確かにこの世には、ダークマター、ダークエネルギーなるものが存在すると考えられている。これらはいわゆる、物理法則が正しいことを証明するために存在しなければならない、理論上あるはずだとされる「みかけの物質」「みかけの数値」のことだ。
それを以て闇の力とするならば、作り出す術もある。数秘術で、虚数を用い、そのこの世には存在しえない数値の組み合わせで、存在しえないものを再現させればいいのだから。
だが、数学も発達していない世界で、近世代で発見されたその虚数という概念や「みかけの数値」などあるはずもないだろう。それに発生させられたとしても、闇魔法のような効果は決して望めるものではない。
もう一方の絶対の虚無――無明などは再現できるわけがないし、それにあの闇魔法にはアストラル・ボディに直接影響がある攻撃でもあった。ならば通常の考え方で割り出せるものではない。
術式に干渉する能力。光を遮る力。精神体に直接的にダメージを与えるアストラル・アタック。その様々な特性を併せ持つ単一の力など、果たしてこの世に存在するのだろうか。
そんなことを考える最中、自然と水明の口から笑いが漏れる。
「ふ、ふふふふふ……」