世界は “色” で満ちている――
新堂道隆は、人の痕跡が視えてしまう体質を持っていた。
人の辿った道筋、物に残る気配を視るのはたまに便利ではあっても、煩わしいことも多かった。
ある時、一人暮らしに憧れる日々を送っていると、従姉妹が管理する “桜花荘” への誘いを受ける。
人の住まない古い建物。 誰にも気兼ねすることのない、新しい生活。
新天地に心躍らせる道隆を待っていたのは、“色” を持たない一人の少女だった。
「はじめまして。 あなたが新しい住人なのですね?」
人間なら誰しも見えるはずの “色” を持たない少女の存在。
「私は…… あなた方の言葉で言うなら、幽霊というモノです」
桜花 と名乗る少女との出会い。
幼なじみの親友に従姉妹たち。学園の先輩後輩も巻き込んで、春の季節を舞台に生涯忘れられない賑やかな日々が、今 幕をあげる。