、それはもう叶わない。今は、これ以上欠けることなく皆で帰れるという事を信じたい……彼の話。クラスメイトの誰かに殺されかけたという話。それは信じたくありません……彼が、邪魔すれば私達でも殺すと言った事、人殺しを躊躇わない人間に…生徒達を脅かす敵に……これも信じたくありません。でも、実際、彼はあの子を……清水君を躊躇わず殺した。なら、もう彼は……いえ、信じたいことを信じるのです）
再び、黒い感情が浮かびそうになるのを瞑目して押さえ込む愛子。周囲の者達は、微動だにせず何かを考え込む愛子を心配そうに見ている。
（彼は言っていました。“敵だから”と。それに“余裕がない”とも。清水君を生かした後、自分や周りの大切な人が再び襲われることを危惧したから殺した。それは、誰かを思ってのこと。実際、ただの冷酷な人間ならユエさんやシアさんがあんなに信頼を寄せるはずがありません。彼は、あの子達のためにも後顧の憂いを断ちたかった……だから生かしておけなかった。つまり、私が、清水君をどうにかできるとは思えなかったのですね……清水君を生かしたければ、改心させられると確信出来るくらいの何かを私が見せなければならなかった……結局は、私が無力なばかりに……清水君は……それでも、あんな風に殺すなんて……唯でさえ清水君は弱って……ッ）
清水を撃ち殺したハジメにも、そうするだけの明確な理由があった。だから、人殺しを何とも思わない壊れた人間などではなく、理解できない化け物でもなく、闇雲に生徒達を害する敵でもなく、未だ自分の言葉が届く“生徒”なのだと信じようとする愛子。そして、その思考過程で、生徒が生徒を撃ち殺すと
後日談二話目
愛子嫌いの方は読まない方がいいかもしれません
ただの愛子の心情です
ハジメ達が去って三日経ったウルの町。
荒れた大地の整備やおびただしい数の魔物の死体処理など頭の痛い問題は多々あるが、それでも町も人も無傷という、起きた事態に対してまさに奇跡としか言い様のない結果。その吉報は、直ちに避難した住民達や周辺の町、王都に伝えられた、戻ってきた住人達は、再会した家族や恋人、友人達と抱きしめ合い、互の無事を喜び合ってウルの町はさながらお祭りのような喧騒に包まれていた。
町の周囲にはハジメが残していった防壁がそのまま残っており、戦いの一部始終を見届けた者達は、いかに常識を超えた戦いだったのかを身振り手振りで、防壁から荒れた大地に視線をやりながら神話の語り部のごとく語って聞かせた。避難していた人達、特に子供達はそんな彼等の話に目をキラキラさせている。抜け目のない商人達は、既にハジメの防壁をウルの町の新たな名物として一儲けする算段を付けていた。
そして、町の人々は、ハジメと愛子の間にあったことを知らないので、未だにハジメ達のことを“豊穣の女神”が遣わした御使いだと信じており、ハジメの防壁に“女神の盾”と名づけて敬った。また、白髪眼帯の少年ハジメの事を“女神の剣”あるいは“女神の騎士”と呼び、同じく敬った。それを聞いたデビッド達本当の護衛騎士達が、ハジメと愛子の口付けを思い出しながら「やっぱり、アイツは気に入らない！！」と荒れ狂ったのは別の話。後に、自分の二つ名を聞いてハジメが身悶えるのも別の話だ。
若干、自分自身への恥ずかしい二つ名という誤算はあったものの、ハジメの思惑通り、愛子の名声と人望は鰻登りだった。町を歩けば、全ての人間の視線が集まっているのではというほどの集中砲火を受け、中には「ありがたや～」と拝み始める人までいる。この町で、確かに目に見える形で人々を救った愛子は、正しく“女神”だった。その噂は、既に周辺へと伝播を始めている。少なくとも、ウルの町では既に聖教教会の司教よりも愛子の言葉の方が重みを持っている事は間違いないだろう。
その愛子はというと……町の復興支援やら重鎮達への対応を無難にこなしつつ、それでも親しい人には丸分かりなくらい明からさまに心ここにあらずという有様だった。原因は、言わずもがなだろう。戦いの前にハジメから伝えられた数々の衝撃の事実のこともあるが何より、ハジメが清水を殺したことが、その瞬間の光景が、愛子の脳裏から離れず心を蝕んでいるのである。
その日も、一日の役目を終えて夕食時となり、“水妖精の宿”でいつのもの様に生徒達や護衛隊の騎士達と食事をとっていたのだが、愛子は機械的に料理を口に運びつつも、どこかボーとした様子で会話の内容にも気のない返事をするばかりだった。
「愛ちゃん先生……やっぱり、愛ちゃん先生の魔法は凄いですよね！ あんなに荒れてた大地もどんどん浄化されていって……あと一週間もあれば元に戻りそうですもんね！」
「……そうですね……よかったです」
園部優香が、愛子の心ここにあらずな様子に気がつきつつも、殊更明るい様子で話しかける。愛子の変調の原因を理解しているために何とか励ましたいのだ。しかし、園部の明るさを含んだ言葉にも、愛子はまるで定型文をそのまま言葉にしたような気のない返事し返さない。園部が、「まだ、だめか～」と肩を落とす。
「愛子……今日も町長や司教様から何か言われたのか？ 本当に困ったら俺に言ってくれ。例え、司教様が相手でも愛子を困らせるような真似は俺が許さない。俺が・・、愛子の騎士なんだからな。何時でも、俺だけは・・・・愛子の味方だ」
「……そうですね……よかったです」
デビッドが、励ましたいのか口説きたいのかよくわからない言葉を愛子に贈る。神殿騎士でありながら司教に楯突くという発言はかなり危ないのだが、既に愛の戦士と成り果てているデビッドには関係ないのだろう。やたらと“俺”という部分が強調されているのは、誰に対抗しているのか……周囲の騎士達も察しはついているのでデビッドに同意しつつも、さり気なく抜け駆けしようとしている自分達の隊長に鋭い牽制の視線を送っている。
しかし、そんなデビッドのさり気ないアピールは某お昼の長寿番組の相槌の如き同じ言葉であっさり流された。聞いていたかも怪しいところだ。生徒達が肩を落とすデビッドに「ざまぁ～」という表情をする。一部の騎士達も同じ表情をしている。
そんな生徒達や騎士達のやり取りにも気がついていないのか、愛子は特に反応することもなく淡々と食事を続けていた。
（……私が、もっときちんと清水君とお話が出来ていれば……あの子の思いにもっと早く気がついていれば……そうすればこんな事にはならなかった……それに、彼に、同じ生徒である彼に、あんな事を頼まなければ……あの時、人質になんかならなければ……私が……死んでいれば……彼も清水君を殺す必要なんて……どうして、殺したの……同じクラスメイトなのに……敵だから？ ……それだけであんなにあっさり？ ……人を殺すってそんなに簡単なことなの？ ……そんな簡単に出来てしまうことなの？ ……そんなのおかしい……人は魔物ではないのに……あんな躊躇わずに……彼は……簡単に人を殺せる人間？ ……放っておけば他の子達も……彼は危険？ ……彼がいなければ清水君も死ななかった？……彼がいなくなれば他の子達は安全？ ……彼さえいなければ……ッ！？ 私は何を！ ……ダメ、これ以上考えてはダメ！）
今の愛子の心の内は、後悔と自責を延々と繰り返している状態だった……そして下手をすればハジメへの恐れと恨みが芽生えそうで、それを慌てて打ち消し、再び最初の思考に戻るということを繰り返していた。考えることが多すぎて、考えたくないことも多すぎて、愛子の心は、まるで本棚が倒壊した図書館の様に整理されていない情報が散乱しグチャグチャの状態だった。
そんな時、スっと心に響くような穏やかで温かみのある声音が愛子に届く。
「愛子様。本日の料理は、お口に合いませんでしたか？」
「ふぇ？」
“水妖精の宿”オーナーのフォス・セルオだ。彼の声は決して大きくはないどころか、むしろ小さいくらいだ。だが、この宿にいる者でフォスの言葉を聞き逃すものはいない。彼の深みがあって落ち着いた声音は、必ず相手に届くのだ。今も、心を思考の渦に囚われていた愛子へあっさり言葉を届け、その意識を現実へと回帰させた。
変な声を出してしまった事に気がつき、愛子は少し頬を染めつつ穏やかに微笑むフォスに視線を向ける。
「え、えっと何でしょう？ すいません、ちょっとボーとしてました」
「いえいえ、お気になさらず。何やら浮かないお顔でしたので、料理がお口に合わなかったのかと。宜しければ他をお出ししますが……」
「い、いえ！ お料理は、とっても美味しいですよ。ちょっと考え事をしていたもので……」
とても美味しいと言いながら、食べた料理の味が思い出せない愛子。周囲を見渡せば、生徒達や騎士達も、どこか心配そうな眼差しを自分に向けている。自分が相当、思考の坩堝にはまっていることに気がつき、これではいけないと気を取り直し、食事を再開するが、少し慌てていたため気管に入り盛大にむせた。
涙目でケホッケホッとむせる愛子に、生徒達や騎士達があわあわとする。そんな様子を視界に収めつつ、さり気なくナプキンと水を用意するフォス。
「す、すみません。ご迷惑を……」
「迷惑など、とんでもない」
愛子の失態を見ても穏やかな微笑みを崩さないフォスに、安心感を抱きつつも恐縮する愛子。そんな愛子に、フォスは目を細めると少し考える素振りを見せて、やはり静かな落ち着いた声音で語りかけた。
「ふむ。愛子様。僭越ながら一つ宜しいでしょうか？」
「え？ ええ、はい。なんでしょうか？」
「愛子様の信じたいことを信じてみてはいかがでしょう？」
「へ？」
フォスの脈絡のない言葉に愛子は頭に“？”を浮かべて首を傾げる。それに、「言葉足らずでした」と苦笑いしながらフォスが話を続ける。
「どうやら、愛子様の心は、今、大変な混乱の中にあるように見受けられます。考えるべき事も考えたくない事も多すぎて、何をどうすればいいのかわからない。何が最善か、自分がどうしたいのか、それもわからない。わからない事ばかりで、どうにかしなければと焦りばかりが募り、それがまた混乱に拍車をかける悪循環。違いますか？」
「ど、どうして……」
今の愛子の心の内をドンピシャリと言い当てられて、思わず言葉を詰まらせる愛子。そんな愛子に、フォスは「色々なお客様を見てきていますので」と穏やかに微笑む。
「そういう時は、取り敢えず“信じたいものを信じてみる”というのも手の一つかと。よく、人は信じたいものだけ信じて真実を見逃すと、そう警告的に言われることがあります。それは確かにその通りなのでしょう。しかし、人の行動は信じるところから始まると私などは思うのです。ならば、“動けない”時には逆に“信じたいものを信じる”というのも悪くない手だと、そう思うのです」
「……信じたいことを信じる」
フォスのその言葉を愛子は反芻する。愛子の心は、今、後悔と罪悪感と、芽生えそうなハジメへの疑心、恨みでぐるぐると渦巻いている。ハジメは確かに愛子の大切な生徒ではあったが、同じく大切な生徒である清水を殺害し、場合によっては他の生徒の命をも奪いかねない存在であると理解した瞬間、ハジメを自分の大切なものを奪おうとする脅威であると認識してしまったのだ。それでも、ハジメもまた生徒である以上、完全に切り捨てられない。大量虐殺をしようとした清水を見捨てられなかったように。だからこそ、どうすればいいのかわからず混乱する。難儀な性格であると、愛子自身も思うが、こればっかりは仕方ない。それが畑山愛子“先生”なのだから。
フォスは、愛子に何があったのかを知らない。彼女が、ある意味信じたいことを信じすぎたが為に今の状態にあるとは知らない。それでも、信じていたものが尽く崩れ去って身動きが取れなくなっている状態で盛大に失態を犯した今では、見え方も異なり有効かもしれなかった。
そう思った愛子は、食事の手を止めて思考に没頭し始める。
（信じたいものを信じる。私が信じたいこと……何でしょう？ 一つは、生徒達と皆で日本に帰る事です。でも、それはもう叶わない。今は、これ以上欠けることなく皆で帰れるという事を信じたい……彼の話。クラスメイトの誰かに殺されかけたという話。それは信じたくありません……彼が、邪魔すれば私達でも殺すと言った事、人殺しを躊躇わない人間に…生徒達を脅かす敵に……これも信じたくありません。でも、実際、彼はあの子を……清水君を躊躇わず殺した。なら、もう彼は……いえ、信じたいことを信じるのです）
再び、黒い感情が浮かびそうになるのを瞑目して押さえ込む愛子。周囲の者達は、微動だにせず何かを考え込む愛子を心配そうに見ている。
（彼は言っていました。“敵だから”と。それに“余裕がない”とも。清水君を生かした後、自分や周りの大切な人が再び襲われることを危惧したから殺した。それは、誰かを思ってのこと。実際、ただの冷酷な人間ならユエさんやシアさんがあんなに信頼を寄せるはずがありません。彼は、あの子達のためにも後顧の憂いを断ちたかった……だから生かしておけなかった。つまり、私が、清水君をどうにかできるとは思えなかったのですね……清水君を生かしたければ、改心させられると確信出来るくらいの何かを私が見せなければならなかった……結局は、私が無力なばかりに……清水君は……それでも、あんな風に殺すなんて……唯でさえ清水君は弱って……ッ）
清水を撃ち殺したハジメにも、そうするだけの明確な理由があった。だから、人殺しを何とも思わない壊れた人間などではなく、理解できない化け物でもなく、闇雲に生徒達を害する敵でもなく、未だ自分の言葉が届く“生徒”なのだと信じようとする愛子。そして、その思考過程で、生徒が生徒を撃ち殺すと
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Aiko distractionAt a later date the story second story.May be I should not read are fact-averseIs Aiko's just feelings Town Hajime who, three days later. The incident happened that there are many problems, such as disposal of rough ground and myriad demons is still intact town also who exactly what miracle do not seen results. The good news immediately evacuated residents and returning residents around town, King told the mutual embrace reunited family, lovers, friends and town just like festivals, such as the joy to each other was wrapped up in the hustle and bustle. While on Earth was the battle beyond common sense for how people watched the whole battle, Hajime left around the town walls remain intact and are hand gestures, wild walls do look like the narrator of myths, he told. Were displaced people, especially children in the story of his glowing eyes. Was with the shrewd merchants managed to scrape together already Hajime barrier to strike as a new specialty in your town. And so people in town don't know Hajime and Aiko was still sent "harvest goddess" Hajime that and believe it's Angel, respected Hajime barrier named "shield of the goddess". In addition, respected boy Hajime white eyepatch thing "sword goddess" or "Knight of the goddess" and called the same. While recalling the kiss of Hajime and Aiko escort Knights of the David 達本 I heard it "after all, I don't like! "And pound is another story. After their two name to hear that a Hajime body writhes is another story. Slightly, to myself embarrassed was two miscalculations that name though as Hajime's, Aiko's fame and popularity were they skyrocket. Received barrage that attracts stares of all human beings walk through town, much of the in ' and ye, ~ ' and that people begin to worship him. Aiko saved the people in this town certainly visible in was properly a "Goddess". The rumors have already begun propagation to the area. At least, in ur town already than the Bishop of the Church of St. Aiko words more weight that you have doubt. The Aiko and say... To respond to the reconstruction of the town and stalwart who in safe, taking a round to understand still friends as Ming from customer in mind is not here and said he had. Would cause that goes without saying. That has taken hold of the mind, leaving Aiko mind spectacle of the moment is that there are numerous shocks ago the battle told from Hajime fact that above all, killed the Shimizu Hajime. That day also finished the day job, at dinner time, "water fairy places" in when things travellers had just at that baud was taking meals with students and Knights of the guard corps, but Aiko mechanically dishes to mouth carries, while somewhere on the contents of the conversation like reply."Love her teacher... It is after all, the magic of love-Chan teacher great! Earth so rough? said more and more purified. Is going back more than a week if it! 」「…… So it is... Good ' Sonobe Yuka is Aiko's heart is not here and noticed how, while deliberately speaking in bright. Understand the cause of Aiko somehow want to encourage it. But the word contains the brightness of sonobe, Aiko as boilerplate text the words feel like does not return, and then reply. Sonobe was "yet, how to ' and drop the shoulders."Aiko. Today even the mayor or from the Bishop said something? Let me know I really get in trouble. Like pestering Aiko opponent at Bishop, even if he does not allow me. I-and, from the Knights of the Aiko's a. At any time, just me.... Aiko side? '「…… So it is... Good ' Aiko give words often do not know want to encourage David or want to tell. Nothing to do with David's remarks that starkly with Temple Knights Bishop is pretty dangerous, but already love warriors and consists of strung out? And what I stressed the "me" part of the counter to anyone. Trying to attempt to steal casually agree David Knights around the niceties are clean, while their captain sent sharp supervision gaze. But the nonchalant appeal that David is one like a verbal longevity program for lunch unceremoniously swept in the same words. I've heard or even suspicious. David students drop shoulders to knees!-expression. Some Knights also have the same look. Without Aiko especially react or not communicate such students and Knights on the mind and was continuing to eat.（…… I better talk about is quite and Shimizu. To the child's earlier care if you have a... So you had to do such a thing. That, to him, he in the same student to ask such a thing. At that time, to become something hostage. I have... If dead. He also kill Mr. Shimizu's. Why the killing of... And yet the same classmate. From the enemy? …… As it so easily? …… Of that killing people was so easy? …… Can be made so easily?. …… That's funny... People are demons, not to... To so without hesitating. He is... Easy to kill humans? …… If other children too. Is he dangerous? …… Even Mr. Shimizu did not die without him? …… He could stop other children safe? …… Not even his. Tsu! I what! …… Bad, bad thoughts more than this! ） Was a State in the heart of Aiko now regret and remorse are repeating endlessly. And so coincidentally Hajime fear and resentment are unskilled hurry it cancel out, back to the thinking of the first was repeated. Think much too much, don't want to think too many too and was gooey heart of Aiko and scattered information is not organized like a library Bookshelf collapsed as if. At that time, Su I and Aiko reaches the calm and warm voices resonate in the hearts."Aiko. Dish of the day doesn't go in your mouth? 」"Fate? 」 It's "water fairy places" owner Foz do cellular. It's never his voice, but not great, in fact rather less long. However, no one can miss Foz do words in which this lodging. It's his deep, soothing voice will always reach her. Aiko was experiencing thoughts swirl heart now also reach easily words, repatriation of the consciousness to reality. With care to put a funny voice, Aiko a little tinted cheeks while calmly turn gaze to FOSS smiles."Eh, eh and what? I'm sorry, I was kinda baud ""Oh, you don't like Ma'am. And do something long you face, so food does not agree with your mouth. But if others we serve... ""No, no! Food is very tasty. What I had thought...... " Aiko is the taste of the food I ate very delicious, yet I can't remember. Looking around students and Knights, turning anxious gaze somewhere on your own. Noticed that myself, in the crucible of thought, don't now and pulled herself together to resume eating, but a little bit upset for tracheal, choked on. Aiko chokes with tears eyes kehockehop and to あわあわ and his students and Knights. Gaining such a situation in sight, Foz do casually have a napkin and water."Do excuse me. Inconvenience.... "See junk such ridiculous' Aiko Foz do disturb the serene smile looking at Aiko blunder, peace of mind becoming also an excuse. Show me swinging a little bit think blink is FOSS that Aiko at, still spoke in a quiet calm voice.' Heh. Princess Aiko. Taking the liberty can one be? 」' EH? Yes, Yes. What do you do? 」"Try to believe that Princess Aiko, who wants to believe a dip? 」' To? 」 Of FOSS unrelated words Aiko is the head "? "She tilts her head, smiling. It, smiled a wry smile "Word was' keep talking FOSS."Apparently, Aiko's mind is can be seen during a lot of confusion is now. Things to think about things I don't want to think nor much too, I don't know what to do. What is the best do it yourself if you want or we don't know. At all do not know about and to do something about impatience just solicited, it is also confusing to spur a vicious circle. Do you different it? 」"Such as, why do..." Aiko is Orient struck in the heart of Aiko now, I clog the words. Like Aiko, Foz do 'customers I've watched since' smiles gently."And so when 取ri敢えzu or hand one thing"try to believe what we believe "is also. You may miss the truth, well, people who believe just believe and said yes in the warning. It is certainly that. However, I think people's behavior begins from believing. If you think so: "don't move" reverse "believe what you want to believe" is also not a bad hand, and it is "「…… Believe that I want to believe ' The words of Foz do if she is Aiko. Aiko's heart in to Hajime likely sprout regret and guilt, and now, though, resentment around are swirling round and. Hajime is certainly important student Aiko is had, also has recognized a threat and killing important student in Shimizu, might deprive the lives of other students in some cases exist in the moment, Hajime steal your important stuff to it. Still, Hajime also also more students, completely truncate. Abandoned was not Shimizu try genocide and the like. That is why, without knowing what to do, confusing. As a hard character, Aiko himself, but is the only unavoidable. From. the Hatakeyama Aiko "teacher". Don't know what FOSS was what Aiko. Meaning that she too believe it wants to believe that for the now state that they. Now made big blunder still believed out of being pinned down and falling apart in different but more could have been effective. Aiko thought so, stop eating and start immersed in thought.（ believed in what you want to believe. I want to believe that. What would be? One thing the students and is back in Japan. But it is not fulfilled anymore. Back in without clipping now is more believing that you want. He's talking about. The story that almost killed someone's classmates. I do not want to believe it. The man afraid thing kill us even if you bother him as a murderer. The enemy threatening the students. It also does not want to believe. But in fact, his child. VIII Shimizu, and killed. If again he... Is to believe that though, I want to believe ） Aiko Emerg and they die again, black emotions appeared to be in. Around the person who sees the Aiko something thoughtfully, without worry about.（ He said. From "enemy's". At least it "can't afford". From the feared that the important people around and again attacked by utilizing Shimizu after the killing. It's thinking of someone. In fact, if just a ruthless man Yue Ms Shea's such trust should be OJ No. He is to their anxiety about one's wanted to break off. So he alive. I didn't think I could somehow Mr. Shimizu is... Anything much can be sure and be reformed, and utilizing the Shimizu had to show me. After all, my helpless just to... The Shimizu. I still like to kill. But Mr. Shimizu is weak. ） Hajime Shimizu shot dead even, to do so only for specific reasons. Aiko to believe so, not such broken human beings think nothing of murder, not incomprehensible monster and any enemy harming the students randomly, yet receive his words "pupils". And in the thinking process, and shoot students students
การแปล กรุณารอสักครู่..
愛子乱心
後日談二話目
愛子嫌いの方は読まない方がいいかもしれません
ただの愛子の心情です
ハジメ達が去って三日経ったウルの町。
荒れた大地の整備やおびただしい数の魔物の死体処理など頭の痛い問題は多々あるが、それでも町も人も無傷という、起きた事態に対してまさに奇跡としか言い様のない結果。その吉報は、直ちに避難した住民達や周辺の町、王都に伝えられた、戻ってきた住人達は、再会した家族や恋人、友人達と抱きしめ合い、互の無事を喜び合ってウルの町はさながらお祭りのような喧騒に包まれていた。
町の周囲にはハジメが残していった防壁がそのまま残っており、戦いの一部始終を見届けた者達は、いかに常識を超えた戦いだったのかを身振り手振りで、防壁から荒れた大地に視線をやりながら神話の語り部のごとく語って聞かせた。避難していた人達、特に子供達はそんな彼等の話に目をキラキラさせている。抜け目のない商人達は、既にハジメの防壁をウルの町の新たな名物として一儲けする算段を付けていた。
そして、町の人々は、ハジメと愛子の間にあったことを知らないので、未だにハジメ達のことを“豊穣の女神”が遣わした御使いだと信じており、ハジメの防壁に“女神の盾”と名づけて敬った。また、白髪眼帯の少年ハジメの事を“女神の剣”あるいは“女神の騎士”と呼び、同じく敬った。それを聞いたデビッド達本当の護衛騎士達が、ハジメと愛子の口付けを思い出しながら「やっぱり、アイツは気に入らない！！」と荒れ狂ったのは別の話。後に、自分の二つ名を聞いてハジメが身悶えるのも別の話だ。
若干、自分自身への恥ずかしい二つ名という誤算はあったものの、ハジメの思惑通り、愛子の名声と人望は鰻登りだった。町を歩けば、全ての人間の視線が集まっているのではというほどの集中砲火を受け、中には「ありがたや～」と拝み始める人までいる。この町で、確かに目に見える形で人々を救った愛子は、正しく“女神”だった。その噂は、既に周辺へと伝播を始めている。少なくとも、ウルの町では既に聖教教会の司教よりも愛子の言葉の方が重みを持っている事は間違いないだろう。
その愛子はというと……町の復興支援やら重鎮達への対応を無難にこなしつつ、それでも親しい人には丸分かりなくらい明からさまに心ここにあらずという有様だった。原因は、言わずもがなだろう。戦いの前にハジメから伝えられた数々の衝撃の事実のこともあるが何より、ハジメが清水を殺したことが、その瞬間の光景が、愛子の脳裏から離れず心を蝕んでいるのである。
その日も、一日の役目を終えて夕食時となり、“水妖精の宿”でいつのもの様に生徒達や護衛隊の騎士達と食事をとっていたのだが、愛子は機械的に料理を口に運びつつも、どこかボーとした様子で会話の内容にも気のない返事をするばかりだった。
「愛ちゃん先生……やっぱり、愛ちゃん先生の魔法は凄いですよね！ あんなに荒れてた大地もどんどん浄化されていって……あと一週間もあれば元に戻りそうですもんね！」
「……そうですね……よかったです」
園部優香が、愛子の心ここにあらずな様子に気がつきつつも、殊更明るい様子で話しかける。愛子の変調の原因を理解しているために何とか励ましたいのだ。しかし、園部の明るさを含んだ言葉にも、愛子はまるで定型文をそのまま言葉にしたような気のない返事し返さない。園部が、「まだ、だめか～」と肩を落とす。
「愛子……今日も町長や司教様から何か言われたのか？ 本当に困ったら俺に言ってくれ。例え、司教様が相手でも愛子を困らせるような真似は俺が許さない。俺が・・、愛子の騎士なんだからな。何時でも、俺だけは・・・・愛子の味方だ」
「……そうですね……よかったです」
デビッドが、励ましたいのか口説きたいのかよくわからない言葉を愛子に贈る。神殿騎士でありながら司教に楯突くという発言はかなり危ないのだが、既に愛の戦士と成り果てているデビッドには関係ないのだろう。やたらと“俺”という部分が強調されているのは、誰に対抗しているのか……周囲の騎士達も察しはついているのでデビッドに同意しつつも、さり気なく抜け駆けしようとしている自分達の隊長に鋭い牽制の視線を送っている。
しかし、そんなデビッドのさり気ないアピールは某お昼の長寿番組の相槌の如き同じ言葉であっさり流された。聞いていたかも怪しいところだ。生徒達が肩を落とすデビッドに「ざまぁ～」という表情をする。一部の騎士達も同じ表情をしている。
そんな生徒達や騎士達のやり取りにも気がついていないのか、愛子は特に反応することもなく淡々と食事を続けていた。
（……私が、もっときちんと清水君とお話が出来ていれば……あの子の思いにもっと早く気がついていれば……そうすればこんな事にはならなかった……それに、彼に、同じ生徒である彼に、あんな事を頼まなければ……あの時、人質になんかならなければ……私が……死んでいれば……彼も清水君を殺す必要なんて……どうして、殺したの……同じクラスメイトなのに……敵だから？ ……それだけであんなにあっさり？ ……人を殺すってそんなに簡単なことなの？ ……そんな簡単に出来てしまうことなの？ ……そんなのおかしい……人は魔物ではないのに……あんな躊躇わずに……彼は……簡単に人を殺せる人間？ ……放っておけば他の子達も……彼は危険？ ……彼がいなければ清水君も死ななかった？……彼がいなくなれば他の子達は安全？ ……彼さえいなければ……ッ！？ 私は何を！ ……ダメ、これ以上考えてはダメ！）
今の愛子の心の内は、後悔と自責を延々と繰り返している状態だった……そして下手をすればハジメへの恐れと恨みが芽生えそうで、それを慌てて打ち消し、再び最初の思考に戻るということを繰り返していた。考えることが多すぎて、考えたくないことも多すぎて、愛子の心は、まるで本棚が倒壊した図書館の様に整理されていない情報が散乱しグチャグチャの状態だった。
そんな時、スっと心に響くような穏やかで温かみのある声音が愛子に届く。
「愛子様。本日の料理は、お口に合いませんでしたか？」
「ふぇ？」
“水妖精の宿”オーナーのフォス・セルオだ。彼の声は決して大きくはないどころか、むしろ小さいくらいだ。だが、この宿にいる者でフォスの言葉を聞き逃すものはいない。彼の深みがあって落ち着いた声音は、必ず相手に届くのだ。今も、心を思考の渦に囚われていた愛子へあっさり言葉を届け、その意識を現実へと回帰させた。
変な声を出してしまった事に気がつき、愛子は少し頬を染めつつ穏やかに微笑むフォスに視線を向ける。
「え、えっと何でしょう？ すいません、ちょっとボーとしてました」
「いえいえ、お気になさらず。何やら浮かないお顔でしたので、料理がお口に合わなかったのかと。宜しければ他をお出ししますが……」
「い、いえ！ お料理は、とっても美味しいですよ。ちょっと考え事をしていたもので……」
とても美味しいと言いながら、食べた料理の味が思い出せない愛子。周囲を見渡せば、生徒達や騎士達も、どこか心配そうな眼差しを自分に向けている。自分が相当、思考の坩堝にはまっていることに気がつき、これではいけないと気を取り直し、食事を再開するが、少し慌てていたため気管に入り盛大にむせた。
涙目でケホッケホッとむせる愛子に、生徒達や騎士達があわあわとする。そんな様子を視界に収めつつ、さり気なくナプキンと水を用意するフォス。
「す、すみません。ご迷惑を……」
「迷惑など、とんでもない」
愛子の失態を見ても穏やかな微笑みを崩さないフォスに、安心感を抱きつつも恐縮する愛子。そんな愛子に、フォスは目を細めると少し考える素振りを見せて、やはり静かな落ち着いた声音で語りかけた。
「ふむ。愛子様。僭越ながら一つ宜しいでしょうか？」
「え？ ええ、はい。なんでしょうか？」
「愛子様の信じたいことを信じてみてはいかがでしょう？」
「へ？」
フォスの脈絡のない言葉に愛子は頭に“？”を浮かべて首を傾げる。それに、「言葉足らずでした」と苦笑いしながらフォスが話を続ける。
「どうやら、愛子様の心は、今、大変な混乱の中にあるように見受けられます。考えるべき事も考えたくない事も多すぎて、何をどうすればいいのかわからない。何が最善か、自分がどうしたいのか、それもわからない。わからない事ばかりで、どうにかしなければと焦りばかりが募り、それがまた混乱に拍車をかける悪循環。違いますか？」
「ど、どうして……」
今の愛子の心の内をドンピシャリと言い当てられて、思わず言葉を詰まらせる愛子。そんな愛子に、フォスは「色々なお客様を見てきていますので」と穏やかに微笑む。
「そういう時は、取り敢えず“信じたいものを信じてみる”というのも手の一つかと。よく、人は信じたいものだけ信じて真実を見逃すと、そう警告的に言われることがあります。それは確かにその通りなのでしょう。しかし、人の行動は信じるところから始まると私などは思うのです。ならば、“動けない”時には逆に“信じたいものを信じる”というのも悪くない手だと、そう思うのです」
「……信じたいことを信じる」
フォスのその言葉を愛子は反芻する。愛子の心は、今、後悔と罪悪感と、芽生えそうなハジメへの疑心、恨みでぐるぐると渦巻いている。ハジメは確かに愛子の大切な生徒ではあったが、同じく大切な生徒である清水を殺害し、場合によっては他の生徒の命をも奪いかねない存在であると理解した瞬間、ハジメを自分の大切なものを奪おうとする脅威であると認識してしまったのだ。それでも、ハジメもまた生徒である以上、完全に切り捨てられない。大量虐殺をしようとした清水を見捨てられなかったように。だからこそ、どうすればいいのかわからず混乱する。難儀な性格であると、愛子自身も思うが、こればっかりは仕方ない。それが畑山愛子“先生”なのだから。
フォスは、愛子に何があったのかを知らない。彼女が、ある意味信じたいことを信じすぎたが為に今の状態にあるとは知らない。それでも、信じていたものが尽く崩れ去って身動きが取れなくなっている状態で盛大に失態を犯した今では、見え方も異なり有効かもしれなかった。
そう思った愛子は、食事の手を止めて思考に没頭し始める。
（信じたいものを信じる。私が信じたいこと……何でしょう？ 一つは、生徒達と皆で日本に帰る事です。でも、それはもう叶わない。今は、これ以上欠けることなく皆で帰れるという事を信じたい……彼の話。クラスメイトの誰かに殺されかけたという話。それは信じたくありません……彼が、邪魔すれば私達でも殺すと言った事、人殺しを躊躇わない人間に…生徒達を脅かす敵に……これも信じたくありません。でも、実際、彼はあの子を……清水君を躊躇わず殺した。なら、もう彼は……いえ、信じたいことを信じるのです）
再び、黒い感情が浮かびそうになるのを瞑目して押さえ込む愛子。周囲の者達は、微動だにせず何かを考え込む愛子を心配そうに見ている。
（彼は言っていました。“敵だから”と。それに“余裕がない”とも。清水君を生かした後、自分や周りの大切な人が再び襲われることを危惧したから殺した。それは、誰かを思ってのこと。実際、ただの冷酷な人間ならユエさんやシアさんがあんなに信頼を寄せるはずがありません。彼は、あの子達のためにも後顧の憂いを断ちたかった……だから生かしておけなかった。つまり、私が、清水君をどうにかできるとは思えなかったのですね……清水君を生かしたければ、改心させられると確信出来るくらいの何かを私が見せなければならなかった……結局は、私が無力なばかりに……清水君は……それでも、あんな風に殺すなんて……唯でさえ清水君は弱って……ッ）
清水を撃ち殺したハジメにも、そうするだけの明確な理由があった。だから、人殺しを何とも思わない壊れた人間などではなく、理解できない化け物でもなく、闇雲に生徒達を害する敵でもなく、未だ自分の言葉が届く“生徒”なのだと信じようとする愛子。そして、その思考過程で、生徒が生徒を撃ち殺すと
後日談二話目
愛子嫌いの方は読まない方がいいかもしれません
ただの愛子の心情です
ハジメ達が去って三日経ったウルの町。
荒れた大地の整備やおびただしい数の魔物の死体処理など頭の痛い問題は多々あるが、それでも町も人も無傷という、起きた事態に対してまさに奇跡としか言い様のない結果。その吉報は、直ちに避難した住民達や周辺の町、王都に伝えられた、戻ってきた住人達は、再会した家族や恋人、友人達と抱きしめ合い、互の無事を喜び合ってウルの町はさながらお祭りのような喧騒に包まれていた。
町の周囲にはハジメが残していった防壁がそのまま残っており、戦いの一部始終を見届けた者達は、いかに常識を超えた戦いだったのかを身振り手振りで、防壁から荒れた大地に視線をやりながら神話の語り部のごとく語って聞かせた。避難していた人達、特に子供達はそんな彼等の話に目をキラキラさせている。抜け目のない商人達は、既にハジメの防壁をウルの町の新たな名物として一儲けする算段を付けていた。
そして、町の人々は、ハジメと愛子の間にあったことを知らないので、未だにハジメ達のことを“豊穣の女神”が遣わした御使いだと信じており、ハジメの防壁に“女神の盾”と名づけて敬った。また、白髪眼帯の少年ハジメの事を“女神の剣”あるいは“女神の騎士”と呼び、同じく敬った。それを聞いたデビッド達本当の護衛騎士達が、ハジメと愛子の口付けを思い出しながら「やっぱり、アイツは気に入らない！！」と荒れ狂ったのは別の話。後に、自分の二つ名を聞いてハジメが身悶えるのも別の話だ。
若干、自分自身への恥ずかしい二つ名という誤算はあったものの、ハジメの思惑通り、愛子の名声と人望は鰻登りだった。町を歩けば、全ての人間の視線が集まっているのではというほどの集中砲火を受け、中には「ありがたや～」と拝み始める人までいる。この町で、確かに目に見える形で人々を救った愛子は、正しく“女神”だった。その噂は、既に周辺へと伝播を始めている。少なくとも、ウルの町では既に聖教教会の司教よりも愛子の言葉の方が重みを持っている事は間違いないだろう。
その愛子はというと……町の復興支援やら重鎮達への対応を無難にこなしつつ、それでも親しい人には丸分かりなくらい明からさまに心ここにあらずという有様だった。原因は、言わずもがなだろう。戦いの前にハジメから伝えられた数々の衝撃の事実のこともあるが何より、ハジメが清水を殺したことが、その瞬間の光景が、愛子の脳裏から離れず心を蝕んでいるのである。
その日も、一日の役目を終えて夕食時となり、“水妖精の宿”でいつのもの様に生徒達や護衛隊の騎士達と食事をとっていたのだが、愛子は機械的に料理を口に運びつつも、どこかボーとした様子で会話の内容にも気のない返事をするばかりだった。
「愛ちゃん先生……やっぱり、愛ちゃん先生の魔法は凄いですよね！ あんなに荒れてた大地もどんどん浄化されていって……あと一週間もあれば元に戻りそうですもんね！」
「……そうですね……よかったです」
園部優香が、愛子の心ここにあらずな様子に気がつきつつも、殊更明るい様子で話しかける。愛子の変調の原因を理解しているために何とか励ましたいのだ。しかし、園部の明るさを含んだ言葉にも、愛子はまるで定型文をそのまま言葉にしたような気のない返事し返さない。園部が、「まだ、だめか～」と肩を落とす。
「愛子……今日も町長や司教様から何か言われたのか？ 本当に困ったら俺に言ってくれ。例え、司教様が相手でも愛子を困らせるような真似は俺が許さない。俺が・・、愛子の騎士なんだからな。何時でも、俺だけは・・・・愛子の味方だ」
「……そうですね……よかったです」
デビッドが、励ましたいのか口説きたいのかよくわからない言葉を愛子に贈る。神殿騎士でありながら司教に楯突くという発言はかなり危ないのだが、既に愛の戦士と成り果てているデビッドには関係ないのだろう。やたらと“俺”という部分が強調されているのは、誰に対抗しているのか……周囲の騎士達も察しはついているのでデビッドに同意しつつも、さり気なく抜け駆けしようとしている自分達の隊長に鋭い牽制の視線を送っている。
しかし、そんなデビッドのさり気ないアピールは某お昼の長寿番組の相槌の如き同じ言葉であっさり流された。聞いていたかも怪しいところだ。生徒達が肩を落とすデビッドに「ざまぁ～」という表情をする。一部の騎士達も同じ表情をしている。
そんな生徒達や騎士達のやり取りにも気がついていないのか、愛子は特に反応することもなく淡々と食事を続けていた。
（……私が、もっときちんと清水君とお話が出来ていれば……あの子の思いにもっと早く気がついていれば……そうすればこんな事にはならなかった……それに、彼に、同じ生徒である彼に、あんな事を頼まなければ……あの時、人質になんかならなければ……私が……死んでいれば……彼も清水君を殺す必要なんて……どうして、殺したの……同じクラスメイトなのに……敵だから？ ……それだけであんなにあっさり？ ……人を殺すってそんなに簡単なことなの？ ……そんな簡単に出来てしまうことなの？ ……そんなのおかしい……人は魔物ではないのに……あんな躊躇わずに……彼は……簡単に人を殺せる人間？ ……放っておけば他の子達も……彼は危険？ ……彼がいなければ清水君も死ななかった？……彼がいなくなれば他の子達は安全？ ……彼さえいなければ……ッ！？ 私は何を！ ……ダメ、これ以上考えてはダメ！）
今の愛子の心の内は、後悔と自責を延々と繰り返している状態だった……そして下手をすればハジメへの恐れと恨みが芽生えそうで、それを慌てて打ち消し、再び最初の思考に戻るということを繰り返していた。考えることが多すぎて、考えたくないことも多すぎて、愛子の心は、まるで本棚が倒壊した図書館の様に整理されていない情報が散乱しグチャグチャの状態だった。
そんな時、スっと心に響くような穏やかで温かみのある声音が愛子に届く。
「愛子様。本日の料理は、お口に合いませんでしたか？」
「ふぇ？」
“水妖精の宿”オーナーのフォス・セルオだ。彼の声は決して大きくはないどころか、むしろ小さいくらいだ。だが、この宿にいる者でフォスの言葉を聞き逃すものはいない。彼の深みがあって落ち着いた声音は、必ず相手に届くのだ。今も、心を思考の渦に囚われていた愛子へあっさり言葉を届け、その意識を現実へと回帰させた。
変な声を出してしまった事に気がつき、愛子は少し頬を染めつつ穏やかに微笑むフォスに視線を向ける。
「え、えっと何でしょう？ すいません、ちょっとボーとしてました」
「いえいえ、お気になさらず。何やら浮かないお顔でしたので、料理がお口に合わなかったのかと。宜しければ他をお出ししますが……」
「い、いえ！ お料理は、とっても美味しいですよ。ちょっと考え事をしていたもので……」
とても美味しいと言いながら、食べた料理の味が思い出せない愛子。周囲を見渡せば、生徒達や騎士達も、どこか心配そうな眼差しを自分に向けている。自分が相当、思考の坩堝にはまっていることに気がつき、これではいけないと気を取り直し、食事を再開するが、少し慌てていたため気管に入り盛大にむせた。
涙目でケホッケホッとむせる愛子に、生徒達や騎士達があわあわとする。そんな様子を視界に収めつつ、さり気なくナプキンと水を用意するフォス。
「す、すみません。ご迷惑を……」
「迷惑など、とんでもない」
愛子の失態を見ても穏やかな微笑みを崩さないフォスに、安心感を抱きつつも恐縮する愛子。そんな愛子に、フォスは目を細めると少し考える素振りを見せて、やはり静かな落ち着いた声音で語りかけた。
「ふむ。愛子様。僭越ながら一つ宜しいでしょうか？」
「え？ ええ、はい。なんでしょうか？」
「愛子様の信じたいことを信じてみてはいかがでしょう？」
「へ？」
フォスの脈絡のない言葉に愛子は頭に“？”を浮かべて首を傾げる。それに、「言葉足らずでした」と苦笑いしながらフォスが話を続ける。
「どうやら、愛子様の心は、今、大変な混乱の中にあるように見受けられます。考えるべき事も考えたくない事も多すぎて、何をどうすればいいのかわからない。何が最善か、自分がどうしたいのか、それもわからない。わからない事ばかりで、どうにかしなければと焦りばかりが募り、それがまた混乱に拍車をかける悪循環。違いますか？」
「ど、どうして……」
今の愛子の心の内をドンピシャリと言い当てられて、思わず言葉を詰まらせる愛子。そんな愛子に、フォスは「色々なお客様を見てきていますので」と穏やかに微笑む。
「そういう時は、取り敢えず“信じたいものを信じてみる”というのも手の一つかと。よく、人は信じたいものだけ信じて真実を見逃すと、そう警告的に言われることがあります。それは確かにその通りなのでしょう。しかし、人の行動は信じるところから始まると私などは思うのです。ならば、“動けない”時には逆に“信じたいものを信じる”というのも悪くない手だと、そう思うのです」
「……信じたいことを信じる」
フォスのその言葉を愛子は反芻する。愛子の心は、今、後悔と罪悪感と、芽生えそうなハジメへの疑心、恨みでぐるぐると渦巻いている。ハジメは確かに愛子の大切な生徒ではあったが、同じく大切な生徒である清水を殺害し、場合によっては他の生徒の命をも奪いかねない存在であると理解した瞬間、ハジメを自分の大切なものを奪おうとする脅威であると認識してしまったのだ。それでも、ハジメもまた生徒である以上、完全に切り捨てられない。大量虐殺をしようとした清水を見捨てられなかったように。だからこそ、どうすればいいのかわからず混乱する。難儀な性格であると、愛子自身も思うが、こればっかりは仕方ない。それが畑山愛子“先生”なのだから。
フォスは、愛子に何があったのかを知らない。彼女が、ある意味信じたいことを信じすぎたが為に今の状態にあるとは知らない。それでも、信じていたものが尽く崩れ去って身動きが取れなくなっている状態で盛大に失態を犯した今では、見え方も異なり有効かもしれなかった。
そう思った愛子は、食事の手を止めて思考に没頭し始める。
（信じたいものを信じる。私が信じたいこと……何でしょう？ 一つは、生徒達と皆で日本に帰る事です。でも、それはもう叶わない。今は、これ以上欠けることなく皆で帰れるという事を信じたい……彼の話。クラスメイトの誰かに殺されかけたという話。それは信じたくありません……彼が、邪魔すれば私達でも殺すと言った事、人殺しを躊躇わない人間に…生徒達を脅かす敵に……これも信じたくありません。でも、実際、彼はあの子を……清水君を躊躇わず殺した。なら、もう彼は……いえ、信じたいことを信じるのです）
再び、黒い感情が浮かびそうになるのを瞑目して押さえ込む愛子。周囲の者達は、微動だにせず何かを考え込む愛子を心配そうに見ている。
（彼は言っていました。“敵だから”と。それに“余裕がない”とも。清水君を生かした後、自分や周りの大切な人が再び襲われることを危惧したから殺した。それは、誰かを思ってのこと。実際、ただの冷酷な人間ならユエさんやシアさんがあんなに信頼を寄せるはずがありません。彼は、あの子達のためにも後顧の憂いを断ちたかった……だから生かしておけなかった。つまり、私が、清水君をどうにかできるとは思えなかったのですね……清水君を生かしたければ、改心させられると確信出来るくらいの何かを私が見せなければならなかった……結局は、私が無力なばかりに……清水君は……それでも、あんな風に殺すなんて……唯でさえ清水君は弱って……ッ）
清水を撃ち殺したハジメにも、そうするだけの明確な理由があった。だから、人殺しを何とも思わない壊れた人間などではなく、理解できない化け物でもなく、闇雲に生徒達を害する敵でもなく、未だ自分の言葉が届く“生徒”なのだと信じようとする愛子。そして、その思考過程で、生徒が生徒を撃ち殺すと
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Aiko sequel Madness at the two eyes to read more of Aiko may hate you. But the feelings of stress that Hajime leave after three days of ur. Development of sports ground and body treatments such as numerous demon head hurts, but there are many problems in the town and intact, who happened to have no way with just a miracle. The good news, the town residents to evacuate immediately, and is transmitted to the capital, people returned to the family reunion, and loverWith friends like to embrace the joy of safe ur like like like the festival in the hubbub. Around the town remained intact and Hajime bulwark is left, the whole story of the battle, see how the battle was beyond common sense of gestures, eye ground to do it from the wall, talked as part of the myth. Evacuation to people, especially children so they talk with sparkling eyes.The shrewd merchant, the new town of ur Hajime barriers to manage a profit as its specialty. Well, the people of the town, Hajime and Aiko was known as the "still believe that our Hajime goddess of fertility" is sent as a messenger, who was named after the goddess shield "and" Hajime barrier. In addition, it is a gray patch boy called Hajime goddess sword "or" goddess of the knight, "respect.It is true we heard that David guard, "and I remember Hajime Aiko kiss, I don't like him!" With the raging of another story. Later, his name has two different Hajime writhe heard of the story. Some mistake, to oneself one embarrassing name was Hajime, speculation and soaring popularity of fame. If you walk a barrage of town, so that there are all human sight,At the start, and it is up to the old man. In this town, I saved the visible people Aiko was right "goddess". The rumor has already begun to spread to the periphery. At least, in the town of orthodoxy church bishop already more than that of the word of weight has no doubt. Aiko and its... And... To do the corresponding reconstruction of authority to handle theIt is also good to know in the round as from being distracted and conditions. Cause I will. Before the battle, Hajime is transmitted from the impact of the fact that there's something more, that killed Hajime Shimizu, the sight of that moment, it undermines a heart but away from the minds of Aiko. Well, the day after day, and was at dinner, "water fairy inn", but to guard our students and when things like diet, and KnightsAiko to carry both the mechanical cooking made only to the contents of the conversation is not the answer, and Bo.
「 AI teacher... After all, love is a great teacher of magic! As more and more... So purify rough the earth... If there is one more week is back, you know! "
「…… Yes... The 」
Yuka is good, but here is the heart of a notice in the bright state while talking.I want to make up for the understanding of the causes of modulation. However, the brightness of the word is included in the returned lukewarm response Aiko fixed sentence is just words. SONOBE, still, or to drop with a shoulder. Aiko
「... Today I say anything from the mayor and the bishop? If you are really in trouble, tell me. For example, such as the bishop to embarrass opponents do not allow Aiko. I, Aiko knight after all. At any time,I just... 」
「…… Aiko side Yes... David was good, but 」
Aiko to words of encouragement to coax you don't know well. In order to remark that defy bishop temple and dangerous, but I already love consists of David is not related to the end. Of "the emphasized part I", and the someone... Against... Around us while knight can agree on, DavidSharp eyes are sent to check their captain trying to run so casually. But that does not appeal, David, in which the same words as lunch longevity program chime in easily. They heard a weird. "I look to be with David students off the shoulders. The expression of the same part of the Knights. Well if no notice to such students and exchange of the knightNo reaction to the drawing board, Aiko continued.
（…… I tell you more properly, Shimizu, and if you could... If you think... I feel about it earlier... So, if such a thing was... He and his students are the same, we must ask such a thing... At that time, I have... Hostage... I... If... If the dead... I must kill him... Shimizu to you... Why doKill... With... It is the same class mate... Enemies?... It is just so simple? It's so easy to kill people?... It can be so easily? So funny... But... No one demon... So without hesitation... He... Easy to kill people? If the other children all alone... He is a dangerous?... He didn't have to Shimizu you die?... He is safe, if not the other children?... Even if his... Must... !? What I am!... More than this, it is no good!) In the heart of the state, now... Regret and remorse are endlessly repeated... And going to Hajime to poor resentment, fear began to rush it, repeat it again to return to the original thinking. Think too much, I do not want to think too much, the heart, AikoIt was as if the scattering state information when the bookshelf is not destroyed in the library. Well then, that sound in mind and that voice was calm and warm reach Aiko.
「 Aiko. Today, didn't fit into your mouth? "
「 it? " "Water fairy too inn owner" FOSS, Luo. His voice is not larger than the rather small. However, this inn has none of the words to miss.His deep voice was calm, be sure to reach the destination. Now, to deliver simple words to heart trapped vortex of thinking, consciousness to Aiko to regress to the reality. He notices a queer voice, Aiko to glance at the FOSS gentle little cheeks while smiling. What is the
「, eh? Excuse me, a little boy and no 」
「, he does not care. As long as you face all that, and I did not agree with your cooking.But... If you want to "serve other No,
「! The dish is very delicious. Just thinking about... " Saying so, I can cook delicious taste Aiko. If you look around the students, knights, and some are worried for their eyes. Equivalent, notice that in the crucible, and have taken heart from the meal, resume
「 AI teacher... After all, love is a great teacher of magic! As more and more... So purify rough the earth... If there is one more week is back, you know! "
「…… Yes... The 」
Yuka is good, but here is the heart of a notice in the bright state while talking.I want to make up for the understanding of the causes of modulation. However, the brightness of the word is included in the returned lukewarm response Aiko fixed sentence is just words. SONOBE, still, or to drop with a shoulder. Aiko
「... Today I say anything from the mayor and the bishop? If you are really in trouble, tell me. For example, such as the bishop to embarrass opponents do not allow Aiko. I, Aiko knight after all. At any time,I just... 」
「…… Aiko side Yes... David was good, but 」
Aiko to words of encouragement to coax you don't know well. In order to remark that defy bishop temple and dangerous, but I already love consists of David is not related to the end. Of "the emphasized part I", and the someone... Against... Around us while knight can agree on, DavidSharp eyes are sent to check their captain trying to run so casually. But that does not appeal, David, in which the same words as lunch longevity program chime in easily. They heard a weird. "I look to be with David students off the shoulders. The expression of the same part of the Knights. Well if no notice to such students and exchange of the knightNo reaction to the drawing board, Aiko continued.
（…… I tell you more properly, Shimizu, and if you could... If you think... I feel about it earlier... So, if such a thing was... He and his students are the same, we must ask such a thing... At that time, I have... Hostage... I... If... If the dead... I must kill him... Shimizu to you... Why doKill... With... It is the same class mate... Enemies?... It is just so simple? It's so easy to kill people?... It can be so easily? So funny... But... No one demon... So without hesitation... He... Easy to kill people? If the other children all alone... He is a dangerous?... He didn't have to Shimizu you die?... He is safe, if not the other children?... Even if his... Must... !? What I am!... More than this, it is no good!) In the heart of the state, now... Regret and remorse are endlessly repeated... And going to Hajime to poor resentment, fear began to rush it, repeat it again to return to the original thinking. Think too much, I do not want to think too much, the heart, AikoIt was as if the scattering state information when the bookshelf is not destroyed in the library. Well then, that sound in mind and that voice was calm and warm reach Aiko.
「 Aiko. Today, didn't fit into your mouth? "
「 it? " "Water fairy too inn owner" FOSS, Luo. His voice is not larger than the rather small. However, this inn has none of the words to miss.His deep voice was calm, be sure to reach the destination. Now, to deliver simple words to heart trapped vortex of thinking, consciousness to Aiko to regress to the reality. He notices a queer voice, Aiko to glance at the FOSS gentle little cheeks while smiling. What is the
「, eh? Excuse me, a little boy and no 」
「, he does not care. As long as you face all that, and I did not agree with your cooking.But... If you want to "serve other No,
「! The dish is very delicious. Just thinking about... " Saying so, I can cook delicious taste Aiko. If you look around the students, knights, and some are worried for their eyes. Equivalent, notice that in the crucible, and have taken heart from the meal, resume
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- is the computational domain
- เมื่อคุณทำเสร็จ
- ชอบสังเกตและสร้างสรรค์สิ่งใหม่
- It aims to reduce the variability in the
- As b once said
- It aims to reduce the variability in the
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