ALL the world's a stage   プロローグ     「護衛、ですか」  その男は、場の雰囲気をそこにいるだけで変質させて การแปล - ALL the world's a stage   プロローグ     「護衛、ですか」  その男は、場の雰囲気をそこにいるだけで変質させて ไทย วิธีการพูด

ALL the world's a stage プロローグ


ALL the world's a stage

プロローグ


「護衛、ですか」
その男は、場の雰囲気をそこにいるだけで変質させてしまう威圧感を持っていた。
優雅なようだが全く油断ならない。虚空情報統制機構に二つしかない大佐の椅子の片方に座る男だ。一つが武力と権力の金の椅子なら、こちらは叡智と支配の金剛石の椅子。どちらにしろ、座っている人間がまともなわけがない。この上位にさらに紫紺の椅子があるらしいが諜報部をまとめる大尉たる自分さえ、まともな情報が掴めていない領域だ。とてもではないが、前任者のようにそこに手を出して消されるような真似はしたくないハザマは、大人しく自分の椅子相応の態度で眼前の男に傅いた。
「そうだ」
貴族のようである、と称する者が多い容姿は、確かに統制機構においても浮いていた。
十二宗家の流れを汲む人間で支配された佐官の椅子に堂々とこの格好で座っている根性は、まぁなんというか見た目通り優雅と言うか図太かった。ちなみに私服だ。
レリウス=クローバー技術大佐は、自分の執務室に諜報部のハザマ大尉を招き入れ、話を切り出した。
大佐ともなれば佐官の副官が付くものだが、恐ろしいことにこの技術大佐はスケジュール管理や事務処理まで一人でこなしており、仕事が遅くて邪魔だという理由で就任以後どんな人間も隣に立たせたことがない。よって呼び出しも直に掛かって来た内線電話だった。
全く心当たりの無い呼び出しに心臓をバクバクさせながら、それを表には出さずハザマは執務室のドアをくぐった。
「お前にはある人間を護衛してもらう」
何度か会ったことがあるレリウス=クローバーの目線は、前回と同じくどこを見ているのか全く分からない。仮面の下の表情を見たものは、一人もいない。
どういうわけか証明写真にもこの仮面付きで写っている有り様だ。よく公式書類が通ったものだと、見るたびに思っていた書類の当人に呼び出されるようになったのは、ここ数ヶ月の事だった。
「ええと、何で呼び出されてわざわざ口頭で任務を伝えられたかお聞きしてもよろしいでしょうか?」
部下たちから口をそろえて面の皮がナイフが刺さらないほど厚いと称されるハザマだったが、さすがに今日ばかりは引きつっていた。
どちらかと言えば小心者だと口にしても、誰にも信じてもらえない悲しみを分かち合える相手はいない。
そんなドキドキの心中など一切察してくれそうにない男は、冷静に返事をした。
「極秘任務だからだ」
「ですよねー」
そもそも、事務官が主構成の諜報部に護衛の任務が回ってくることなど、ない。それこそ、おおやけにできない何かが一枚噛んでいない限りは。統制機構で実質最高権力者である大佐から、諜報部に下る任務。
絶対ろくでもないに違いない。
「まだ任期は浅いが、お前なら役目を果たせるだろう」
そして、どういうわけか、この技術大佐はその手の任務を片っ端からハザマに振ってくるのだ。
どこでどう聞いたのか、何を見込まれたのかさっぱり記憶にないが、前任者の不祥事で大抜擢された新人大尉にあれこれと任せようとする。この男が何を考えているのか、ハザマには欠片も理解できなかった。
「了解いたしました、どこへなりとも要人をお運びいたしましょう。と言っても、どうせ、イカルガ連邦でしょうけど」
「耳が早いな」
理解はできなくとも、周囲を探っていれば自ずと動きは分かる。この男に限ってそれに気づいていないはずはないのだが。自分の動きをつかませることで、こちらがスケジュールを合わせやすいようにしているのだろうと感づいたのはいつだったか。
「この動乱の最中に何をなさるおつもりですか、と聞いちゃってもいいですか?」
正直聞きたくはないが、聞いておかないと後々面倒な事に巻き込まれる可能性がある。ハザマだけではなく、ハザマのいる諜報部自体が。今やイカルガ連邦は戦禍の只中だ。
統制機構内にもイカルガ出身者は少なからずいる。そう言った人間の反乱を察知し、審判の羽根にチクるのも諜報部の仕事だ。イカルガに関わっていない今でも風当たりが強い部署に、余計な火種は持ち込みたくない。
「ただの治験だ」
「……わざわざイカルガで、ですか?」
「そうだ、戦禍はいい隠れ蓑になる」
聞かなければよかった。
「耳を塞いでももう遅いぞハザマ」
形だけでも両手で耳を押さえたハザマをレリウスは笑いもしない。
緑の髪の間からちらりと見た技術大佐の顔は、真顔だった。
「ああ、またこうして図書館の黒い噂が増えるわけですね、事実根拠のある真っ黒な噂が」
「そういう事だ」
ふふと声でだけ笑う男にハザマはため息を吐いた。
どうも気安い。階級に歴然たる差があるにも関わらず、レリウス大佐は大尉であるハザマの暴言を咎めもしない。ハザマもどうしてか、他人にするように硬く冷たい態度を取りきれない。取り繕えず笑いの仮面が剥げ落ちてしまう。
気が合うとでも言うのだろうか。そうでなければそう何度も会話したこともない部署違いの上官相手にここまで素を出せる理由が分からない。
「お前には期待している」
「ええ何度も聞きましたよその台詞。頑張らせていただきますよ、精一杯」
まるで旧知の仲であるように、レリウスは威圧的な雰囲気を緩める。ハザマは雰囲気に耐えられなかった。その態度に嫌悪を感じられない自分に、と言った方が正しい。
帽子を直す仕草で、ハザマは会話の終わりを告げた。
「失礼いたしました」
踵を返し、しっかり会釈をして、音もなくハザマは立ち去る。諜報部として叩きこまれた所作以上に、生まれ持った資質がハザマの足運びから音を消した。
レリウスはどこを見ているのか分かりにくい表情で、ハザマを見送った。
まだ早朝のアキツの陽射しは水平に近い角度で、部屋から出て行くハザマの黒い背を白く染めていた。その色もすぐにドアの向こうに消える。
その最後の姿を、レリウスはそっと眼に刻んだ。
「……生きて帰ってきて欲しいものだ、良い出来栄えだからな」
「そんなことだろうと思いましたよ」
ドアを向いているレリウスには見えない場所で、はぁとため息が聞こえた。よく響く声だ。
聞き間違いようもなく、先ほど聞こえたのと寸分たがわぬ若い男の、ハザマの声だった。
「ハザマ、帰ったか」
「はい、ただいま帰還しましたよ、レリウス」
そう言って、先ほどハザマがいた場所からは死角になった本棚の群れの奥から、黒い影が進み出た。
見た目も服装も髪も声も、何よりその仕草の癖の一つをとっても、何一つ先ほどのハザマと変わりのないハザマが、そこにはいた。
日を背にした顔には影がかかっているが、浮かべている笑みは柔らかで親しみがある。緊張感など欠片もない、レリウスの知るハザマだった。
「何とか十二宗家は『黙らせて』おきましたよ。相変わらずムツキ家は煩かったですがねぇ」
「ご苦労だったな」
肩をすくめて任務報告をするハザマ、先ほどの新人のハザマとは別個体である古株のハザマに、レリウスは労いをかける。
「ええ、ですからちょっと休憩にお茶しませんか?」
くいっとティーカップを持ち上げる動きで微笑む。
「いいだろう」
「それじゃぁ勝手にお茶うけいただいちゃいますね」
佐官室に備え付けられた給仕部屋にハザマが歩いて行く。その後姿に何度目か分からないデジャヴュをレリウスは感じていた。
これが何回目で、何度目で、何人目であるかなど、レリウスにはもう用をなさない数字の羅列だ。ただその数と同じだけかそれ以上に、レリウスはハザマを作った。感傷の入る余地など数の前には無意味だった。
ハザマの淹れる紅茶の爽やかな柑橘系の香りがしだす頃には、レリウスの脳内は既に次の実験の計画へと移り変わっていた。
送り出したハザマの背中に抱いた何かは、もう他の事象に重なって色あせた過去へと成り果てていた。



予定された邂逅


道無き道をゆくなどということはない。
護衛と聞き想定していた事態とは天と地ほどに差がある穏やかな旅路だ。何より護衛対象が伴わない、ただ慌しいだけの魔操船の中でハザマはぼんやりと資料を眺めるくらいしかすることがなかった。
現状、統制機構と真っ向から対立しているイカルガ連邦。中でも攻勢が激しいイブキドへの移動は限られた安全なルート以外は軒並み閉ざされていた。おかげでただでさえ狭い船体は芋洗い状態。高い階級を持つハザマでも贅沢を言っていられる状態ではなかった。
既に護衛対象がイブキド入りしていなければ、この騒がしい中で神経を尖らせていなければいけなかったのかと、今更ながらにハザマはほっと胸をなでおろした。
乗っているのは衛士ばかり、それも士官学校から上がりたての殻付きの雛鳥が大半だ。こんなものを大量投入した所で統率が取れるとは思えないが、それだけ現場は人手不足と言う事なのだろう。
修学旅行のノリで騒いでいる若い一団がハザマの側にもいた。
止める立場の上官が席を外しているせいか、落ち着く様子は全くなかった。
戦いに行くのだという緊張感がない。
それはハザマも同じだったが、一括りにされるのはいささか腹立たしかった。周囲から見れば、私服で魔操船に乗り込んでいるハザマも、制服で騒いでいる一団も、どちらも戦場に相応しくないのだろうが。
戦ったことなど片手で数えるほどしかない。危ない橋を渡ることもあるが、諜報部は事務官が大半、ハザマも半武半官の例にもれない。
護衛としては不向き極まりないだろう自分がなぜ、選ばれたのか。その真相を探ろうと、煩さに耳を塞ぐついでにハザマは資料に目を走らせる。
「情報なし、情報なし、情報なし……」
紙っぺらの数枚で、いったい何度その単語を目にしたか。
浮かび上がってくるのは情報がないという情報。その空白が、護衛対象の異常性をハザマに鮮明に伝える記号だった。
男であること。要人であること。大佐クラスの待遇が必要だが軍人ではないこと。虚弱体質で体力に難あり。戦闘能力は皆無。負傷等の緊急事態であってもイカルガからの撤退は不可能な立場であること。
さらに当座の連絡先はレリウス=クローバー。
「うっさん臭いですねぇ」
ため息だって出る。名前にしたって胡散臭い。
今どき、こんな名前を名乗る人間はいない。偽名にしてももう少し選べたのではないかと、ハザマは帽子越しに頭を掻いた。この名付けが本人の趣味であったら、恐らく仲良くはなれないだろう。
さらりとした印字の上を滑っていた手が止まる。
複数枚の資料の間に隠されるように挟まれた写真。冒頭についていておかしくない数枚のそれは、本来この資料には添付されていないはずのものだ。レリウス=クローバーが挟んだのだろうか。
綴じられていない印画紙をハザマの細い指がつまみ上げた。白く縁取られた紙の中の被写体は、若干ぶれて写っている。公式書類の証明写真ではない。かといって、賞金首の資料のような盗み撮りでもない。
「先が思いやられますよ、まったく」
護衛対象は写真の中で、慌てた風に手を正面に伸ばしていた。その次に、カメラを奪おうとして避けられたのか、横顔を写されている。最後に逃げられて何度か全身を様々な角度で。
確かに角度としては正面・横顔・背面・全身と必要な写像は揃っている。
だが、どう考えてもプライベートな写真だ。
こんなものを躊躇いなく資料としてよこす技術大佐の神経を疑う。嫌な、当たって欲しくない予想としては、今回の護衛の件のためだけにこの写真が撮られた可能性があるということだ。逃げ回るカメラマンを追い回す写真にわずかにレリウス=クローバーの姿が写り込んでいる。
「……心中お察ししますよ」
写真に対して哀れみさえ浮かべて,ハザマは改めて写っている男を見た。
時代錯誤なフードも、病弱さを感じさせる肌に巻かれた包帯も、周囲に振り回されて怒鳴り散らしているであろう姿の前では些細な装飾にしか映らない。
「ほんの少し、貴方のことは好きになれそうですよ」
あの人とは
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「……生きて帰ってきて欲しいものだ、良い出来栄えだからな」
「そんなことだろうと思いましたよ」
ドアを向いているレリウスには見えない場所で、はぁとため息が聞こえた。よく響く声だ。
聞き間違いようもなく、先ほど聞こえたのと寸分たがわぬ若い男の、ハザマの声だった。
「ハザマ、帰ったか」
「はい、ただいま帰還しましたよ、レリウス」
そう言って、先ほどハザマがいた場所からは死角になった本棚の群れの奥から、黒い影が進み出た。
見た目も服装も髪も声も、何よりその仕草の癖の一つをとっても、何一つ先ほどのハザマと変わりのないハザマが、そこにはいた。
日を背にした顔には影がかかっているが、浮かべている笑みは柔らかで親しみがある。緊張感など欠片もない、レリウスの知るハザマだった。
「何とか十二宗家は『黙らせて』おきましたよ。相変わらずムツキ家は煩かったですがねぇ」
「ご苦労だったな」
肩をすくめて任務報告をするハザマ、先ほどの新人のハザマとは別個体である古株のハザマに、レリウスは労いをかける。
「ええ、ですからちょっと休憩にお茶しませんか?」
くいっとティーカップを持ち上げる動きで微笑む。
「いいだろう」
「それじゃぁ勝手にお茶うけいただいちゃいますね」
佐官室に備え付けられた給仕部屋にハザマが歩いて行く。その後姿に何度目か分からないデジャヴュをレリウスは感じていた。
これが何回目で、何度目で、何人目であるかなど、レリウスにはもう用をなさない数字の羅列だ。ただその数と同じだけかそれ以上に、レリウスはハザマを作った。感傷の入る余地など数の前には無意味だった。
ハザマの淹れる紅茶の爽やかな柑橘系の香りがしだす頃には、レリウスの脳内は既に次の実験の計画へと移り変わっていた。
送り出したハザマの背中に抱いた何かは、もう他の事象に重なって色あせた過去へと成り果てていた。



予定された邂逅


道無き道をゆくなどということはない。
護衛と聞き想定していた事態とは天と地ほどに差がある穏やかな旅路だ。何より護衛対象が伴わない、ただ慌しいだけの魔操船の中でハザマはぼんやりと資料を眺めるくらいしかすることがなかった。
現状、統制機構と真っ向から対立しているイカルガ連邦。中でも攻勢が激しいイブキドへの移動は限られた安全なルート以外は軒並み閉ざされていた。おかげでただでさえ狭い船体は芋洗い状態。高い階級を持つハザマでも贅沢を言っていられる状態ではなかった。
既に護衛対象がイブキド入りしていなければ、この騒がしい中で神経を尖らせていなければいけなかったのかと、今更ながらにハザマはほっと胸をなでおろした。
乗っているのは衛士ばかり、それも士官学校から上がりたての殻付きの雛鳥が大半だ。こんなものを大量投入した所で統率が取れるとは思えないが、それだけ現場は人手不足と言う事なのだろう。
修学旅行のノリで騒いでいる若い一団がハザマの側にもいた。
止める立場の上官が席を外しているせいか、落ち着く様子は全くなかった。
戦いに行くのだという緊張感がない。
それはハザマも同じだったが、一括りにされるのはいささか腹立たしかった。周囲から見れば、私服で魔操船に乗り込んでいるハザマも、制服で騒いでいる一団も、どちらも戦場に相応しくないのだろうが。
戦ったことなど片手で数えるほどしかない。危ない橋を渡ることもあるが、諜報部は事務官が大半、ハザマも半武半官の例にもれない。
護衛としては不向き極まりないだろう自分がなぜ、選ばれたのか。その真相を探ろうと、煩さに耳を塞ぐついでにハザマは資料に目を走らせる。
「情報なし、情報なし、情報なし……」
紙っぺらの数枚で、いったい何度その単語を目にしたか。
浮かび上がってくるのは情報がないという情報。その空白が、護衛対象の異常性をハザマに鮮明に伝える記号だった。
男であること。要人であること。大佐クラスの待遇が必要だが軍人ではないこと。虚弱体質で体力に難あり。戦闘能力は皆無。負傷等の緊急事態であってもイカルガからの撤退は不可能な立場であること。
さらに当座の連絡先はレリウス=クローバー。
「うっさん臭いですねぇ」
ため息だって出る。名前にしたって胡散臭い。
今どき、こんな名前を名乗る人間はいない。偽名にしてももう少し選べたのではないかと、ハザマは帽子越しに頭を掻いた。この名付けが本人の趣味であったら、恐らく仲良くはなれないだろう。
さらりとした印字の上を滑っていた手が止まる。
複数枚の資料の間に隠されるように挟まれた写真。冒頭についていておかしくない数枚のそれは、本来この資料には添付されていないはずのものだ。レリウス=クローバーが挟んだのだろうか。
綴じられていない印画紙をハザマの細い指がつまみ上げた。白く縁取られた紙の中の被写体は、若干ぶれて写っている。公式書類の証明写真ではない。かといって、賞金首の資料のような盗み撮りでもない。
「先が思いやられますよ、まったく」
護衛対象は写真の中で、慌てた風に手を正面に伸ばしていた。その次に、カメラを奪おうとして避けられたのか、横顔を写されている。最後に逃げられて何度か全身を様々な角度で。
確かに角度としては正面・横顔・背面・全身と必要な写像は揃っている。
だが、どう考えてもプライベートな写真だ。
こんなものを躊躇いなく資料としてよこす技術大佐の神経を疑う。嫌な、当たって欲しくない予想としては、今回の護衛の件のためだけにこの写真が撮られた可能性があるということだ。逃げ回るカメラマンを追い回す写真にわずかにレリウス=クローバーの姿が写り込んでいる。
「……心中お察ししますよ」
写真に対して哀れみさえ浮かべて,ハザマは改めて写っている男を見た。
時代錯誤なフードも、病弱さを感じさせる肌に巻かれた包帯も、周囲に振り回されて怒鳴り散らしているであろう姿の前では些細な装飾にしか映らない。
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" นำทางท่านไปนั้นคืออะไร ? ' ชายคนหนึ่งที่มีบรรยากาศที่เพิ่งจะไม่มีที่จะประสบความสำเร็จในการทำงานที่เป็นการข่มขู่ความรู้สึกได้
แต่ไม่เจ้าเล่ห์ที่สง่างามทั้งหมด ที่ไม่มีช่องว่างในการควบคุมข้อมูลที่ไม่เพียงสองของกลไกการพันเอก Guy นั่งอยู่บนฝั่งด้านหนึ่งของเก้าอี้ หนึ่งในการทหารและการใช้กำลังไฟของเงิน , เก้าอี้ที่นี่คือพระปัญญาและที่มีอำนาจปกครองของเก้าอี้ของ Black Diamond ไม่ว่าจะด้วยวิธีใดที่นั่งอยู่ไม่ได้เป็นอย่างดีทั้งที่มีชีวิตความเป็นอยู่ของมนุษย์ที่ด้านบนของเก้าอี้ใน 1116 ; ดูเหมือนว่าสำหรับผมว่าบางส่วนของความชาญฉลาดในการนำมารวมกันเป็นกัปตันของพวกเขาเองหรือแม้แต่ข้อมูลที่เหมาะสมในพื้นที่ที่ยังไม่ได้รับการสามารถทำได้ ดังนั้นจึงไม่มีการทำก่อนที่จะถูกลบออกจากมือของเขาและไม่ต้องการให้มีการทำงานที่เงียบและความคิดต่างๆที่มีเก้าอี้ของเขาในทัศนคติของความกระตือรือร้นที่จะต้องนำไปเสิร์ฟให้กับชายคนนั้นได้
1
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2 Â " ของชนชั้นสูงและยังมีอีกหลายคนที่อาจได้รับการเรียกว่าลักษณะของพวกเขาแต่นอกจากนั้นยังอยู่ในระบบกลไกการควบคุมการลอยตัว
12 ในมนุษย์การเต้นรำของฟอร์มที่แสดงละครเรื่องเก่าๆของรัฐบาลที่ครอบงำก็คล้ายกับของผู้เชี่ยวชาญในการใช้เก้าอี้และที่นั่งอยู่ที่ที่ทันสมัยแห่งนี้คือที่พักแบบ Twisted pair บุคลิกลักษณะ , ดังนั้นคุณจึงมีลักษณะสง่างามตามที่คุณบอกว่ารูปที่ไขมัน ผมคิดว่ามันเป็นเสื้อผ้า
LIU = พันเอกโคลเวอร์เทคโนโลยีใน Oval Office ความอัจฉริยะของชนชั้นแรงงานของตนของกัปตันที่ได้รับเชิญเข้าร่วมสนทนาพูดคุยได้ นายเรือโทฮอลล์เยอร์พันเอกเป็นพันเอก
หากมีผู้ช่วยดูแลว่า " แต่พร้อมด้วยเทคโนโลยีที่เป็นสิ่งที่น่าหวาดกลัวพันเอกจนกว่าการจัดการตารางเวลาและกระบวนการทางธุรกิจและผู้คนที่ทำงานได้
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