沈黙を最初に破ったのはゼニスだった。
会議の主導権は彼女に握られている。
「それで、どうするつもり?」
俺の目から見るに、ゼニスは極めて冷静だった。
浮気した夫に対してヒステリーも起こしていない。
ただ一発頬を張っただけだ。
パウロのほっぺちゃんには赤いもみじ模様がついている。
「奥様の出産をご助力した後、お屋敷をお暇させていただこうかと」
答えたのはリーリャだ。
彼女も極めて冷静だった。
この世界では、こういう事がよくあるのかもしれない。
雇い主にお手付きにされるメイド。
問題になり、屋敷から出ていく。
うん。
いつもならそんな不憫なストーリーには興奮する。
けど、さすがにこの空気ではピクリともしない。
俺にだって節操はあるのだ。
パウロと違ってな。