『オコサマ』
羽の誕生パーティに誘われた一同は
楽の家に向かう
小咲
「羽先生って今日で20歳になるんだっけ
不思議だよね
いつも先生として見慣れてる人が
今頃成人するって」
鶇
「実力ある首領でありながら
20歳という年齢には驚かされます
将来が楽しみな方ですよね、お嬢」
千棘
「…うん…」
鶇
「…?どうかなさったのですか?
浮かない顔をして…」
千棘
「…う!?ううんなんでもない」
羽の事を考える千棘
千棘
(…う~やっぱり少し苦手なのよね
良い人なのは分かってるんだけど
掴み所がないというか…
あの一件以来どうしても
意識しちゃって…)
楽の家の前に近づくと黒塗りの車が
大量に停まっており驚く小咲
背後には傷だらけのおじさんが居て
更に驚く小咲
小咲
「ビビビ…ビックリしたぁ…」
るり
「あの人も招待客かしら
どことなく日本のヤクザとは
雰囲気違うわね」
楽がやってくる
楽
「お~い皆こっちだこっち~
わりぃビックリしただろ
今日の為に叉焼会傘下の
ボス達が集まっててよ
手が足んなくて大変なんだよ」
千棘
「大変ねぇあんたも」
家に入る一同
羽が衣装を着ていた
羽
「…あ!皆いらっしゃ~い!
こんばんわ!今日は来てくれてありがとう
ゆっくり楽しんでってね」
千棘
(うう~…羽さんやっぱりキレイだな~
たった2つしか違わないのに
大人の魅力っていうか…)
羽
「あ~!万里花ちゃんも来てくれたんだ
ありがとう嬉しいよ~!キャ~♡」
いつも通りつーんとして言う万里花
万里花
「…私は楽様に会いに来ただけですが」
羽は今年の新成人代表に選ばれたらしい
小咲
「えっ!!そうなの!?すご~い!!」
鶇
「まぁこの歳で教員資格を持って
働いているんだ
当然と言えば当然だな」
羽
「う~荷が重いよ~ …ともかく今日は本当にありがとう
今日は儀礼的な事も多いから
退屈かもしれないけど
どうかゆっくりして行ってね」
一同
「は~い」
準備に勤しんでいる楽
千棘がそれを見つけて声をかける
ビクッとする楽
千棘
「あんたまだ忙しくしてるの?
私も手伝おうか?」
楽
「え…!?あ…あーいや…その…
だっ大丈夫大丈夫!
準備だってもう終わるし
何よりお前はお客様だろ?
気にせず楽しんでけって…!」
そそくさと準備作業に戻る楽
千棘
(…あれ?なんか今…
避けられたみたい…な…?
そういえば昨日も…てゆーか
一昨日のデートの後から
どこかおかしいような…
私…何かしたっけ…)
誕生パーティは進んでいく
楽
「…ん?…橘、お前ちょっと
顔色悪くねぇか?」
万里花
「あ、楽様…
いえ…ただのいつもの軽い貧血ですよ
心配症ですね楽様は」
楽
「…心配くらいするっつの
どうする?別室で休むか?」
2人きりと思った万里花は即答する
万里花
「はい行きます!」
万里花は楽の腕にくっついていく
その光景が目に入った千棘
千棘
(あっ…!あ~!!楽の奴…!!
私の事は避けてるクセに
万里花とはあんな親しげに…!!)
苛立った千棘は無意識で、そびえ立つ
巨大ケーキを物凄いスピードで食べる
千棘
(ムキ~!!何よ何よ!!
あんな態度とるの私にだけって事!?
人の気も知らないでデレデレしちゃって
あっったまくる~!!
ふん!!どうせ私はお子様で
暴力的な女の子ですよーだ!
何があったか知んないけど…
そんな露骨に態度変えなくたっていいじゃ…)
小咲
「わわわ千棘ちゃん危ない!!
上…!!上~!!」
千棘
「?上?」
バランスを保てなくなったケーキが倒れてくる
千棘のすぐ後ろにいた羽にも被害が…
汚れたのでお風呂に入る事になった2人
千棘
「…うう~ごめんなさい羽さん
私のせいで…」
羽
「いいのいいの気にしないで
ケガがなくて良かったわ」
千棘
「でも…羽さん今日主役だったのに…」
羽
「大丈夫だよ
必要な儀式は終わってたし
むしろキュークツな
懇親の場から抜け出せて
感謝してるくらいかな」
笑顔でそう言われてもまだ少し
落ち込んでいる様子の千棘
千棘
(…これは気を遣って
くれてるんだろうなぁ…)
羽
「…今日は来てくれてありがとうね
千棘ちゃん
来てくれないかもって思ってた
前に一度宣戦布告じみた事
しちゃったでしょ?
あれ以来千棘ちゃん、
私の前だと落ち着かない様子だったから…
あ~あ、こんな日が毎日続けばいいのにな
そしたらもっと皆と居られるのに…
千棘ちゃんもこの間みたいに
また泊まりに来て欲しいな
千棘ちゃんなら毎日だって
大歓迎だよ~」
千棘
「え!?いや…私は…
…羽さんはどうして…そう…」
羽
「…?」
千棘
「羽さんは本当に楽の事が
すっ…好きなの?
だっ…だってそうでしょ?
羽さんは私が楽の事好きって知ってるし
それってライバルって事で…
なのに羽さんはぬけがけしようとするでもなく
私の事もよく誘ってくれるし…
その…よく分かんないってゆーか…」
羽
「…もちろん好きだよ
でもね、千棘ちゃんの事も
同じくらい好きなんだ
千棘ちゃんや万里花ちゃん…
小咲ちゃんや鶇ちゃんの事が
本当に同じくらい大好きなの
楽ちゃんの事を想う気持ちは
もちろん真剣だよ?
想いの強さなら誰にも負けない
って思ってる…
でも…同じくらい楽ちゃんの事を
想ってくれるのなら…
結ばれるのが千棘ちゃんや万里花ちゃんでも
いいって思っちゃうの…」
千棘
「…!」
羽
「10年前からの大切な絆…
私にとってはとても貴重で…
かけがえなくて…
皆と再会してその想いは
もっと強くなって…
わがままかもしれないけど
本当に心の底から皆が幸せに
なれればいいのにって思っちゃうの
そしたら…とても
ぬけがけする気になれなくて…変だよね
自分でもバカな事言ってるって
分かってるんだけど…」
千棘
「…ううん、そんなことないです…」
千棘
(…そうか、だから羽さんは羽さんなんだ…
大人なんだなぁ…私なんかと違って…)
万里花は縁側で風にあたっている
楽
「…どうだ具合は?」
万里花
「平気です、ただの貧血ですもの
じっとしてれば治りますわ」
楽
「…しかし考えてみるとお前
今日よく来てくれたな
なんか羽姉のこと
嫌ってるっぽいのに」
万里花
「嫌っていますよ
今日は楽様に会いにきただけですから」
楽
「…ともかくこれで羽姉も成人かぁ
まぁ元々大人びた人ではあったけど」
万里花
「あら、それは違いますわ楽様
あの人が誰より1番子供です」
楽
「…へ?」
万里花
「あの人はずっと頭の中に
お花畑が咲いているんです
ちょっと色々と小器用なせいで
気付きにくいかもしれませんが
基本的には子供です
自分の中の本当の気持ちにも気付かず…
傷付く覚悟も傷付ける覚悟もない中途半端な人
だから嫌いなんですあの人のこと…
…さて、あんな人の話をしていたせいで
喉が渇いてきましたわ
私飲み物を取ってきます」
楽
「あ、だったらオレが…」
万里花
「楽様にばかり親切にして頂いては
不公平ですよ
楽様の分も何か取ってきますね」
お風呂から上がり、髪をふきながら歩く羽
羽
(…さてとそろそろお開きの時間かな
挨拶くらいきちんとしないと)
そこに現れる夜
夜
「…待つね首領」
羽
「あら夜ちゃん、どうしたの?
今日はずっと見かけなかったけど…」
夜
「…今日は首領に大事な話あるね
心して聞くいいよ」
羽
「…その前フリから不吉でない話を
聞いた事がないけれど
まぁいいやどうぞ…」
夜
「首領に縁談が来てるね」
ちょうど飲み物を持って
歩いてきた万里花の耳にも
その話が聞こえてしまう
足を止める万里花
夜
「それも格別優良物件ね
家柄良し能力良し
あのガキとは比べ物ならんね
結婚するいいよ
断る権利無いね」
羽
「…え?」
煽り
「時は待たず、各々を決断へと運んで行く」