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#25: まず最初に作るのは 幻晶騎士シルエットナイトを運用するライヒ
#25: まず最初に作るのは
幻晶騎士シルエットナイトを運用するライヒアラ騎操士学園・騎操士学科には当然ながら、幻晶騎士を整備するための場所がある。
金属内格インナースケルトンや外装アウタースキンといった金属部品を加工するための鍛冶場。
結晶筋肉クリスタルティシューを接続し、全身の組み上げを行うための作業場。
それら諸々をあわせて、幻晶騎士の製造・整備を行う施設は一般的に“工房”と呼ばれている。
工房の内部は、１０ｍ級の人型を扱うだけあって、面積、高さ共に広大な空間が広がっている。
椅子のような形の整備台に据えられた幻晶騎士の足元で、大勢の生徒が作業を行っていた。
外装のつけられていない幻晶騎士の腕が台車に乗せて運ばれてゆき、鍛冶場では巨大な鎧の一部を作り上げるための槌の音が響く。
あちこちで怒鳴り声が飛び交い、中にはテンションが上がりすぎたのか、本当に喧嘩を始める者すらいる。
慌しく走り回る生徒たちの間をのっしのっしと進んでいく大柄な人影があった。
いや、大柄と言うのは些か語弊があるかもしれない。
彼は身長自体は１６０ｃｍほどであり、同年代の男性の平均身長からすればむしろ小柄だ。
しかしその体躯は常人の倍はあろうかと言うほどの太さを持ち、周囲に強烈な存在感を示していた。
脂肪で膨らんでいるのではなく、その身を覆うのは強靭で分厚い筋肉だ。
そして細かく編みこみ後ろに垂らした髪の毛と、それ以上の長さを誇る立派な髭が、彼の出身を示している。
ドワーフ族、鉄鋼と鍛冶の民。
彼は言い争いをしている生徒のそばに行くと、人間の脚よりも尚太い腕を振り上げ、その２人を無言で殴りつけた。
手加減をしたとはいえ、ドワーフ族の強烈極まりない拳を受けた２名はそのままのた打ち回る破目になる。
「ったく、どいつもこいつも、このクソ忙しい時に余計な仕事を増やしやがって！！
口動かす暇があったら手ぇ動かしやがれ！！」
「ゲフッ、を、親方！ すまねぇ、すぐ作業に戻る！！」
冗談ではなく、ドワーフ族が本気を出せば、その拳は岩をも砕く。
これ以上“親方”と呼ばれたドワーフの機嫌を損ねてはかなわないと、言い争いをしていた２人は慌てて作業へと戻っていった。
「ただでさえ全身作り直しが７つもあるってぇのに、まったくよう」
ここには陸皇亀ベヘモスと戦い、大破した学園の幻晶騎士の残骸が運び込まれている。
大半の機体が中枢部と骨格が無事なだけという状況に、学園側は全会一致で修理よりも新造する事を決定していた。
確かに整備班に所属する学生達の知識と技術があれば、機体を１から作り上げることも可能だ。
しかしそれも一度に７機分の全身新造となると必要とされる作業量は膨大なものとなる。
今回機体を失ったチーム以外の人員も借り出され、今整備班は総力戦の構えで作業を行っているのだった。
新造とはいえ、比較的無事な部分の多いものから優先的に組み上げられている。
自然、損傷の大きなものは後回しにされていく事になる。
「（こいつぁ一番最後だな）」
親方はとある機体の前で立ち止まる。
運び込まれた残骸はどれも酷く損壊しているが、その機体は一味違い、金属内格自体が分解している。
大半の箇所が部品単位でバラバラになっている様は、運び込まれた残骸の中でも一際酷い状態だ。
逆にここまで来ると、魔力転換炉エーテルリアクタと魔導演算機マギウスエンジンの再利用が可能だったのが奇跡としか言いようのない状態だった。
「しかし、よくよく見ると少しばかり見事すぎるほどの壊れ方だな」
先ほどから残骸を睨む、彼の視線は厳しい。
「魔力マナ切れで自壊しやがったか。骨格構造から崩れてやがる」
横でその呟きを聞いていた生徒が首をかしげる。
彼は親方が何に驚いているのか、理解できていなかった。
「はぁ？ そんなの珍しくもないじゃないっスか。魔力転換炉が潰れちゃあ仕方ねぇって……あれ？」
言った生徒がふと自身の言葉を訝しむように残骸をしげしげと眺め始めた。
そうだ、この残骸は魔力転換炉は無事なのだ。
にも拘らず魔力の供給が切れて骨格構造が自壊した形跡がある。
そこまで考えその生徒は漸く親方の疑問に合点がいったが、同時に別の疑問に首をかしげることになる。
「あー……銀線神経シルバーナーヴでもきれやしたかね？ 珍しいやられ方するもんっスねぇ」
「おお、そうだな……全く珍しい、やられ方だ」
親方はじっと、残骸のうち脚部にあたる部分を見つめる。
装甲が外された脚部の露になった結晶筋肉には縦横に罅が入り、途中から断裂していた。
何度も機体の修理を担当してきた彼らにとってはおなじみの症状、耐久性を超えて使用し疲労断裂を起こした跡だ。
幻晶騎士は生物ではない、結晶筋肉は使用と共に疲労し、いつかは疲労断裂を発生する。
それ自体は珍しい話ではない。しかし―…
「こいつらは出発前に全身オーバーホールしたばかりだ。なんでいきなり疲労断裂なんてしてやがる？
おかしい、こいつのやられ方は何かがおかしい」
髭に埋もれた顔を顰め、親方は唸っている。
彼の直感とも言うべき部分が目の前の残骸から違和感を伝えていた。
この機体の壊れ方は明らかに、彼らが知るどの場合とも違っている。
整備班の仕事とは何も機体の修理を行うだけではない。
使用者のミスで機体が壊れたのならともかく、構造的に改善できる部分があれば対策を行うのも彼らなのだ。
そのため機体に起こりうるトラブルの原因はできる限り把握しておく必要がある。
「機体名はグゥエール。騎操士ナイトランナーはディーの野郎か……あいつ一体何をしやがった？」
ぶつぶつと呟きながら、親方は目の前の残骸の騎操士である、ディートリヒを呼びつけるのだった。
フレメヴィーラの王都カンカネンには、貴族街と呼ばれる区画がある。
基本的に国内の貴族はそれぞれ領地を持っており、普段は領地内の屋敷で過ごしている。
それとは別に、行事や国政への参加など王都で行われる活動に参加しやすいように、王都内に別邸を構えるのが常であった。
それらの別邸が集まる区画が貴族街と呼ばれる場所だ。
屋敷の主たる貴族自身がいない場合が多いため、１年のうち大半はひっそりと静まり返っている場所である。
その貴族街にある一軒の屋敷に、アーキッド、アデルトルートの双子がいた。
そこは彼らの父親であるセラーティ侯爵が使用している別邸だ。
庶子である彼らは、本妻の意向もありセラーティ家の活動とは全くと言っても良いほど関わっていない。
この別邸に来るのも何年ぶりか、そして今彼らの前の前にいるヨアキム・セラーティ侯爵と顔を合わせる事自体、数年ぶりのことだった。
双子が別邸を訪れると、そのままヨアキムの書斎へと案内される。
書斎にはけばけばしくならない程度に品のいい調度品が並んでおり、持ち主の性格を反映してかどこか堅い雰囲気が漂っていた。
数年ぶりに父親と顔をあわせる双子には、明らかに緊張の色が見て取れた。
彼らを呼び出した本人であるヨアキムはしばらく軽く書類を確認していたが、ややあって口を開く。
「二人とも久しぶりだな」
「「……お久しぶりです、父上」」
「元気そうだな。イルマも息災か」
「はい。母さんも病気一つすることなく、元気にしております」
親子というには硬さの残る雰囲気が漂う。
双子も実家からはやや疎まれる立場にあるとは言え、父親から直接そういったことを言われたことはない。
単純に接触時間の短さとヨアキムの纏う雰囲気が場の空気を支配しているのだ。
「ティファから聞いた話だが」
ティファ――双子の異母姉ステファニアのことだ――の名前が出たことで、双子の緊張が高まる。
数ヶ月前のバルトサールとの諍いについて、結局あの後彼らには何の連絡もなかった。
これだけの時間を空けてまさかその話を続けるのかと訝しむ隙を突くように、ヨアキムの口から双子にとって予想外の名前が飛び出す。
「お前達の知り合いに、エルネスティ・エチェバルリアという者がいるな？」
「！？ ……はい」
「どのような人物だ？ 話せ」
有無を言わさぬ父親の言葉に、困惑を押し殺しつつも彼らは自身の印象を述べる。
幼馴染で魔法の師匠、魔法だけなら国内でも随一と思われる能力に、幻晶騎士への多大な興味。
話を聞くだけなら非常に奇妙に思える内容だが、ヨアキムは途中否定するでもなくじっと耳を傾けていた。
「そうか、そういえばお前達も正騎士に匹敵する力を持っているのだったな。
それもティファから聞いた話だが」
「父上、兄様は……」
「アレについては、今は良い。騎士団の者に性根を叩きなおさせている」
もしかして呼び出された目的は本当にエルについてたずねるためだけなのだろうか？ だとしたら何故？
疑問が表情に出ていたのだろう、ヨアキムは少し考えた後説明を続けた。
「ベヘモスとの戦いにおける功労者として名前が挙がっていた。
歳に見合わぬ能力を持っているようだが……今後の働き次第では何らかの褒賞を出すことになっている」
「え、では、エルもちゃんと評価されるのですね！？」
「早まるな。今後次第、だ」
あの時、危険を冒したにも拘らずエルへの褒賞や評価はなされていない。
それについてエル本人は納得してあっさりと引き下がったが、双子にとっては十分に納得のいく話ではなかった。
「（やっぱ見てる奴はちゃんと見てんじゃねぇか）」
今まで父親のことを多少苦手に思っていたキッドも、その話だけでもこれまでに比べ随分と打ち解けた感じを持っていた。
厳しい人物ではあるが、ヨアキムは話のわからない人間ではない。
「ひとまず、今後彼が何かしらの成果を出したならば、まず私に伝えて欲しい。いいな？」
「わかりました、父上」
彼らの師匠たるエルならば、きっとそのうち何らかの成果を打ち立てるだろう。
エルがそれをどうするかはわからないが、それを父親に伝えればいずれエルのためになる。
それはこれまで魔法を教わった彼らにとって、一種の恩返しのように思えた。
そしてここを訪れた時の緊張した雰囲気が和らぎ、明らかに嬉しそうな表情を浮かべている双子を、ヨアキムは表情を変えないまま見つめていたのだった。
「（一つ書いては俺のため、二つ書いてはロボのため……）」
騎士学科の生徒達がライヒアラ学園街へと帰り着いてから１週間ほど、学園は休校になっている。
怪我をした生徒がおり、また子供達の安否を心配した親がその無事を確認したり、面会に来るための時間を作るためである。
無事な生徒も思い思いに過ごしているであろうが、ここに出来た時間をフルに活用する人物がいた。
彼――エルネスティは今、一心不乱に机へと向かいひたすらに何かを紙へと書き付けている。
先日の国王への謁見の場において、彼は自身の知識を反映した幻晶騎士を作り上げると宣言した。
彼としては、すぐさま機体を製作して持ち込みたいところではあるのだが……。
「（まぁぶっちゃけ幻晶騎士を作る当てなぞ全くない訳で）」
結局のところ、今彼に出来る事はいずれ役に立つ事を考えてアイデアを書き溜めておくことくらいだった。
「（国王陛下に啖呵切った以上はそれなりの事やってのけなあかんしなぁ）」
インク壷にペンを突っ込み、エルは一心不乱にアイデアを書き連ねる。
これまでに学んだ座学による構造論、他者が動かしているときに観察した結果、そして何よりも彼自身が動かしたときの経験を元にして多くのアイデアの実現性を検討してゆく。
緩やかな午後の日差しが差し込む空間に、ペンの奏でる微かな音だけが満ちていた。
「（ああそうや、ついでに双子の特訓方法も考えんと）」
長時間机に向かっていたせいで凝りに凝った肩をほぐし、大きく伸びをした。
そのまま背もたれに体重をかけ、漠然と天井を見つめながらつらつらと考えを連ねている。
「（実機は使えないから、仮想操縦装置シミュレーター見たいなのが作れたらいいんやけど、さすがにむずいなぁ。
幻晶騎士の操縦特訓に役立って、それでい
幻晶騎士シルエットナイトを運用するライヒアラ騎操士学園・騎操士学科には当然ながら、幻晶騎士を整備するための場所がある。
金属内格インナースケルトンや外装アウタースキンといった金属部品を加工するための鍛冶場。
結晶筋肉クリスタルティシューを接続し、全身の組み上げを行うための作業場。
それら諸々をあわせて、幻晶騎士の製造・整備を行う施設は一般的に“工房”と呼ばれている。
工房の内部は、１０ｍ級の人型を扱うだけあって、面積、高さ共に広大な空間が広がっている。
椅子のような形の整備台に据えられた幻晶騎士の足元で、大勢の生徒が作業を行っていた。
外装のつけられていない幻晶騎士の腕が台車に乗せて運ばれてゆき、鍛冶場では巨大な鎧の一部を作り上げるための槌の音が響く。
あちこちで怒鳴り声が飛び交い、中にはテンションが上がりすぎたのか、本当に喧嘩を始める者すらいる。
慌しく走り回る生徒たちの間をのっしのっしと進んでいく大柄な人影があった。
いや、大柄と言うのは些か語弊があるかもしれない。
彼は身長自体は１６０ｃｍほどであり、同年代の男性の平均身長からすればむしろ小柄だ。
しかしその体躯は常人の倍はあろうかと言うほどの太さを持ち、周囲に強烈な存在感を示していた。
脂肪で膨らんでいるのではなく、その身を覆うのは強靭で分厚い筋肉だ。
そして細かく編みこみ後ろに垂らした髪の毛と、それ以上の長さを誇る立派な髭が、彼の出身を示している。
ドワーフ族、鉄鋼と鍛冶の民。
彼は言い争いをしている生徒のそばに行くと、人間の脚よりも尚太い腕を振り上げ、その２人を無言で殴りつけた。
手加減をしたとはいえ、ドワーフ族の強烈極まりない拳を受けた２名はそのままのた打ち回る破目になる。
「ったく、どいつもこいつも、このクソ忙しい時に余計な仕事を増やしやがって！！
口動かす暇があったら手ぇ動かしやがれ！！」
「ゲフッ、を、親方！ すまねぇ、すぐ作業に戻る！！」
冗談ではなく、ドワーフ族が本気を出せば、その拳は岩をも砕く。
これ以上“親方”と呼ばれたドワーフの機嫌を損ねてはかなわないと、言い争いをしていた２人は慌てて作業へと戻っていった。
「ただでさえ全身作り直しが７つもあるってぇのに、まったくよう」
ここには陸皇亀ベヘモスと戦い、大破した学園の幻晶騎士の残骸が運び込まれている。
大半の機体が中枢部と骨格が無事なだけという状況に、学園側は全会一致で修理よりも新造する事を決定していた。
確かに整備班に所属する学生達の知識と技術があれば、機体を１から作り上げることも可能だ。
しかしそれも一度に７機分の全身新造となると必要とされる作業量は膨大なものとなる。
今回機体を失ったチーム以外の人員も借り出され、今整備班は総力戦の構えで作業を行っているのだった。
新造とはいえ、比較的無事な部分の多いものから優先的に組み上げられている。
自然、損傷の大きなものは後回しにされていく事になる。
「（こいつぁ一番最後だな）」
親方はとある機体の前で立ち止まる。
運び込まれた残骸はどれも酷く損壊しているが、その機体は一味違い、金属内格自体が分解している。
大半の箇所が部品単位でバラバラになっている様は、運び込まれた残骸の中でも一際酷い状態だ。
逆にここまで来ると、魔力転換炉エーテルリアクタと魔導演算機マギウスエンジンの再利用が可能だったのが奇跡としか言いようのない状態だった。
「しかし、よくよく見ると少しばかり見事すぎるほどの壊れ方だな」
先ほどから残骸を睨む、彼の視線は厳しい。
「魔力マナ切れで自壊しやがったか。骨格構造から崩れてやがる」
横でその呟きを聞いていた生徒が首をかしげる。
彼は親方が何に驚いているのか、理解できていなかった。
「はぁ？ そんなの珍しくもないじゃないっスか。魔力転換炉が潰れちゃあ仕方ねぇって……あれ？」
言った生徒がふと自身の言葉を訝しむように残骸をしげしげと眺め始めた。
そうだ、この残骸は魔力転換炉は無事なのだ。
にも拘らず魔力の供給が切れて骨格構造が自壊した形跡がある。
そこまで考えその生徒は漸く親方の疑問に合点がいったが、同時に別の疑問に首をかしげることになる。
「あー……銀線神経シルバーナーヴでもきれやしたかね？ 珍しいやられ方するもんっスねぇ」
「おお、そうだな……全く珍しい、やられ方だ」
親方はじっと、残骸のうち脚部にあたる部分を見つめる。
装甲が外された脚部の露になった結晶筋肉には縦横に罅が入り、途中から断裂していた。
何度も機体の修理を担当してきた彼らにとってはおなじみの症状、耐久性を超えて使用し疲労断裂を起こした跡だ。
幻晶騎士は生物ではない、結晶筋肉は使用と共に疲労し、いつかは疲労断裂を発生する。
それ自体は珍しい話ではない。しかし―…
「こいつらは出発前に全身オーバーホールしたばかりだ。なんでいきなり疲労断裂なんてしてやがる？
おかしい、こいつのやられ方は何かがおかしい」
髭に埋もれた顔を顰め、親方は唸っている。
彼の直感とも言うべき部分が目の前の残骸から違和感を伝えていた。
この機体の壊れ方は明らかに、彼らが知るどの場合とも違っている。
整備班の仕事とは何も機体の修理を行うだけではない。
使用者のミスで機体が壊れたのならともかく、構造的に改善できる部分があれば対策を行うのも彼らなのだ。
そのため機体に起こりうるトラブルの原因はできる限り把握しておく必要がある。
「機体名はグゥエール。騎操士ナイトランナーはディーの野郎か……あいつ一体何をしやがった？」
ぶつぶつと呟きながら、親方は目の前の残骸の騎操士である、ディートリヒを呼びつけるのだった。
フレメヴィーラの王都カンカネンには、貴族街と呼ばれる区画がある。
基本的に国内の貴族はそれぞれ領地を持っており、普段は領地内の屋敷で過ごしている。
それとは別に、行事や国政への参加など王都で行われる活動に参加しやすいように、王都内に別邸を構えるのが常であった。
それらの別邸が集まる区画が貴族街と呼ばれる場所だ。
屋敷の主たる貴族自身がいない場合が多いため、１年のうち大半はひっそりと静まり返っている場所である。
その貴族街にある一軒の屋敷に、アーキッド、アデルトルートの双子がいた。
そこは彼らの父親であるセラーティ侯爵が使用している別邸だ。
庶子である彼らは、本妻の意向もありセラーティ家の活動とは全くと言っても良いほど関わっていない。
この別邸に来るのも何年ぶりか、そして今彼らの前の前にいるヨアキム・セラーティ侯爵と顔を合わせる事自体、数年ぶりのことだった。
双子が別邸を訪れると、そのままヨアキムの書斎へと案内される。
書斎にはけばけばしくならない程度に品のいい調度品が並んでおり、持ち主の性格を反映してかどこか堅い雰囲気が漂っていた。
数年ぶりに父親と顔をあわせる双子には、明らかに緊張の色が見て取れた。
彼らを呼び出した本人であるヨアキムはしばらく軽く書類を確認していたが、ややあって口を開く。
「二人とも久しぶりだな」
「「……お久しぶりです、父上」」
「元気そうだな。イルマも息災か」
「はい。母さんも病気一つすることなく、元気にしております」
親子というには硬さの残る雰囲気が漂う。
双子も実家からはやや疎まれる立場にあるとは言え、父親から直接そういったことを言われたことはない。
単純に接触時間の短さとヨアキムの纏う雰囲気が場の空気を支配しているのだ。
「ティファから聞いた話だが」
ティファ――双子の異母姉ステファニアのことだ――の名前が出たことで、双子の緊張が高まる。
数ヶ月前のバルトサールとの諍いについて、結局あの後彼らには何の連絡もなかった。
これだけの時間を空けてまさかその話を続けるのかと訝しむ隙を突くように、ヨアキムの口から双子にとって予想外の名前が飛び出す。
「お前達の知り合いに、エルネスティ・エチェバルリアという者がいるな？」
「！？ ……はい」
「どのような人物だ？ 話せ」
有無を言わさぬ父親の言葉に、困惑を押し殺しつつも彼らは自身の印象を述べる。
幼馴染で魔法の師匠、魔法だけなら国内でも随一と思われる能力に、幻晶騎士への多大な興味。
話を聞くだけなら非常に奇妙に思える内容だが、ヨアキムは途中否定するでもなくじっと耳を傾けていた。
「そうか、そういえばお前達も正騎士に匹敵する力を持っているのだったな。
それもティファから聞いた話だが」
「父上、兄様は……」
「アレについては、今は良い。騎士団の者に性根を叩きなおさせている」
もしかして呼び出された目的は本当にエルについてたずねるためだけなのだろうか？ だとしたら何故？
疑問が表情に出ていたのだろう、ヨアキムは少し考えた後説明を続けた。
「ベヘモスとの戦いにおける功労者として名前が挙がっていた。
歳に見合わぬ能力を持っているようだが……今後の働き次第では何らかの褒賞を出すことになっている」
「え、では、エルもちゃんと評価されるのですね！？」
「早まるな。今後次第、だ」
あの時、危険を冒したにも拘らずエルへの褒賞や評価はなされていない。
それについてエル本人は納得してあっさりと引き下がったが、双子にとっては十分に納得のいく話ではなかった。
「（やっぱ見てる奴はちゃんと見てんじゃねぇか）」
今まで父親のことを多少苦手に思っていたキッドも、その話だけでもこれまでに比べ随分と打ち解けた感じを持っていた。
厳しい人物ではあるが、ヨアキムは話のわからない人間ではない。
「ひとまず、今後彼が何かしらの成果を出したならば、まず私に伝えて欲しい。いいな？」
「わかりました、父上」
彼らの師匠たるエルならば、きっとそのうち何らかの成果を打ち立てるだろう。
エルがそれをどうするかはわからないが、それを父親に伝えればいずれエルのためになる。
それはこれまで魔法を教わった彼らにとって、一種の恩返しのように思えた。
そしてここを訪れた時の緊張した雰囲気が和らぎ、明らかに嬉しそうな表情を浮かべている双子を、ヨアキムは表情を変えないまま見つめていたのだった。
「（一つ書いては俺のため、二つ書いてはロボのため……）」
騎士学科の生徒達がライヒアラ学園街へと帰り着いてから１週間ほど、学園は休校になっている。
怪我をした生徒がおり、また子供達の安否を心配した親がその無事を確認したり、面会に来るための時間を作るためである。
無事な生徒も思い思いに過ごしているであろうが、ここに出来た時間をフルに活用する人物がいた。
彼――エルネスティは今、一心不乱に机へと向かいひたすらに何かを紙へと書き付けている。
先日の国王への謁見の場において、彼は自身の知識を反映した幻晶騎士を作り上げると宣言した。
彼としては、すぐさま機体を製作して持ち込みたいところではあるのだが……。
「（まぁぶっちゃけ幻晶騎士を作る当てなぞ全くない訳で）」
結局のところ、今彼に出来る事はいずれ役に立つ事を考えてアイデアを書き溜めておくことくらいだった。
「（国王陛下に啖呵切った以上はそれなりの事やってのけなあかんしなぁ）」
インク壷にペンを突っ込み、エルは一心不乱にアイデアを書き連ねる。
これまでに学んだ座学による構造論、他者が動かしているときに観察した結果、そして何よりも彼自身が動かしたときの経験を元にして多くのアイデアの実現性を検討してゆく。
緩やかな午後の日差しが差し込む空間に、ペンの奏でる微かな音だけが満ちていた。
「（ああそうや、ついでに双子の特訓方法も考えんと）」
長時間机に向かっていたせいで凝りに凝った肩をほぐし、大きく伸びをした。
そのまま背もたれに体重をかけ、漠然と天井を見つめながらつらつらと考えを連ねている。
「（実機は使えないから、仮想操縦装置シミュレーター見たいなのが作れたらいいんやけど、さすがにむずいなぁ。
幻晶騎士の操縦特訓に役立って、それでい
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# 25: first make a Have a place to create a phantom Crystal Knight to Reichel ryuki Misao's school to operate the phantom Crystal Knight silhouette, ryuki operations department naturally. For machining metal parts such as metal in the case inner skeleton or exterior alter skin smithy. At Crystal muscle Crystal Tischer, for this body to do work. Manufactures phantom Crystal Knight and maintenance, additionally various those facilities are generally called "workshop". Inside the Studio is only dealing with people-10 m, area, height with a vast space. At the foot of the phantom Crystal Knight was placed on construction vehicles shaped like a Chair, had done work for many students. Recommend this for untouched exterior of phantom Crystal Knight arms on truck snow carried the build armor a huge part in the forge hammer. There is even a person around yelling, too rise in tension or really get in a fight. Had a big shadow advances students hurriedly ran around heavily. Might say no, big is quite misleading. He is around 160 cm height itself, from the average height of men of the same age is rather petite. However say that in normal times is whether there will be enough weight and had shown a strong presence around the. Rather than bulging with fat, cover the body's muscles strong and thick. And a respectable beard boasts a snotty behind the finely braided hair and length more than it suggests he was born. The people of dwarven family, iron and steel and blacksmiths. He goes near a student arguing and swing up than human legs, thick arms, the two silently, hauled off. Even though you get the dwarf family's intense two suffered extremely fist will squirm as position."I, did not have increased leaps and bounds this guy, this XO busy when any extra work! Mouth if you have time to move the hands! said, do not move! 」"GEHA, the boss! Smile!, now back to work! 」 Joke, not dwarves have put out serious, the fist also break rocks. 2 who was arguing with Dutch dwarf more called the "boss" is no match for the panicked and went back to work."I even just body making dressing have seven anyway quite like ' School here to fight land sovereigns turtles Nergal, wrecked phantom Crystal Knight remains are being transported. Most aircraft central nervous system and skeletal alright, just that situation the school side unanimously to the heart rather than repair it decided was. It's possible if students certainly belonging to the maintenance team knowledge and technology, aircraft up from 1. But will a huge amount of work needed and it be systemic newbuildings for seven minutes at a time. And borrowed staff other than the team we lost the aircraft was now team is doing work on total war. Newly built, and although relatively safe part from Quantico preferentially. Nature, significant damage will continue being on the back burner.' （ this guy's at last! ） " The master stopped in front of certain aircraft. But none were carried wreckage are badly damaged fuselage gang differences, have broken down the metal in the case itself. Is where most parts unit apart in like it's particularly bad in the wreckage was brought. And come up here to reverse the hex conversion furnace aetherreacto and doom conducting operations Magus engines reuse was possible was unspeakable State miracle."However, closer look a little bit too fine so fragile, ' Earlier from the debris glares and harsh gaze of his."He and self-destruction magic do not expire in or. The crumbling from the skeletal structure ' Students had heard the chatter on side tilts his head. The boss surprised what he didn't understand."The NAA? Wouldn't be so uncommon!?. Hex reactor will Chan Oh how I just... What's this? 」 Students said empty suddenly's own words to began admiring gaze remains on. That's right, this debris is hex conversion furnace safe. Despite that evidence of self-destruction skeletal structure, power supply is turned off. Will be thinking that far, the student finally boss wondering sense but, at the same time tilts his head to another question."Ah... Silver line neuro Silber nerve even lets Palm rebuking? Rare or who was gonna cum su!! '' And you, it is so. Not at all unusual, people, ' Boss stare quietly, out of the wreckage hit leg portion. Aspect into brim with dew Crystal muscles leg armor has been removed, was tearing from the middle. Is Mark caused the fatigue rupture for them several times has been responsible for the aircraft repair and use beyond the familiar symptoms, and durability. Phantom Crystal Knight and fatigue along with Crystal muscles is not a biological, sometime the fatigue rupture occur. It is not in itself unusual story. But--."These guys prior to departure systemic overhaul was just that. But then suddenly I fatigue rupture in what? Funny, friendly one and how something is wrong ' 顰me face buried in the beard and worried about what the boss. Told the discomfort from the wreckage of the front part of his intuition. Unlike are fragile aircraft, apparently they know you. Not only do nothing but airframe repair and maintenance team work. Broken body in the employer's mistake of them anyway and if you are, can improve the structural portions of the measures also. Therefore must be aware of possible problems that can happen to the body.See guueeru's aircraft name. Ryuki Cao Shilin night runner is asshole Dee... That guy you are and what he? 」 Mutter grumbling and debris in front of cavalry operations who is boss, yell Dietrich was. The sections called noble Street in the King of the fremevirla capital cancanen. Basically domestic nobility each territory has, usually hanging in the mansion in the territory. So easy to join separately, King City, such as participation in national politics, events and activities in co. townhouse in King City always was. It's called noble city congregate residence for those parcels. House principal nobles themselves are often the majority of the year where is quiet and. One hotel is located in the patrician mansion, ArchiCAD, adult route there were twins. There is a townhouse with Cerati Marquis in their father. Their bastard child and wife of SLATI home activities and at all and not involved in much too good to say. Years Buri, or even come to this and thing Marquis de Joachim serati now ago they have to meet several years Buri that was. Twins visit the townhouse and that guides us to Joachim study intact. Lined den to have pimped-degree of good furniture, Hung tough atmosphere somewhere to reflect the personality of its owner. Twins meet face to face with his father several years Buri clearly look strained color and balanced. Is Joakim himself called them in for some lightly, had confirmed the documents, but little, and the open mouth.A 'two a long time. "「「…… It's been awhile, father ' "' Well, yeah. Irma also health? '' Yes. Mother disease one without the energetic " Floating atmosphere of firmness that parent-child. Never position twins also is somewhat alienated from the family home, although they were from the father directly said that sort of thing. It's short of contact time with Joachim clad in a simple atmosphere dominates the air field.I heard from TIFA is TIFA--that the twin half sister Stefania's--the name that the tensions of the twins. About the row with a few months ago the Balto sale eventually after that to them what was not contacted. I continue the story, only this time and empty any chance to poke Joachim mouth out of unexpected names for twins."You know, ernesti Echevarria and who said that? 」「！？ …… Yes '"What person? Speak. ' While taking the puzzled father compelling words, they state the own impression. A childhood friend master of magic, magical only if the country's best ability that's a tremendous interest in the phantom Crystal Knight. Had listened patiently, not seems very strange if only to hear what is in deny Joachim along the way."So what has power comparable to m. Knight you are speaking of was. It also heard from TIFA ""The father, brother......"See about that right now is good. Knights who let me 叩kinaosa out " The purpose invoked by any chance is only for really asking about the El I wonder? And once you have why? Question out to look after Joachim was a little thought continued to explain."Was named as a person of merit in battle with Nergal. Capacity 見合wanu-year-old's have... Turned out some awards in the future work as soon as you '"The El also evaluated properly?! 」' Rush. It is up to the future " At that time risked despite there has been no award to the El and evaluation. Was not backed down and convinced El personal about it, but to the twins go enough to talk.' （ and boobs I seen and the guy I'm seeing underestimated?! ） " Kid ever weak thought somewhat that the father also had that story alone compared to relaxed and feeling. Is a tough person Joachim is not people do not know the story."If for the time being, next he began wonder what achievements, first tell me. A good? 」Father found that the They master Cooper will El if surely set some performance out. Don't know what El to do it, but it should tell to his father one will be for the El. It seemed like kind of favor they learned magic so far. And it doesn't change facial expressions is Joachim eased during a trip here to the tense atmosphere, smiling happy faces revealed twins stared. ' （ wrote one for me is writing two Lobo for...... ） ' Knight, Department of students driving to Reichel school district from 1 week or so, Gakuen school is. And students were injured, also make time for parents worried about their children's safety that safely, comes to visit. Students safe and wanted someone to take full advantage of the time here could have had thoughts. He--ernesti is now, in the intently to the desk single-mindedly opposite something to paper and write it down before that. Building a phantom Crystal Knight that reflects knowledge of himself in the place of the throne to the King the other day he declared. But in so far as he instantly produced aircraft and want to bring...' （ well honestly rely on make install phantom Crystal Knight mystery no translation ） " After all he can do now was hold writing ideas and thinking come in handy.' （ an overseer yattenoke I wish I moderate things over to his Majesty the King turned off! ） " Stuck his pen into the ink pot, the El in the intently ideas dedicated to. Results were observed when running the structure theory of classroom lecture learned so far and others experience when he himself more than anything else to and examined the feasibility of the ideas of many. Only the faint sound of pen space bathed in gentle afternoon sun, were full.'（ Oh that's right, while twins special training methods 考enn and ） " Loosening the shoulder was headed on the desk for a long time due to the sophisticated, you increase the growth. Intact put weight back on, while staring at the ceiling and wig are lined with thinking.' （ saw you can't use real from virtual control system Simulator are not I hope Burns, indeed is difficult not NAA. In it, helped phantom Crystal Knight pilot training
การแปล กรุณารอสักครู่..
#25: まず最初に作るのは
幻晶騎士シルエットナイトを運用するライヒアラ騎操士学園・騎操士学科には当然ながら、幻晶騎士を整備するための場所がある。
金属内格インナースケルトンや外装アウタースキンといった金属部品を加工するための鍛冶場。
結晶筋肉クリスタルティシューを接続し、全身の組み上げを行うための作業場。
それら諸々をあわせて、幻晶騎士の製造・整備を行う施設は一般的に“工房”と呼ばれている。
工房の内部は、１０ｍ級の人型を扱うだけあって、面積、高さ共に広大な空間が広がっている。
椅子のような形の整備台に据えられた幻晶騎士の足元で、大勢の生徒が作業を行っていた。
外装のつけられていない幻晶騎士の腕が台車に乗せて運ばれてゆき、鍛冶場では巨大な鎧の一部を作り上げるための槌の音が響く。
あちこちで怒鳴り声が飛び交い、中にはテンションが上がりすぎたのか、本当に喧嘩を始める者すらいる。
慌しく走り回る生徒たちの間をのっしのっしと進んでいく大柄な人影があった。
いや、大柄と言うのは些か語弊があるかもしれない。
彼は身長自体は１６０ｃｍほどであり、同年代の男性の平均身長からすればむしろ小柄だ。
しかしその体躯は常人の倍はあろうかと言うほどの太さを持ち、周囲に強烈な存在感を示していた。
脂肪で膨らんでいるのではなく、その身を覆うのは強靭で分厚い筋肉だ。
そして細かく編みこみ後ろに垂らした髪の毛と、それ以上の長さを誇る立派な髭が、彼の出身を示している。
ドワーフ族、鉄鋼と鍛冶の民。
彼は言い争いをしている生徒のそばに行くと、人間の脚よりも尚太い腕を振り上げ、その２人を無言で殴りつけた。
手加減をしたとはいえ、ドワーフ族の強烈極まりない拳を受けた２名はそのままのた打ち回る破目になる。
「ったく、どいつもこいつも、このクソ忙しい時に余計な仕事を増やしやがって！！
口動かす暇があったら手ぇ動かしやがれ！！」
「ゲフッ、を、親方！ すまねぇ、すぐ作業に戻る！！」
冗談ではなく、ドワーフ族が本気を出せば、その拳は岩をも砕く。
これ以上“親方”と呼ばれたドワーフの機嫌を損ねてはかなわないと、言い争いをしていた２人は慌てて作業へと戻っていった。
「ただでさえ全身作り直しが７つもあるってぇのに、まったくよう」
ここには陸皇亀ベヘモスと戦い、大破した学園の幻晶騎士の残骸が運び込まれている。
大半の機体が中枢部と骨格が無事なだけという状況に、学園側は全会一致で修理よりも新造する事を決定していた。
確かに整備班に所属する学生達の知識と技術があれば、機体を１から作り上げることも可能だ。
しかしそれも一度に７機分の全身新造となると必要とされる作業量は膨大なものとなる。
今回機体を失ったチーム以外の人員も借り出され、今整備班は総力戦の構えで作業を行っているのだった。
新造とはいえ、比較的無事な部分の多いものから優先的に組み上げられている。
自然、損傷の大きなものは後回しにされていく事になる。
「（こいつぁ一番最後だな）」
親方はとある機体の前で立ち止まる。
運び込まれた残骸はどれも酷く損壊しているが、その機体は一味違い、金属内格自体が分解している。
大半の箇所が部品単位でバラバラになっている様は、運び込まれた残骸の中でも一際酷い状態だ。
逆にここまで来ると、魔力転換炉エーテルリアクタと魔導演算機マギウスエンジンの再利用が可能だったのが奇跡としか言いようのない状態だった。
「しかし、よくよく見ると少しばかり見事すぎるほどの壊れ方だな」
先ほどから残骸を睨む、彼の視線は厳しい。
「魔力マナ切れで自壊しやがったか。骨格構造から崩れてやがる」
横でその呟きを聞いていた生徒が首をかしげる。
彼は親方が何に驚いているのか、理解できていなかった。
「はぁ？ そんなの珍しくもないじゃないっスか。魔力転換炉が潰れちゃあ仕方ねぇって……あれ？」
言った生徒がふと自身の言葉を訝しむように残骸をしげしげと眺め始めた。
そうだ、この残骸は魔力転換炉は無事なのだ。
にも拘らず魔力の供給が切れて骨格構造が自壊した形跡がある。
そこまで考えその生徒は漸く親方の疑問に合点がいったが、同時に別の疑問に首をかしげることになる。
「あー……銀線神経シルバーナーヴでもきれやしたかね？ 珍しいやられ方するもんっスねぇ」
「おお、そうだな……全く珍しい、やられ方だ」
親方はじっと、残骸のうち脚部にあたる部分を見つめる。
装甲が外された脚部の露になった結晶筋肉には縦横に罅が入り、途中から断裂していた。
何度も機体の修理を担当してきた彼らにとってはおなじみの症状、耐久性を超えて使用し疲労断裂を起こした跡だ。
幻晶騎士は生物ではない、結晶筋肉は使用と共に疲労し、いつかは疲労断裂を発生する。
それ自体は珍しい話ではない。しかし―…
「こいつらは出発前に全身オーバーホールしたばかりだ。なんでいきなり疲労断裂なんてしてやがる？
おかしい、こいつのやられ方は何かがおかしい」
髭に埋もれた顔を顰め、親方は唸っている。
彼の直感とも言うべき部分が目の前の残骸から違和感を伝えていた。
この機体の壊れ方は明らかに、彼らが知るどの場合とも違っている。
整備班の仕事とは何も機体の修理を行うだけではない。
使用者のミスで機体が壊れたのならともかく、構造的に改善できる部分があれば対策を行うのも彼らなのだ。
そのため機体に起こりうるトラブルの原因はできる限り把握しておく必要がある。
「機体名はグゥエール。騎操士ナイトランナーはディーの野郎か……あいつ一体何をしやがった？」
ぶつぶつと呟きながら、親方は目の前の残骸の騎操士である、ディートリヒを呼びつけるのだった。
フレメヴィーラの王都カンカネンには、貴族街と呼ばれる区画がある。
基本的に国内の貴族はそれぞれ領地を持っており、普段は領地内の屋敷で過ごしている。
それとは別に、行事や国政への参加など王都で行われる活動に参加しやすいように、王都内に別邸を構えるのが常であった。
それらの別邸が集まる区画が貴族街と呼ばれる場所だ。
屋敷の主たる貴族自身がいない場合が多いため、１年のうち大半はひっそりと静まり返っている場所である。
その貴族街にある一軒の屋敷に、アーキッド、アデルトルートの双子がいた。
そこは彼らの父親であるセラーティ侯爵が使用している別邸だ。
庶子である彼らは、本妻の意向もありセラーティ家の活動とは全くと言っても良いほど関わっていない。
この別邸に来るのも何年ぶりか、そして今彼らの前の前にいるヨアキム・セラーティ侯爵と顔を合わせる事自体、数年ぶりのことだった。
双子が別邸を訪れると、そのままヨアキムの書斎へと案内される。
書斎にはけばけばしくならない程度に品のいい調度品が並んでおり、持ち主の性格を反映してかどこか堅い雰囲気が漂っていた。
数年ぶりに父親と顔をあわせる双子には、明らかに緊張の色が見て取れた。
彼らを呼び出した本人であるヨアキムはしばらく軽く書類を確認していたが、ややあって口を開く。
「二人とも久しぶりだな」
「「……お久しぶりです、父上」」
「元気そうだな。イルマも息災か」
「はい。母さんも病気一つすることなく、元気にしております」
親子というには硬さの残る雰囲気が漂う。
双子も実家からはやや疎まれる立場にあるとは言え、父親から直接そういったことを言われたことはない。
単純に接触時間の短さとヨアキムの纏う雰囲気が場の空気を支配しているのだ。
「ティファから聞いた話だが」
ティファ――双子の異母姉ステファニアのことだ――の名前が出たことで、双子の緊張が高まる。
数ヶ月前のバルトサールとの諍いについて、結局あの後彼らには何の連絡もなかった。
これだけの時間を空けてまさかその話を続けるのかと訝しむ隙を突くように、ヨアキムの口から双子にとって予想外の名前が飛び出す。
「お前達の知り合いに、エルネスティ・エチェバルリアという者がいるな？」
「！？ ……はい」
「どのような人物だ？ 話せ」
有無を言わさぬ父親の言葉に、困惑を押し殺しつつも彼らは自身の印象を述べる。
幼馴染で魔法の師匠、魔法だけなら国内でも随一と思われる能力に、幻晶騎士への多大な興味。
話を聞くだけなら非常に奇妙に思える内容だが、ヨアキムは途中否定するでもなくじっと耳を傾けていた。
「そうか、そういえばお前達も正騎士に匹敵する力を持っているのだったな。
それもティファから聞いた話だが」
「父上、兄様は……」
「アレについては、今は良い。騎士団の者に性根を叩きなおさせている」
もしかして呼び出された目的は本当にエルについてたずねるためだけなのだろうか？ だとしたら何故？
疑問が表情に出ていたのだろう、ヨアキムは少し考えた後説明を続けた。
「ベヘモスとの戦いにおける功労者として名前が挙がっていた。
歳に見合わぬ能力を持っているようだが……今後の働き次第では何らかの褒賞を出すことになっている」
「え、では、エルもちゃんと評価されるのですね！？」
「早まるな。今後次第、だ」
あの時、危険を冒したにも拘らずエルへの褒賞や評価はなされていない。
それについてエル本人は納得してあっさりと引き下がったが、双子にとっては十分に納得のいく話ではなかった。
「（やっぱ見てる奴はちゃんと見てんじゃねぇか）」
今まで父親のことを多少苦手に思っていたキッドも、その話だけでもこれまでに比べ随分と打ち解けた感じを持っていた。
厳しい人物ではあるが、ヨアキムは話のわからない人間ではない。
「ひとまず、今後彼が何かしらの成果を出したならば、まず私に伝えて欲しい。いいな？」
「わかりました、父上」
彼らの師匠たるエルならば、きっとそのうち何らかの成果を打ち立てるだろう。
エルがそれをどうするかはわからないが、それを父親に伝えればいずれエルのためになる。
それはこれまで魔法を教わった彼らにとって、一種の恩返しのように思えた。
そしてここを訪れた時の緊張した雰囲気が和らぎ、明らかに嬉しそうな表情を浮かべている双子を、ヨアキムは表情を変えないまま見つめていたのだった。
「（一つ書いては俺のため、二つ書いてはロボのため……）」
騎士学科の生徒達がライヒアラ学園街へと帰り着いてから１週間ほど、学園は休校になっている。
怪我をした生徒がおり、また子供達の安否を心配した親がその無事を確認したり、面会に来るための時間を作るためである。
無事な生徒も思い思いに過ごしているであろうが、ここに出来た時間をフルに活用する人物がいた。
彼――エルネスティは今、一心不乱に机へと向かいひたすらに何かを紙へと書き付けている。
先日の国王への謁見の場において、彼は自身の知識を反映した幻晶騎士を作り上げると宣言した。
彼としては、すぐさま機体を製作して持ち込みたいところではあるのだが……。
「（まぁぶっちゃけ幻晶騎士を作る当てなぞ全くない訳で）」
結局のところ、今彼に出来る事はいずれ役に立つ事を考えてアイデアを書き溜めておくことくらいだった。
「（国王陛下に啖呵切った以上はそれなりの事やってのけなあかんしなぁ）」
インク壷にペンを突っ込み、エルは一心不乱にアイデアを書き連ねる。
これまでに学んだ座学による構造論、他者が動かしているときに観察した結果、そして何よりも彼自身が動かしたときの経験を元にして多くのアイデアの実現性を検討してゆく。
緩やかな午後の日差しが差し込む空間に、ペンの奏でる微かな音だけが満ちていた。
「（ああそうや、ついでに双子の特訓方法も考えんと）」
長時間机に向かっていたせいで凝りに凝った肩をほぐし、大きく伸びをした。
そのまま背もたれに体重をかけ、漠然と天井を見つめながらつらつらと考えを連ねている。
「（実機は使えないから、仮想操縦装置シミュレーター見たいなのが作れたらいいんやけど、さすがにむずいなぁ。
幻晶騎士の操縦特訓に役立って、それでい
幻晶騎士シルエットナイトを運用するライヒアラ騎操士学園・騎操士学科には当然ながら、幻晶騎士を整備するための場所がある。
金属内格インナースケルトンや外装アウタースキンといった金属部品を加工するための鍛冶場。
結晶筋肉クリスタルティシューを接続し、全身の組み上げを行うための作業場。
それら諸々をあわせて、幻晶騎士の製造・整備を行う施設は一般的に“工房”と呼ばれている。
工房の内部は、１０ｍ級の人型を扱うだけあって、面積、高さ共に広大な空間が広がっている。
椅子のような形の整備台に据えられた幻晶騎士の足元で、大勢の生徒が作業を行っていた。
外装のつけられていない幻晶騎士の腕が台車に乗せて運ばれてゆき、鍛冶場では巨大な鎧の一部を作り上げるための槌の音が響く。
あちこちで怒鳴り声が飛び交い、中にはテンションが上がりすぎたのか、本当に喧嘩を始める者すらいる。
慌しく走り回る生徒たちの間をのっしのっしと進んでいく大柄な人影があった。
いや、大柄と言うのは些か語弊があるかもしれない。
彼は身長自体は１６０ｃｍほどであり、同年代の男性の平均身長からすればむしろ小柄だ。
しかしその体躯は常人の倍はあろうかと言うほどの太さを持ち、周囲に強烈な存在感を示していた。
脂肪で膨らんでいるのではなく、その身を覆うのは強靭で分厚い筋肉だ。
そして細かく編みこみ後ろに垂らした髪の毛と、それ以上の長さを誇る立派な髭が、彼の出身を示している。
ドワーフ族、鉄鋼と鍛冶の民。
彼は言い争いをしている生徒のそばに行くと、人間の脚よりも尚太い腕を振り上げ、その２人を無言で殴りつけた。
手加減をしたとはいえ、ドワーフ族の強烈極まりない拳を受けた２名はそのままのた打ち回る破目になる。
「ったく、どいつもこいつも、このクソ忙しい時に余計な仕事を増やしやがって！！
口動かす暇があったら手ぇ動かしやがれ！！」
「ゲフッ、を、親方！ すまねぇ、すぐ作業に戻る！！」
冗談ではなく、ドワーフ族が本気を出せば、その拳は岩をも砕く。
これ以上“親方”と呼ばれたドワーフの機嫌を損ねてはかなわないと、言い争いをしていた２人は慌てて作業へと戻っていった。
「ただでさえ全身作り直しが７つもあるってぇのに、まったくよう」
ここには陸皇亀ベヘモスと戦い、大破した学園の幻晶騎士の残骸が運び込まれている。
大半の機体が中枢部と骨格が無事なだけという状況に、学園側は全会一致で修理よりも新造する事を決定していた。
確かに整備班に所属する学生達の知識と技術があれば、機体を１から作り上げることも可能だ。
しかしそれも一度に７機分の全身新造となると必要とされる作業量は膨大なものとなる。
今回機体を失ったチーム以外の人員も借り出され、今整備班は総力戦の構えで作業を行っているのだった。
新造とはいえ、比較的無事な部分の多いものから優先的に組み上げられている。
自然、損傷の大きなものは後回しにされていく事になる。
「（こいつぁ一番最後だな）」
親方はとある機体の前で立ち止まる。
運び込まれた残骸はどれも酷く損壊しているが、その機体は一味違い、金属内格自体が分解している。
大半の箇所が部品単位でバラバラになっている様は、運び込まれた残骸の中でも一際酷い状態だ。
逆にここまで来ると、魔力転換炉エーテルリアクタと魔導演算機マギウスエンジンの再利用が可能だったのが奇跡としか言いようのない状態だった。
「しかし、よくよく見ると少しばかり見事すぎるほどの壊れ方だな」
先ほどから残骸を睨む、彼の視線は厳しい。
「魔力マナ切れで自壊しやがったか。骨格構造から崩れてやがる」
横でその呟きを聞いていた生徒が首をかしげる。
彼は親方が何に驚いているのか、理解できていなかった。
「はぁ？ そんなの珍しくもないじゃないっスか。魔力転換炉が潰れちゃあ仕方ねぇって……あれ？」
言った生徒がふと自身の言葉を訝しむように残骸をしげしげと眺め始めた。
そうだ、この残骸は魔力転換炉は無事なのだ。
にも拘らず魔力の供給が切れて骨格構造が自壊した形跡がある。
そこまで考えその生徒は漸く親方の疑問に合点がいったが、同時に別の疑問に首をかしげることになる。
「あー……銀線神経シルバーナーヴでもきれやしたかね？ 珍しいやられ方するもんっスねぇ」
「おお、そうだな……全く珍しい、やられ方だ」
親方はじっと、残骸のうち脚部にあたる部分を見つめる。
装甲が外された脚部の露になった結晶筋肉には縦横に罅が入り、途中から断裂していた。
何度も機体の修理を担当してきた彼らにとってはおなじみの症状、耐久性を超えて使用し疲労断裂を起こした跡だ。
幻晶騎士は生物ではない、結晶筋肉は使用と共に疲労し、いつかは疲労断裂を発生する。
それ自体は珍しい話ではない。しかし―…
「こいつらは出発前に全身オーバーホールしたばかりだ。なんでいきなり疲労断裂なんてしてやがる？
おかしい、こいつのやられ方は何かがおかしい」
髭に埋もれた顔を顰め、親方は唸っている。
彼の直感とも言うべき部分が目の前の残骸から違和感を伝えていた。
この機体の壊れ方は明らかに、彼らが知るどの場合とも違っている。
整備班の仕事とは何も機体の修理を行うだけではない。
使用者のミスで機体が壊れたのならともかく、構造的に改善できる部分があれば対策を行うのも彼らなのだ。
そのため機体に起こりうるトラブルの原因はできる限り把握しておく必要がある。
「機体名はグゥエール。騎操士ナイトランナーはディーの野郎か……あいつ一体何をしやがった？」
ぶつぶつと呟きながら、親方は目の前の残骸の騎操士である、ディートリヒを呼びつけるのだった。
フレメヴィーラの王都カンカネンには、貴族街と呼ばれる区画がある。
基本的に国内の貴族はそれぞれ領地を持っており、普段は領地内の屋敷で過ごしている。
それとは別に、行事や国政への参加など王都で行われる活動に参加しやすいように、王都内に別邸を構えるのが常であった。
それらの別邸が集まる区画が貴族街と呼ばれる場所だ。
屋敷の主たる貴族自身がいない場合が多いため、１年のうち大半はひっそりと静まり返っている場所である。
その貴族街にある一軒の屋敷に、アーキッド、アデルトルートの双子がいた。
そこは彼らの父親であるセラーティ侯爵が使用している別邸だ。
庶子である彼らは、本妻の意向もありセラーティ家の活動とは全くと言っても良いほど関わっていない。
この別邸に来るのも何年ぶりか、そして今彼らの前の前にいるヨアキム・セラーティ侯爵と顔を合わせる事自体、数年ぶりのことだった。
双子が別邸を訪れると、そのままヨアキムの書斎へと案内される。
書斎にはけばけばしくならない程度に品のいい調度品が並んでおり、持ち主の性格を反映してかどこか堅い雰囲気が漂っていた。
数年ぶりに父親と顔をあわせる双子には、明らかに緊張の色が見て取れた。
彼らを呼び出した本人であるヨアキムはしばらく軽く書類を確認していたが、ややあって口を開く。
「二人とも久しぶりだな」
「「……お久しぶりです、父上」」
「元気そうだな。イルマも息災か」
「はい。母さんも病気一つすることなく、元気にしております」
親子というには硬さの残る雰囲気が漂う。
双子も実家からはやや疎まれる立場にあるとは言え、父親から直接そういったことを言われたことはない。
単純に接触時間の短さとヨアキムの纏う雰囲気が場の空気を支配しているのだ。
「ティファから聞いた話だが」
ティファ――双子の異母姉ステファニアのことだ――の名前が出たことで、双子の緊張が高まる。
数ヶ月前のバルトサールとの諍いについて、結局あの後彼らには何の連絡もなかった。
これだけの時間を空けてまさかその話を続けるのかと訝しむ隙を突くように、ヨアキムの口から双子にとって予想外の名前が飛び出す。
「お前達の知り合いに、エルネスティ・エチェバルリアという者がいるな？」
「！？ ……はい」
「どのような人物だ？ 話せ」
有無を言わさぬ父親の言葉に、困惑を押し殺しつつも彼らは自身の印象を述べる。
幼馴染で魔法の師匠、魔法だけなら国内でも随一と思われる能力に、幻晶騎士への多大な興味。
話を聞くだけなら非常に奇妙に思える内容だが、ヨアキムは途中否定するでもなくじっと耳を傾けていた。
「そうか、そういえばお前達も正騎士に匹敵する力を持っているのだったな。
それもティファから聞いた話だが」
「父上、兄様は……」
「アレについては、今は良い。騎士団の者に性根を叩きなおさせている」
もしかして呼び出された目的は本当にエルについてたずねるためだけなのだろうか？ だとしたら何故？
疑問が表情に出ていたのだろう、ヨアキムは少し考えた後説明を続けた。
「ベヘモスとの戦いにおける功労者として名前が挙がっていた。
歳に見合わぬ能力を持っているようだが……今後の働き次第では何らかの褒賞を出すことになっている」
「え、では、エルもちゃんと評価されるのですね！？」
「早まるな。今後次第、だ」
あの時、危険を冒したにも拘らずエルへの褒賞や評価はなされていない。
それについてエル本人は納得してあっさりと引き下がったが、双子にとっては十分に納得のいく話ではなかった。
「（やっぱ見てる奴はちゃんと見てんじゃねぇか）」
今まで父親のことを多少苦手に思っていたキッドも、その話だけでもこれまでに比べ随分と打ち解けた感じを持っていた。
厳しい人物ではあるが、ヨアキムは話のわからない人間ではない。
「ひとまず、今後彼が何かしらの成果を出したならば、まず私に伝えて欲しい。いいな？」
「わかりました、父上」
彼らの師匠たるエルならば、きっとそのうち何らかの成果を打ち立てるだろう。
エルがそれをどうするかはわからないが、それを父親に伝えればいずれエルのためになる。
それはこれまで魔法を教わった彼らにとって、一種の恩返しのように思えた。
そしてここを訪れた時の緊張した雰囲気が和らぎ、明らかに嬉しそうな表情を浮かべている双子を、ヨアキムは表情を変えないまま見つめていたのだった。
「（一つ書いては俺のため、二つ書いてはロボのため……）」
騎士学科の生徒達がライヒアラ学園街へと帰り着いてから１週間ほど、学園は休校になっている。
怪我をした生徒がおり、また子供達の安否を心配した親がその無事を確認したり、面会に来るための時間を作るためである。
無事な生徒も思い思いに過ごしているであろうが、ここに出来た時間をフルに活用する人物がいた。
彼――エルネスティは今、一心不乱に机へと向かいひたすらに何かを紙へと書き付けている。
先日の国王への謁見の場において、彼は自身の知識を反映した幻晶騎士を作り上げると宣言した。
彼としては、すぐさま機体を製作して持ち込みたいところではあるのだが……。
「（まぁぶっちゃけ幻晶騎士を作る当てなぞ全くない訳で）」
結局のところ、今彼に出来る事はいずれ役に立つ事を考えてアイデアを書き溜めておくことくらいだった。
「（国王陛下に啖呵切った以上はそれなりの事やってのけなあかんしなぁ）」
インク壷にペンを突っ込み、エルは一心不乱にアイデアを書き連ねる。
これまでに学んだ座学による構造論、他者が動かしているときに観察した結果、そして何よりも彼自身が動かしたときの経験を元にして多くのアイデアの実現性を検討してゆく。
緩やかな午後の日差しが差し込む空間に、ペンの奏でる微かな音だけが満ちていた。
「（ああそうや、ついでに双子の特訓方法も考えんと）」
長時間机に向かっていたせいで凝りに凝った肩をほぐし、大きく伸びをした。
そのまま背もたれに体重をかけ、漠然と天井を見つめながらつらつらと考えを連ねている。
「（実機は使えないから、仮想操縦装置シミュレーター見たいなのが作れたらいいんやけど、さすがにむずいなぁ。
幻晶騎士の操縦特訓に役立って、それでい
การแปล กรุณารอสักครู่..
# 25 Reich soldiers and cavalry school Ara ayahito operation Department to operate a phantom silhouette crystal Knight night to make first, of course, there is a place for the development of the Phantom Crystal knight. At the forge for machining metal parts such as inner and outer packaging case and metal skeleton in the skin. Crystal crystal is connected at the muscle tissue, the working place for raising the whole body. According to their various facilities, production and development of crystal knight is generally called "studio". TooThe interior of the workshop, the area with only 10 of the spread in the vast space height. Phantom Crystal Knight at the foot of the chair was laid in the form of a large number of students went to work. Yuki Phantom Crystal Knight at arms not carried on the outer ring of the carriage, and build a sound hammer for a huge part of armor in the forge. Flying here and there a voice yelled at the rise of too much tension, even those who start a quarrel. TooGetting around a large pupils go to form heavily. No, say at the big and little may be misleading. He is so tall, and 160 cm from the average height of male peers rather small. At its height, however, has said that the thickness of the will of man, showed a strong presence. In the fat, but not in the strength of the cover body fat to muscle. AtAnd hung back braided hair, and it boasts a fine long beard, his hometown. At the dwarf, and steel forging. He made the quarrel and go to the students, raised arms than in the human leg, mute beat Part 2. And at the discretion of the club's turn to Ken strong dwarf group in two as it is. I want to
「 bastards,This shit is busy at the time and increase the extra work it!! If you have a hand moving down time and move the mouth!! "
「 ゲフッ, boss! Hey, sorry now back to work!! " Too funny not to go all out to dwarf group, its fist to crush rocks. At the "master" and more than this, and I can't called dwarf the quarrel in two and back to work. But even in the
「 reshaping is seven, so that he 」
Here, the turtle and Rio ベヘモス wrecked are carried the remains of the Knights of the crystal. At the situation that most of the safe body skeleton and the central portion on the side of the school, it was unanimously decided rather than repair it. Certainly at the students belonging to the group of the development of knowledge and technology, which can build up from 1. At one time, however, it is necessary to newly built and systemic and seven minutes and a huge amount of work. AtChecked out but lost team personnel, aircraft maintenance crew is now ready for total war carried out of work. At the newly built, and relatively safe from the part in the assembly. The nature of the damage will be put off. Stop in front of a certain aircraft, this is the most
「（ ）」
last boss. Carried at the ruins which severely damaged, but the difference is that the metal inner ring body is decomposed as itself. AtMost of the places in the component units in a terrible condition, especially among the ruins were admitted. At this point, the reuse of sorcery and magic computer magus engine conversion furnace ether reactor not only description was miracle. However,
「 broken a little too nice as well as it remains on the 」
from his eyes. Pt and
「 magic out of mana. 」
and skeletal structure from collapsingStudents in listening to the murmur shake one's head. You surprised at what the gaffer, he couldn't understand.
「 huh? It is not uncommon, or not. Method for crushing converter magic won't... Why? " He said to the student's own words began to doubt daresay ruins. Yes, this remains at the magic transformation reactor is safe. In spite of some traces of disintegration of skeletal structures out of supply. AtFar the student to master the purchase of such as me, puzzled by the question at the same time.
「 uh... Whether it be in the palm シルバーナーヴ nerve silver line? Be fed up 」
「, rare Oh, hey... Yes... I was quite rare, it still remains the master 」
, gazing at the leg part. Removed at the armor of leg muscle in the crystal was in the middle, crackle and fracture. AtOld familiar to them as a symptom of airframe repair many times, and the durability of the used beyond causing fatigue fracture. Not phantom Knight crystal, crystal with muscle fatigue, fatigue fracture. It is not rare. However --... Just as a general overhaul
「 before they leave. Why do you suddenly, and the fatigue fracture? Funny, made a face at something done in this way, the 」
funny mustacheAdmiration for the boss. At said discomfort from the front part of the wreckage, and his intuition. How to break this machine, if different from what they know. Not only do the repair and maintenance work of the team. In the user misses is broken in the body, they can improve the structure of any measures. The cause of the trouble is that it is necessary to grasp its as far as possible. The name of the machine
「 goo.The soldiers... Ayahito night runner of John Dee... And what is that? " Muttering, too, and the boss is in front of the remains of soldiers ayahito Dietrich, summon. In the capital of Cistanche tubulosa defremery too heavy too, there is a section called the nobles. In the basic of domestic peers each territory, and I usually spend residence within the territory. At separately, so as to be participated in the activities and events in the capital, to participate in the National GovernmentIn the capital to set up a villa. At the place where those sections called noble villa. If not for the principal who own many of the place where the most quiet there. The door is too noble house in town, アーキッド belt route of twins. The Marquess of Lahti there used to be their father, the villa. They have the illegitimate child,The intension of the legal wife is quite serrati house and related activities as possible. At any time of year to come, and that this in itself before they now face to face with the Marquis Joachim serrati, there were a number of years. The twins at the villa to visit, guide and Joachim to study. Good at and furnishings in the study about the owner's personality gaudily, where reflects the tight atmosphere or air. TooAnd his father for the first time in years, I could face the twin of the tone color. We call them at Joachim identity document verification for a light, but was slightly open mouth. They also 」
「「……
「 long time no see Long time no see, your father 」」
「 cheerful. Irma and health 」
「? Yes. It is not one disease, the mother, and that 」
well and will remain in the atmosphere of hardness. AtSpeaking of the twins is somewhat neglected from the home position, such that said directly from his father. With simple and short contact time of the air in atmosphere of Joachim field control. From the
「 gameplay, but a story of an older paternal half-sister Stefania 」
gameplay - Twin it -- it was the name of the twins. A few months ago at the Baltic sales dispute, eventually had heard nothing after that they. AtSo this time I open to doubt and opportunity, but unexpected names for twins from Joachim. In
「 your acquaintance, who called エルネスティ・エチェバルリア? "
「！？... Yes 」
「 person? His father's compelling 」
speak words, they are puzzled and killed himself. In childhood, the ability to master the magic in the home only, and seems to be the greatest magicA lot of Phantom Crystal knight. At the contents seem very strange, but only to hear the way to deny without listening to.
「 so, as well as you have positive knight. From that story and gameplay 」
「, father, brother. " For unto you is good now. Will you really of El for querying purposes only in order to make it happen 」
heart beat called?When and why? At the will of the question in the face, after a little thought Joachim will be continued. For his distinguished service in the battle of
「 ベヘモス there name. But as I looked at the age of the ability to have... The 」
「 due to some kind of reward, according to the work in the future, ell, are properly evaluated!? " A
「 earlier. In the future, it depends on 」
at that time made the evaluation on risks and rewards, regardless of which it is not. AtIn the El person understand easily, but withdrew it convincing enough for twins. He
「（ I see you I see you, I ）」
until now that some believe that poor kid, but the story than ever to have very informal. Be strict in person at the man does not know the story. For now,
「 if his future results, some kind ofI want you to tell me first. I hope? " Found
「 if their father, as a master 」
el, which would surely have some results. At the l don't know what to do with it, it would in any of his father. It taught me to spell this for them, as a kind of favor. Ease the tense atmosphere at the time of his visit to the twins with happy expression, revealedHe was staring Joachim without changing its expression. I for one
「（ too well, I wrote two for Robo... " Back to the students of the university town of La Knight Reich, about a week after arriving at the school is closed. And a student at the injured, or concerned about the safety of children and parents to make sure it is safe to make time for it to come to the meeting. At a safe will have a student in his own way,But a person to make full use of time in here. He now -- Ernestine intently toward the desk just something to put down the paper. The other day to an audience with the king, he declared, and forge a phantom crystal knight to reflect his own knowledge. And he, when I carry is produced by the body in it. In the not quite well and to make
「（ tags Phantom Crystal knight after all of the ）」
He can now write any useful ideas to keep things as well. His Majesty King
「（ cut over to disapprove of what I did on this ）」
inkwell and pen, she wrote with ideas. Structural theory of lessons learned by the seat of the observed when others are moving, and based on the results of more than anything that moved his own experience and the feasibility of the many ideas were examined. AtIn the space of a gentle sunlight in the afternoon, with only slight play pen. Oh, and then
「（ because of twins is headed for a long time, and nothing ）」
desk to elaborate on the stiffness, greatly increased. Put your weight on it at the back, in a vague idea deeply and staring at the ceiling. From the actual
「（ can not see, I'd like to make a flight simulator, virtual device, but if he is. AtPhantom Crystal Knight management training, so do
「 bastards,This shit is busy at the time and increase the extra work it!! If you have a hand moving down time and move the mouth!! "
「 ゲフッ, boss! Hey, sorry now back to work!! " Too funny not to go all out to dwarf group, its fist to crush rocks. At the "master" and more than this, and I can't called dwarf the quarrel in two and back to work. But even in the
「 reshaping is seven, so that he 」
Here, the turtle and Rio ベヘモス wrecked are carried the remains of the Knights of the crystal. At the situation that most of the safe body skeleton and the central portion on the side of the school, it was unanimously decided rather than repair it. Certainly at the students belonging to the group of the development of knowledge and technology, which can build up from 1. At one time, however, it is necessary to newly built and systemic and seven minutes and a huge amount of work. AtChecked out but lost team personnel, aircraft maintenance crew is now ready for total war carried out of work. At the newly built, and relatively safe from the part in the assembly. The nature of the damage will be put off. Stop in front of a certain aircraft, this is the most
「（ ）」
last boss. Carried at the ruins which severely damaged, but the difference is that the metal inner ring body is decomposed as itself. AtMost of the places in the component units in a terrible condition, especially among the ruins were admitted. At this point, the reuse of sorcery and magic computer magus engine conversion furnace ether reactor not only description was miracle. However,
「 broken a little too nice as well as it remains on the 」
from his eyes. Pt and
「 magic out of mana. 」
and skeletal structure from collapsingStudents in listening to the murmur shake one's head. You surprised at what the gaffer, he couldn't understand.
「 huh? It is not uncommon, or not. Method for crushing converter magic won't... Why? " He said to the student's own words began to doubt daresay ruins. Yes, this remains at the magic transformation reactor is safe. In spite of some traces of disintegration of skeletal structures out of supply. AtFar the student to master the purchase of such as me, puzzled by the question at the same time.
「 uh... Whether it be in the palm シルバーナーヴ nerve silver line? Be fed up 」
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「「……
「 long time no see Long time no see, your father 」」
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「? Yes. It is not one disease, the mother, and that 」
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「 your acquaintance, who called エルネスティ・エチェバルリア? "
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- ข้อคิดที่ได้จากหนังเรื่องนี้คือ เลือดข้น
- And after that, she will think that she
- ฉันกลับมาแล้ว
- Forget me not important people
- He always get up early
- Those girls do not do fickety fick with
- ปลายทาง
- พระธาตุดอยสุเทพ
