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→決めたいですね。
→また同じように、シュートを打つ機会は 訪れるよ。
人生には、 たいてい敗者復活戦 があるからね。 そこで、今度こそすばらしいゴールを決めればいいんだ
→お父さんは ホームランをかつ飛ばしてくださいよ。
→そうだな、僕はホームランだな
→お父さんは 割り箸バットを 豪快に振った。
→バックスクリーン 直撃 のな
→つまらないことを言って、僕たちは 笑い合った。 不思議なことに、僕は加地ことを 思い出していた。 あいつとも、こんなふうに笑ったっけ。お父さんと加地は全然似ていない。お父さんの方が、ずっと器用で軽やかな雰囲気を持っている。だけど、今のお父さんは、なぜだが加地に少し似ていた。
→今ね、家の中がよくないんだ。
→え…
→こんなことを、娘の彼氏に話すなんて変な話だけどね。妻とちょっと揉めててね。 あ、君とこの件を話したことは、奈緒子には秘密だよ
→はい、と僕は肯いた。