コストリーダーシップ戦略は、コスト競争力を徹底的に磨いて、コスト面で競争相手に対して優位に立つことを目指す。キーエンスの経営はこの戦略に該当しない。理由は明白。同社の製品の価格は決して安くはないからだ。
主力のセンサーをはじめ、同社の製品はいずれも、業種や事業規模の大小を問わず、あらゆる生産ラインで使える汎用品である。顧客の9割以上は中小企業で、特定の顧客に依存していない。
これらの点からキーエンスは、特定の商品やサービス、特定の顧客層、特定の地域など限定された領域に経営資源を集中する集中戦略も採用していない。
残る差異化戦略は、競争相手のものとは異なる独自の商品やサービスによって顧客に付加価値を提供し、相手に対して優位に立とうとするものだ。
一見、キーエンスの競争優位は、この戦略に立脚しているように見える。売り上げの30%を2年未満の新製品が占め、その新製品の大半が「世界初、または業界初」のものだからだ。