頭の中ではっきりと女性の声が響いた。甲高いようで低い、不思議な声だった。直感的に蛇の声だと気づいた金城はその場から動くこともできず血の海をただただ呆然と見つめた。
蛇は続けた。
――私はこの山の主だ。この木に棲み、この山の行く末を見守ってきた。だが、近頃はおまえたちのような細いふたつの車輪に乗った者で山が騒がしい。これではおちおちと眠ることもできない。よって、今からおまえに罰を与える。
そんな、理不尽な……と金城が思う間もなく、強い風が吹き上げてくる。その勢いで周囲に散った枝や葉っぱが舞い上がり、こちらへと向かってきた。あっと思った金城は、両腕を上げると、顔の前で重ねてぶつかるのを防いだ。