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#26: 工房へいこう「そら、見つけたぜ」「エル君確保ー！！」「えーと
#26: 工房へいこう
「そら、見つけたぜ」
「エル君確保ー！！」
「えーと、キッド、アディ？ 何故こんなところにいるのですか」
バトソンと別れ、ライヒアラ騎操士学園を目指して移動していたエルは、途中でオルター兄妹に捕まっていた。
二人とも現時点でエルより頭一つ分背が高いため、両腕をそれぞれ持ち上げるようにして捕まえるとエルの体が完全に宙に浮く。
エルの銀髪も相まって、まるで連行される某宇宙人状態だ。この世界に宇宙人がいるかは不明だが。
「いや、此処にいるのは単に偶然なんだけどよ」
「見つけたからには捕まえないとね！」
「え？ 僕は珍獣か何かですか？」
「似たようなもんだろ。あー、んで、どこに行こうとしてたんだ？」
二人の間でぶらーんと浮いたエルが観念したように溜息を吐く。
「いま学園では壊れた幻晶騎士シルエットナイトの修理が行われているはずですから。
ちょっと見学に行こうかと言うところです」
「そうなんだ。じゃ、このまま学園まで行っちゃおう！」
「二人とも、行くのはいいですけどその前に離してください」
そうして３人は授業のある日でもないのに学園へと辿り着いていた。
しばしば騎操士学科に出入りしているエルにとって、この場所は勝手知ったる何とやらである。
迷いなく目的地にたどり着くと、慌しく作業に勤しむ整備科の生徒達の邪魔をしないように、こっそりと工房の内部へと侵入する。
工房の内部は喧騒に満ちていた。
槌を振るう音、部品を吊り上げるクレーンの滑車の音、怒鳴り声、そして幻晶騎士の駆動音。
エルにとっては組み上げ作業を近くで見学したいのはやまやまだったが、鬼気迫る様子で作業する整備科の生徒達を見ていると、邪魔をするのは流石の彼でも気が引ける。
そのため、勢い作業の行われていない方向へと進むことになる。
彼らはまだ作業の行われていない機体の前に来ていた。
そこに据えられた幻晶騎士整備用の巨大な椅子の上には、天井からクレーンで吊るされた残骸としか表現できない金属の塊が鎮座している。
恐らくは幻晶騎士の胴体部なのだろう。
しかし外装がひしゃげ中身は骨格から歪んでいるため、エルはともかく双子はそれが一体何なのか、即座には把握できなかった。
それが置かれた場所、そしてこびり付くように僅かに残る装甲の紅い塗装がヒントとなり、彼らは漸くそれの正体に思い至る。
「こいつが……その、エルが乗ったグゥエール、ってやつか？」
じっと残骸を見上げるエルの横顔を伺いつつ、キッドがぽつりと問いかける。
「ええ。この装甲や、壊れ方には見覚えがあります。
本当に派手に壊れたことで……さすがに修理は後回しにされたようですね」
アディは言葉もなく、その完膚なきまでに破壊された残骸に見入っていた。
目の前のそれは、万の言葉よりも尚雄弁に、陸皇亀ベヘモスとの戦いの激しさを物語っている。
それは幻晶騎士を操ったことのない双子にも、容易に想像できるほどだった。
キッドもアディも、以前にエルの話を聞いて、彼がどれほどの危険に立ち向かってきたか、わかっているつもりだった。
しかし現実に目の前に示された残骸を見て、その想像以上の姿に言葉を失っていた。
まるで飴細工のように滅茶苦茶に歪んだ巨大な金属の塊。
それを為しえる力とは、果たしてどれ程強力なことであろうか。
それに立ち向かうという事は、果たしてどれ程危険なことであろうか――。
キッドは自分がいつの間にか血が引き真っ白になるほど強く拳を握り締めていた事に気付いた。
アディの目には、うっすらと涙すら浮かんでいる。
ほんの少し何かが違っていれば、エルはあの戦いで死んでいたかも知れない。
唐突に思い至ったその考えは、彼らの背筋を一瞬で寒からしめた。
何よりも、エルがそれだけの危険に立ち向かっている間、知らなかったとはいえ何もせずに居た自身への憤りが、彼らを内側から圧迫する。
言葉を失ったかのような二人の耳へと、エルの漏らした微かな呟きが届く。
「……しい」
「え？」
「壊れた機体もまた、美しい……」
「「……」」
ほう、と溜息をつくエルの横顔はまさに恍惚のそれ。
二人の表情が一気に曰く言いがたい微妙なものになっていく事に気付かず、エルは言葉を続けている。
「そう、形あるものが崩れ、後には残骸だけが残る……これが詫び寂びというもの。
この漂う寂寥感、廃れたものの想い……ふつくしい……」
双子の視線が一瞬だけ交錯し、第１３２回オルター兄妹会議は満場一致を見て無言のままにエルへの攻撃を決定した。
「！？ いっ……いひゃいいひゃい、いひはりらにするんれふは」
両側から頬をつねられたエルは珍しく涙目で抗議の声を上げる。
それを聞く双子は無表情で頬をつねり続けていた。
「やれやれ、どこのどいつだ、こんなとこではしゃいでやがるガキは」
しばらく頬をつねり続けられた後、漸く開放されたエルが両頬を押さえて二人に抗議していると後ろから声がかかる。
彼らが振り返るとそこには、頑強な体躯のドワーフ族……親方の姿があった。
野太い親方の声は、騒音の絶えない工房内でもよく響く。
「なんだ、銀色坊主エルネスティじゃねぇか、まった入り込んでやがるのか。
おめぇも好きだな、おい。あんま作業の邪魔すんじゃねぇぞ」
しかし、エルはやや呆れた雰囲気の親方を見てもおらず、その視線は親方の隣にいる人物へと注がれていた。
そこに居るのは幽鬼も斯くやとばかりの蒼白な顔色を浮かべ、目の下には色濃く隈が残り、以前は丁寧に撫で付けられていた金髪は見る影もなくボサボサとなった――ディートリヒだった。
一瞬記憶の中のディートリヒと印象が合わず、エルは思わず目を擦るものの、何度見直しても目の前のディートリヒはボロボロだった。
その雰囲気にも覇気はおろか、尊大ともいえた自信の一欠けらも残ってはおらず、ただ焦燥だけが感じられる有様だ。
「え、えーと……ディートリヒ……先輩？」
微妙に引き攣った笑顔で問うエルも自信がなさそうだ。
それくらい、今のディートリヒは変わり果ててしまっている。
「…………ああ、エルネスティか」
「え、えっと、一体何があったのですか？」
エルの言葉にディーは軋むように笑顔を作り、錆び付いたような声で話し始める。
「ふ、ふふ……少し……そう、少し、ちょっと、だ。
最近よく悪夢を見るんだよ……医務室の悪魔が、来る……。
おかげで、最近、寝不足でね。
そう、気を抜くと、奴が、く、やつが、奴がぐぶべっ」
喋っている間に悪夢の記憶がよみがえったのか、徐々に目の焦点が怪しくなり、世界の向こう岸へと届きかけたディートリヒを親方のチョップが引き戻す。
ディートリヒはしばらくその場で悶絶していたが、親方の一撃が効いたのかちゃんと正気に返っていた。
「ぬごぉぉぉ……ハッ、私は今どこへ……。
うおっほん！
まぁ私の事は良い。それで、エルネスティも居るという事は、君も説明に呼ばれたのか。
それなら手間が省けそうだな」
「ああ？ 銀色坊主が何を説明するんだ？」
「何って、グゥエールが壊れた原因が知りたいのだろう？
だからその原因・・を呼んだんじゃないのかい？」
彼はしばらくの間怪訝そうにディートリヒとエルの顔を交互に見ていたが、言葉の意味を理解するにつれ、むしろ怪訝な表情が深まってゆく。
「待て、ディートリヒ。それだと銀色坊主が原因でグゥエールが壊れたように聞こえるぞ」
「えっ？ その通りじゃないか………もしかして、知らずに呼んだのかい？」
「いや、そもそも呼び出したんじゃなくここに勝手に居たんだがな」
「「……え？」」
微妙に噛み合わない会話に全員が首を捻る。
数瞬の間を空けて、ディートリヒがぽん、と手を打った。
「ああ、これはひょっとして非常に余計なことを口走ったのかね？」
「見事にその通りだと思いますよ」
「まぁ、何でも良いが」
親方は長く伸ばした髭を撫でつけながら、二人に向けてギロリと鋭い視線を送る。
「この際、洗いざらい説明してもらおうか」
全身の筋肉を唸らせながらにたりと笑う親方に反論できる者は、その場にはいなかった。
エルがグゥエールを操縦していた時、ディートリヒもその場にはいたものの、彼はエルが行った操作の具体的な内容を把握しているわけではない。結局は説明の大半をエルが受け持つことになった。
しかしいざ説明を進めると、間を置かず問題へと突き当たる。
「…………すまんがもう一度言ってくれ」
「ええ、ですから。僕が乗っても操縦桿や鐙に手足が届きませんから。
魔導演算機マギウスエンジン内の魔法術式スクリプトを転写して、自分で演算して・・・・・・・幻晶騎士を動かしたのですけど」
豊かな髭を蓄え、普段から厳いかめしい表情を崩さない親方が珍しいことに目を見開いて驚愕している。
それも無理なからぬことで、そもそも幻晶騎士を動かす魔法術式は到底人一人の力では制御しきれないからこそ魔導演算機というものが存在するのである。
それを使わず自力だけなどと言われても、普通は信じられるものではない。
実際に背後でグゥエールの動きを見たディートリヒはともかく、親方が半信半疑の表情となってゆくのを誰が止めれようか。
「……百歩譲って、それはまぁいいとしよう。
それで？ それとこいつが魔力マナの途絶で自壊してるのと、どういう関係があるんだ？」
「つまり魔導演算機を代替すると言う事は、ありとあらゆる機能を自由に操作できると言うことです。
それでベヘモスにトドメをさす際に安全装置リミッターを解除して、機体の持つ全ての魔力を攻撃に回しまして。
構造の強化を維持できないほど魔力を使ってしまったのですよね」
「無茶苦茶じゃねぇか！！ そんなもん如何やって対策しろって言うんだ！！
そもそもが対策としての安全装置だってのに」
口調は荒くとも、親方はエルのしでかした無茶にしきりに頭を振っている。
彼が吐いた、諦めを多量に含む吐息はどこまでも深かった。
「確かに。それについてはこの操作は僕くらいしかやらないでしょうし、対策はいいのでは？」
「当たり前だ！ そんなもんぽんぽんと出来てたまるか！！
ああもういい、後は、だ。脚の結晶筋肉が疲労断裂してやがったが、アレもお前のせいか。
いやお前のせいだな？」
「間違っては居ませんが……何だか言い方が釈然としません」
「うるせぇ、やっぱりお前のせいか！！」
「あれは、直接制御フルコントロールの反動ですよ。
幻晶騎士のレスポンスを最大にして、普段想定される以上の負荷をかけてしまったために限界を超えて、断裂してしまったのです」
「お前なぁ……全身張り替えなんぞやった日にゃ、普通一月は無事に動くってのによ」
親方はついに額に手を当て天を仰いだ。もはやここまで来ては処置なし、の一言に尽きる。
この時点でも十分に頭が痛いが、彼はふと最悪の可能性に気付いてしまった。
「するってぇと何か、坊主が本気出せばどいつもこいつも壊れるってのか？」
「現時点ではその可能性が高いですね。
騎士団のカルダトアならば結晶筋肉の品質が高いので、もう少し長持ちはするかもしれませんけど」
結局は負荷の問題ですしね、などとのんびりと呟くエルを横目に、親方は渋い表情になる。
「ちっ、そいつぁ改善しねぇと鍛冶師の面目ってもんが立ちゃしねぇ。
とは言えそんなもんを今すぐどうにかする手段なんてねぇしな」
これまでにこんな無茶をした騎操士など存在しないため、対策が存在しないのも当然と言えば当然の話だ。
その上これほどの問題に対応するためには応急処置ではなく、相当根本的な部分での対策が必要となる。とても一朝一夕に改善できるものではなかった。
一先ずは今回の修理での対策は見合わせよう、後から対応策を練れば良い……そう親方は現実的な方針を心の中で決めようとしていたが、あいにくとその場には非現実的を地でいく存在が居る。
「ある程度の対策は考えてあります。要は結晶筋肉の耐久性を上げればいいのですから」
さらりと言ってのけたエルに、全員の視
「そら、見つけたぜ」
「エル君確保ー！！」
「えーと、キッド、アディ？ 何故こんなところにいるのですか」
バトソンと別れ、ライヒアラ騎操士学園を目指して移動していたエルは、途中でオルター兄妹に捕まっていた。
二人とも現時点でエルより頭一つ分背が高いため、両腕をそれぞれ持ち上げるようにして捕まえるとエルの体が完全に宙に浮く。
エルの銀髪も相まって、まるで連行される某宇宙人状態だ。この世界に宇宙人がいるかは不明だが。
「いや、此処にいるのは単に偶然なんだけどよ」
「見つけたからには捕まえないとね！」
「え？ 僕は珍獣か何かですか？」
「似たようなもんだろ。あー、んで、どこに行こうとしてたんだ？」
二人の間でぶらーんと浮いたエルが観念したように溜息を吐く。
「いま学園では壊れた幻晶騎士シルエットナイトの修理が行われているはずですから。
ちょっと見学に行こうかと言うところです」
「そうなんだ。じゃ、このまま学園まで行っちゃおう！」
「二人とも、行くのはいいですけどその前に離してください」
そうして３人は授業のある日でもないのに学園へと辿り着いていた。
しばしば騎操士学科に出入りしているエルにとって、この場所は勝手知ったる何とやらである。
迷いなく目的地にたどり着くと、慌しく作業に勤しむ整備科の生徒達の邪魔をしないように、こっそりと工房の内部へと侵入する。
工房の内部は喧騒に満ちていた。
槌を振るう音、部品を吊り上げるクレーンの滑車の音、怒鳴り声、そして幻晶騎士の駆動音。
エルにとっては組み上げ作業を近くで見学したいのはやまやまだったが、鬼気迫る様子で作業する整備科の生徒達を見ていると、邪魔をするのは流石の彼でも気が引ける。
そのため、勢い作業の行われていない方向へと進むことになる。
彼らはまだ作業の行われていない機体の前に来ていた。
そこに据えられた幻晶騎士整備用の巨大な椅子の上には、天井からクレーンで吊るされた残骸としか表現できない金属の塊が鎮座している。
恐らくは幻晶騎士の胴体部なのだろう。
しかし外装がひしゃげ中身は骨格から歪んでいるため、エルはともかく双子はそれが一体何なのか、即座には把握できなかった。
それが置かれた場所、そしてこびり付くように僅かに残る装甲の紅い塗装がヒントとなり、彼らは漸くそれの正体に思い至る。
「こいつが……その、エルが乗ったグゥエール、ってやつか？」
じっと残骸を見上げるエルの横顔を伺いつつ、キッドがぽつりと問いかける。
「ええ。この装甲や、壊れ方には見覚えがあります。
本当に派手に壊れたことで……さすがに修理は後回しにされたようですね」
アディは言葉もなく、その完膚なきまでに破壊された残骸に見入っていた。
目の前のそれは、万の言葉よりも尚雄弁に、陸皇亀ベヘモスとの戦いの激しさを物語っている。
それは幻晶騎士を操ったことのない双子にも、容易に想像できるほどだった。
キッドもアディも、以前にエルの話を聞いて、彼がどれほどの危険に立ち向かってきたか、わかっているつもりだった。
しかし現実に目の前に示された残骸を見て、その想像以上の姿に言葉を失っていた。
まるで飴細工のように滅茶苦茶に歪んだ巨大な金属の塊。
それを為しえる力とは、果たしてどれ程強力なことであろうか。
それに立ち向かうという事は、果たしてどれ程危険なことであろうか――。
キッドは自分がいつの間にか血が引き真っ白になるほど強く拳を握り締めていた事に気付いた。
アディの目には、うっすらと涙すら浮かんでいる。
ほんの少し何かが違っていれば、エルはあの戦いで死んでいたかも知れない。
唐突に思い至ったその考えは、彼らの背筋を一瞬で寒からしめた。
何よりも、エルがそれだけの危険に立ち向かっている間、知らなかったとはいえ何もせずに居た自身への憤りが、彼らを内側から圧迫する。
言葉を失ったかのような二人の耳へと、エルの漏らした微かな呟きが届く。
「……しい」
「え？」
「壊れた機体もまた、美しい……」
「「……」」
ほう、と溜息をつくエルの横顔はまさに恍惚のそれ。
二人の表情が一気に曰く言いがたい微妙なものになっていく事に気付かず、エルは言葉を続けている。
「そう、形あるものが崩れ、後には残骸だけが残る……これが詫び寂びというもの。
この漂う寂寥感、廃れたものの想い……ふつくしい……」
双子の視線が一瞬だけ交錯し、第１３２回オルター兄妹会議は満場一致を見て無言のままにエルへの攻撃を決定した。
「！？ いっ……いひゃいいひゃい、いひはりらにするんれふは」
両側から頬をつねられたエルは珍しく涙目で抗議の声を上げる。
それを聞く双子は無表情で頬をつねり続けていた。
「やれやれ、どこのどいつだ、こんなとこではしゃいでやがるガキは」
しばらく頬をつねり続けられた後、漸く開放されたエルが両頬を押さえて二人に抗議していると後ろから声がかかる。
彼らが振り返るとそこには、頑強な体躯のドワーフ族……親方の姿があった。
野太い親方の声は、騒音の絶えない工房内でもよく響く。
「なんだ、銀色坊主エルネスティじゃねぇか、まった入り込んでやがるのか。
おめぇも好きだな、おい。あんま作業の邪魔すんじゃねぇぞ」
しかし、エルはやや呆れた雰囲気の親方を見てもおらず、その視線は親方の隣にいる人物へと注がれていた。
そこに居るのは幽鬼も斯くやとばかりの蒼白な顔色を浮かべ、目の下には色濃く隈が残り、以前は丁寧に撫で付けられていた金髪は見る影もなくボサボサとなった――ディートリヒだった。
一瞬記憶の中のディートリヒと印象が合わず、エルは思わず目を擦るものの、何度見直しても目の前のディートリヒはボロボロだった。
その雰囲気にも覇気はおろか、尊大ともいえた自信の一欠けらも残ってはおらず、ただ焦燥だけが感じられる有様だ。
「え、えーと……ディートリヒ……先輩？」
微妙に引き攣った笑顔で問うエルも自信がなさそうだ。
それくらい、今のディートリヒは変わり果ててしまっている。
「…………ああ、エルネスティか」
「え、えっと、一体何があったのですか？」
エルの言葉にディーは軋むように笑顔を作り、錆び付いたような声で話し始める。
「ふ、ふふ……少し……そう、少し、ちょっと、だ。
最近よく悪夢を見るんだよ……医務室の悪魔が、来る……。
おかげで、最近、寝不足でね。
そう、気を抜くと、奴が、く、やつが、奴がぐぶべっ」
喋っている間に悪夢の記憶がよみがえったのか、徐々に目の焦点が怪しくなり、世界の向こう岸へと届きかけたディートリヒを親方のチョップが引き戻す。
ディートリヒはしばらくその場で悶絶していたが、親方の一撃が効いたのかちゃんと正気に返っていた。
「ぬごぉぉぉ……ハッ、私は今どこへ……。
うおっほん！
まぁ私の事は良い。それで、エルネスティも居るという事は、君も説明に呼ばれたのか。
それなら手間が省けそうだな」
「ああ？ 銀色坊主が何を説明するんだ？」
「何って、グゥエールが壊れた原因が知りたいのだろう？
だからその原因・・を呼んだんじゃないのかい？」
彼はしばらくの間怪訝そうにディートリヒとエルの顔を交互に見ていたが、言葉の意味を理解するにつれ、むしろ怪訝な表情が深まってゆく。
「待て、ディートリヒ。それだと銀色坊主が原因でグゥエールが壊れたように聞こえるぞ」
「えっ？ その通りじゃないか………もしかして、知らずに呼んだのかい？」
「いや、そもそも呼び出したんじゃなくここに勝手に居たんだがな」
「「……え？」」
微妙に噛み合わない会話に全員が首を捻る。
数瞬の間を空けて、ディートリヒがぽん、と手を打った。
「ああ、これはひょっとして非常に余計なことを口走ったのかね？」
「見事にその通りだと思いますよ」
「まぁ、何でも良いが」
親方は長く伸ばした髭を撫でつけながら、二人に向けてギロリと鋭い視線を送る。
「この際、洗いざらい説明してもらおうか」
全身の筋肉を唸らせながらにたりと笑う親方に反論できる者は、その場にはいなかった。
エルがグゥエールを操縦していた時、ディートリヒもその場にはいたものの、彼はエルが行った操作の具体的な内容を把握しているわけではない。結局は説明の大半をエルが受け持つことになった。
しかしいざ説明を進めると、間を置かず問題へと突き当たる。
「…………すまんがもう一度言ってくれ」
「ええ、ですから。僕が乗っても操縦桿や鐙に手足が届きませんから。
魔導演算機マギウスエンジン内の魔法術式スクリプトを転写して、自分で演算して・・・・・・・幻晶騎士を動かしたのですけど」
豊かな髭を蓄え、普段から厳いかめしい表情を崩さない親方が珍しいことに目を見開いて驚愕している。
それも無理なからぬことで、そもそも幻晶騎士を動かす魔法術式は到底人一人の力では制御しきれないからこそ魔導演算機というものが存在するのである。
それを使わず自力だけなどと言われても、普通は信じられるものではない。
実際に背後でグゥエールの動きを見たディートリヒはともかく、親方が半信半疑の表情となってゆくのを誰が止めれようか。
「……百歩譲って、それはまぁいいとしよう。
それで？ それとこいつが魔力マナの途絶で自壊してるのと、どういう関係があるんだ？」
「つまり魔導演算機を代替すると言う事は、ありとあらゆる機能を自由に操作できると言うことです。
それでベヘモスにトドメをさす際に安全装置リミッターを解除して、機体の持つ全ての魔力を攻撃に回しまして。
構造の強化を維持できないほど魔力を使ってしまったのですよね」
「無茶苦茶じゃねぇか！！ そんなもん如何やって対策しろって言うんだ！！
そもそもが対策としての安全装置だってのに」
口調は荒くとも、親方はエルのしでかした無茶にしきりに頭を振っている。
彼が吐いた、諦めを多量に含む吐息はどこまでも深かった。
「確かに。それについてはこの操作は僕くらいしかやらないでしょうし、対策はいいのでは？」
「当たり前だ！ そんなもんぽんぽんと出来てたまるか！！
ああもういい、後は、だ。脚の結晶筋肉が疲労断裂してやがったが、アレもお前のせいか。
いやお前のせいだな？」
「間違っては居ませんが……何だか言い方が釈然としません」
「うるせぇ、やっぱりお前のせいか！！」
「あれは、直接制御フルコントロールの反動ですよ。
幻晶騎士のレスポンスを最大にして、普段想定される以上の負荷をかけてしまったために限界を超えて、断裂してしまったのです」
「お前なぁ……全身張り替えなんぞやった日にゃ、普通一月は無事に動くってのによ」
親方はついに額に手を当て天を仰いだ。もはやここまで来ては処置なし、の一言に尽きる。
この時点でも十分に頭が痛いが、彼はふと最悪の可能性に気付いてしまった。
「するってぇと何か、坊主が本気出せばどいつもこいつも壊れるってのか？」
「現時点ではその可能性が高いですね。
騎士団のカルダトアならば結晶筋肉の品質が高いので、もう少し長持ちはするかもしれませんけど」
結局は負荷の問題ですしね、などとのんびりと呟くエルを横目に、親方は渋い表情になる。
「ちっ、そいつぁ改善しねぇと鍛冶師の面目ってもんが立ちゃしねぇ。
とは言えそんなもんを今すぐどうにかする手段なんてねぇしな」
これまでにこんな無茶をした騎操士など存在しないため、対策が存在しないのも当然と言えば当然の話だ。
その上これほどの問題に対応するためには応急処置ではなく、相当根本的な部分での対策が必要となる。とても一朝一夕に改善できるものではなかった。
一先ずは今回の修理での対策は見合わせよう、後から対応策を練れば良い……そう親方は現実的な方針を心の中で決めようとしていたが、あいにくとその場には非現実的を地でいく存在が居る。
「ある程度の対策は考えてあります。要は結晶筋肉の耐久性を上げればいいのですから」
さらりと言ってのけたエルに、全員の視
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# 26: Let's go to the workshops"Perhaps, I found!""El you ensure ー! 」"Well, kid, Adi? So why is that? ' El Batson, was moving toward Reichel ryuki Misao's school had stuck to alter a brother and sister on the way. Lift the arms, each for two at El taller head higher than the catch and El body totally float in the air. El Sara, will be taken as one's alien status. In this world alien what is unknown but.But no, here are just a coincidence!"'"Ugh from found and sounds! 」' EH? I is a rare animal or something? 」"Looks like it would be. Uh, I, I've been and where you go? 」 Fat between the two men was-I and vomits tamaiki resigned El limbo."From the now broken at school phantom Crystal silhouette Knight of the repair should have done. Where to go Hey '"That's right. Well, this remains until the school go let! 」"But is good for two people and also to go away ago its' Then three people teaching not one day had ceased to school. El often hung around Mount Operations Department, this place I know rants what and from that. Without hesitation so as not to interfere with students of the maintenance department who work hurriedly to get to your destination, and secretly invade and inside the Studio. Inside the Studio was filled with hustle and bustle. Hammering sound, pulleys of crane parts to raise sounds, sounds of yelling, and phantom Crystal Knight. Feel intimidated even though he is disturbed and watching the students in the maintenance department to work with was a subscription you want near the tour work assembled for El, but ghastly scene. For the forward direction and momentum of work not done; They had come ago the aircraft is not working yet. Chunks of metal and debris were suspended from the ceiling by crane onto the phantom Knight of servicing a huge Chair was placed there, but cannot be expressed, is sitting. Perhaps a torso phantom Crystal Knight? But couldn't figure out instantly for popped exterior, inside is distorted from the skeleton, El is apart from twins it what?. Red where it was located, and armor remain slightly gross to not paint tips, they at last....... it's true identity."This guy is. Took part, El guueeru, what she's saying? 」 Visit profile El still look up at the wreckage, while Kidd is Po lifted the mindset.' Yes. This armor, or the more fragile may seem familiar. By broken on really loud. Indeed the later repairs. " ADI without words, that wiped out the stared at the wreckage was destroyed. In front of it is more than 10,000 words, eloquently tells fierce battle with Crown land turtle Nergal. It was easy to imagine never manipulated the phantom Crystal Knight twins, even. It was going to know the kid and Adi, previously heard of El, he fought against much of the risk, or. But look at the wreckage indicated in front of reality, had lost his imagination more than words. Like candy craft twisted mess a huge metal ingots. Play power it can be done and how powerful? Things that confront it played in that much dangerous--? Kid yourself quietly pull blood Immaculate, indeed strongly clasped fist, noticed a thing. In the eyes of the Adi, and float even tears. Maybe just a little something different, El died in that battle. I realized the nowhere the thought that their spine was cold in an instant. Resentment to themselves in ignorance while confronting danger it's El than anything else, do nothing to squeeze them from inside. Reach El-leaked to the ears of two people are lost for words, a faint whimpers.「…… New '' EH? 」See also the beautiful broken fuselage...... "「「……」」 And more, truly ecstatic it's profile of El sigh. Two people look at once said don't realize things will become hardly subtle, continues the words El."So the shape is the only wreckage left after... Something that this apology and Sabi. This floating lonely and obsolete thoughts are... Hutu comb..... " Twins look and mixed just for a moment, 132 all-terrain brother and sister conference saw unanimous attacks on El decided to remain silent.「！？ Not gone... Not lamplight nice Nya tips Nya,. lamplight beam et to I and of truth ' El cheeks were pinched from both sides is uncommon raise voice protest with teary eyes. The twins hear it deadpan, had been pinch cheeks. "Whew, glee at such a place where the devil is, the kid is ' And protest that two people holding both cheeks were continued for a while pinch cheeks and then finally opened El takes a voice from behind. They look back and there is the dwarf family's robust physique... Was the boss. Their master's voice is booming even constant noise in the Studio."It's a silvery shaved ernesti!?! or got into the. You order, it's like baby. I work way don't know! " But not even El seen boss of the atmosphere somewhat amazed, its eyes were poured to the person's boss next to. And there is thus approaching and just of her pale complexion Kuma congregated in the eyes, previously been 撫de付ke politely, gold hair is without a shadow became unkempt--Dietrich was. Moment impressions and memories of Dietrich, El instinctively rub the eye, but many times even before Dietrich was battered. Confidence in its atmosphere is ambition, let alone arrogantly assumed even one fragment also left it's complaints and could feel the impatience just happened to."Well, uh... Dietrich. Seniors? 」 El asks with a smile subtly overstretched also seems no confidence. No, now gone unquestioned.「………… Oh, ernesti? '"Eh, eh, what happened?? 」 In the words of El Dee made smile like busting and start talking in a voice like a rusty."Whew, hehehe. A little bit. So a little bit, Hey,. I'm recently good see the nightmare. Speed demon... Thanks to the recently, with lack of sleep. So, pull out, and he is the and Guy, one is gubu mildew. " Dietrich, was sent to the other side of the world and revived nightmare memories while talking or gradually became suspicious eyes focus pulls back the boss chops. What master stroke edgy is Dietrich was in situ lesbian couples for a while, but had returned to sanity."Gone are infront. Hah, I now where to... Would I book! Good thing for me. So, ernesti also but it was called description you too? If it's so save yourself the trouble of '' Ah? I'm describing what silver shaved? 」' Will cause broken guueeru what I want to know? So, the cause-I'm not called?? 」 To understand the meaning of the word have he was doubtful for a while had alternating faces of Dieterich and El as, rather it deepens a questioning look."Wait, Dietrich. Silver shaved is caused by broken guueeru sound and it's! "' EH? It's not exactly... Called did you know? 」"I'm not no, originally called, was on hand here! '「「…… EH? 」」 The delicately disjointed conversations everyone twists the neck. Leave between the number of blinks, Dietrich is popped, and hit the hand."Oh, is this by any chance a blurted out that very?? 」'I think is quite stunning."Well, whatever good will" Boss 撫detsuke stretched long beard, while send glory and sharp eye toward the two men.In this case, breast of description to get? ' Who can refute the boss grinned and laughing muscles of the body, impressed, there was not. When El was flying guueeru, Dietrich also had to fly, but he doesn't does not know the details of the action taken by the El. Eventually were El majority description. But when it comes along the way, and within a short time, it hits to the problem.「………… But I'm sorry say again. ""Yes, so. I can ride reach limbs to the yoke and Stirrups. Transfer magic operative script magic conducting operation machine Magus engine in the... and moved the phantom Crystal Knight and operation in their I ' Appalled by the boss a lush mustache and disturb the imposing severe facial expression from the usual unusual to keep our eyes open. In Doom conducting operation machine exists because magic operative phantom Crystal Knight to move at all, it is also considerable force that is not in the power of one person out of control. Without it, even said yourself only, such as is usually believed in is not. Dietrich actually saw the guueeru movement behind the scenes is to look aside, who is skeptical of, it becomes 止mereyou anyone?「…… Try Plextor and it still okay. In it? It's this guy self-destruction in the magical Mana loss and what relationship there,? 」"That is to say say alternative to magic conducting operations aircraft can operate freely every imaginable feature and. So all the magic to unlock the safety limiter to refer today to Nergal, of aircraft with 回shimashite attacks. It is has the magic that so cannot maintain the structural strengthening ""It's ridiculous!?! So Mon doing any countermeasures told me! First of all because safety equipment as a measure to " Hell El boss is rough tone, at least in unreasonable frequently shaking head. He spat, to give up containing large amounts of breath is far too deep.' Indeed. Is about it get stuck with me as this is will and the measures are good? 」"It's natural! So I and made up, God forbid! Yeah, enough after. Crystal leg muscles fatigue rupture, he is your fault, too? A no it's your fault? 」"That is wrong. Somewhat not satisfied with words ""Shut up, you, all because of you?! 」"It is directly a recoil control full control. Took over phantom Crystal Knight responses to the maximum, usually expected load for ended up tearing beyond the limits. "See you now... I did no body tension, cats, normally one month safely move to. " Boss finally approached rely on heavenly hand on forehead. Treatment is no longer coming up here, boils down to one word. At this point in time enough to have a headache, but he suddenly I realized in the worst possible.See it! break leaps and bounds this guy even shaved, something really out? of?? 」"At the moment the chances are it. But may be to the Knights CAL date if high quality crystal muscles, so again a little longer " And after all is a matter of load, including and murmurs and El Leer, boss will sour facial expression.' POO!, it guess I better and hey's 立ちゃ because of Smith's Hey. Although so means I now soon managed to kidding hey do ' Speaking of natural protection does not exist because no other cavalry operations professionals you like hell so far is talk of course. Besides becomes rather than emergency measures to cope with this problem, in the portion equivalent to radical measures are required. Didn't can be improved in a short time. Later however the 見合waseyou measures on repair of the good 練reba response. There was so boss a realistic policy to decide in my mind, but unfortunately and in situ unreal going in there.' Be thinking some measures. Raise the Crystal muscular endurance is needed because " El boldly and without hesitation, everyone's vision
การแปล กรุณารอสักครู่..
#26: 工房へいこう
「そら、見つけたぜ」
「エル君確保ー！！」
「えーと、キッド、アディ？ 何故こんなところにいるのですか」
バトソンと別れ、ライヒアラ騎操士学園を目指して移動していたエルは、途中でオルター兄妹に捕まっていた。
二人とも現時点でエルより頭一つ分背が高いため、両腕をそれぞれ持ち上げるようにして捕まえるとエルの体が完全に宙に浮く。
エルの銀髪も相まって、まるで連行される某宇宙人状態だ。この世界に宇宙人がいるかは不明だが。
「いや、此処にいるのは単に偶然なんだけどよ」
「見つけたからには捕まえないとね！」
「え？ 僕は珍獣か何かですか？」
「似たようなもんだろ。あー、んで、どこに行こうとしてたんだ？」
二人の間でぶらーんと浮いたエルが観念したように溜息を吐く。
「いま学園では壊れた幻晶騎士シルエットナイトの修理が行われているはずですから。
ちょっと見学に行こうかと言うところです」
「そうなんだ。じゃ、このまま学園まで行っちゃおう！」
「二人とも、行くのはいいですけどその前に離してください」
そうして３人は授業のある日でもないのに学園へと辿り着いていた。
しばしば騎操士学科に出入りしているエルにとって、この場所は勝手知ったる何とやらである。
迷いなく目的地にたどり着くと、慌しく作業に勤しむ整備科の生徒達の邪魔をしないように、こっそりと工房の内部へと侵入する。
工房の内部は喧騒に満ちていた。
槌を振るう音、部品を吊り上げるクレーンの滑車の音、怒鳴り声、そして幻晶騎士の駆動音。
エルにとっては組み上げ作業を近くで見学したいのはやまやまだったが、鬼気迫る様子で作業する整備科の生徒達を見ていると、邪魔をするのは流石の彼でも気が引ける。
そのため、勢い作業の行われていない方向へと進むことになる。
彼らはまだ作業の行われていない機体の前に来ていた。
そこに据えられた幻晶騎士整備用の巨大な椅子の上には、天井からクレーンで吊るされた残骸としか表現できない金属の塊が鎮座している。
恐らくは幻晶騎士の胴体部なのだろう。
しかし外装がひしゃげ中身は骨格から歪んでいるため、エルはともかく双子はそれが一体何なのか、即座には把握できなかった。
それが置かれた場所、そしてこびり付くように僅かに残る装甲の紅い塗装がヒントとなり、彼らは漸くそれの正体に思い至る。
「こいつが……その、エルが乗ったグゥエール、ってやつか？」
じっと残骸を見上げるエルの横顔を伺いつつ、キッドがぽつりと問いかける。
「ええ。この装甲や、壊れ方には見覚えがあります。
本当に派手に壊れたことで……さすがに修理は後回しにされたようですね」
アディは言葉もなく、その完膚なきまでに破壊された残骸に見入っていた。
目の前のそれは、万の言葉よりも尚雄弁に、陸皇亀ベヘモスとの戦いの激しさを物語っている。
それは幻晶騎士を操ったことのない双子にも、容易に想像できるほどだった。
キッドもアディも、以前にエルの話を聞いて、彼がどれほどの危険に立ち向かってきたか、わかっているつもりだった。
しかし現実に目の前に示された残骸を見て、その想像以上の姿に言葉を失っていた。
まるで飴細工のように滅茶苦茶に歪んだ巨大な金属の塊。
それを為しえる力とは、果たしてどれ程強力なことであろうか。
それに立ち向かうという事は、果たしてどれ程危険なことであろうか――。
キッドは自分がいつの間にか血が引き真っ白になるほど強く拳を握り締めていた事に気付いた。
アディの目には、うっすらと涙すら浮かんでいる。
ほんの少し何かが違っていれば、エルはあの戦いで死んでいたかも知れない。
唐突に思い至ったその考えは、彼らの背筋を一瞬で寒からしめた。
何よりも、エルがそれだけの危険に立ち向かっている間、知らなかったとはいえ何もせずに居た自身への憤りが、彼らを内側から圧迫する。
言葉を失ったかのような二人の耳へと、エルの漏らした微かな呟きが届く。
「……しい」
「え？」
「壊れた機体もまた、美しい……」
「「……」」
ほう、と溜息をつくエルの横顔はまさに恍惚のそれ。
二人の表情が一気に曰く言いがたい微妙なものになっていく事に気付かず、エルは言葉を続けている。
「そう、形あるものが崩れ、後には残骸だけが残る……これが詫び寂びというもの。
この漂う寂寥感、廃れたものの想い……ふつくしい……」
双子の視線が一瞬だけ交錯し、第１３２回オルター兄妹会議は満場一致を見て無言のままにエルへの攻撃を決定した。
「！？ いっ……いひゃいいひゃい、いひはりらにするんれふは」
両側から頬をつねられたエルは珍しく涙目で抗議の声を上げる。
それを聞く双子は無表情で頬をつねり続けていた。
「やれやれ、どこのどいつだ、こんなとこではしゃいでやがるガキは」
しばらく頬をつねり続けられた後、漸く開放されたエルが両頬を押さえて二人に抗議していると後ろから声がかかる。
彼らが振り返るとそこには、頑強な体躯のドワーフ族……親方の姿があった。
野太い親方の声は、騒音の絶えない工房内でもよく響く。
「なんだ、銀色坊主エルネスティじゃねぇか、まった入り込んでやがるのか。
おめぇも好きだな、おい。あんま作業の邪魔すんじゃねぇぞ」
しかし、エルはやや呆れた雰囲気の親方を見てもおらず、その視線は親方の隣にいる人物へと注がれていた。
そこに居るのは幽鬼も斯くやとばかりの蒼白な顔色を浮かべ、目の下には色濃く隈が残り、以前は丁寧に撫で付けられていた金髪は見る影もなくボサボサとなった――ディートリヒだった。
一瞬記憶の中のディートリヒと印象が合わず、エルは思わず目を擦るものの、何度見直しても目の前のディートリヒはボロボロだった。
その雰囲気にも覇気はおろか、尊大ともいえた自信の一欠けらも残ってはおらず、ただ焦燥だけが感じられる有様だ。
「え、えーと……ディートリヒ……先輩？」
微妙に引き攣った笑顔で問うエルも自信がなさそうだ。
それくらい、今のディートリヒは変わり果ててしまっている。
「…………ああ、エルネスティか」
「え、えっと、一体何があったのですか？」
エルの言葉にディーは軋むように笑顔を作り、錆び付いたような声で話し始める。
「ふ、ふふ……少し……そう、少し、ちょっと、だ。
最近よく悪夢を見るんだよ……医務室の悪魔が、来る……。
おかげで、最近、寝不足でね。
そう、気を抜くと、奴が、く、やつが、奴がぐぶべっ」
喋っている間に悪夢の記憶がよみがえったのか、徐々に目の焦点が怪しくなり、世界の向こう岸へと届きかけたディートリヒを親方のチョップが引き戻す。
ディートリヒはしばらくその場で悶絶していたが、親方の一撃が効いたのかちゃんと正気に返っていた。
「ぬごぉぉぉ……ハッ、私は今どこへ……。
うおっほん！
まぁ私の事は良い。それで、エルネスティも居るという事は、君も説明に呼ばれたのか。
それなら手間が省けそうだな」
「ああ？ 銀色坊主が何を説明するんだ？」
「何って、グゥエールが壊れた原因が知りたいのだろう？
だからその原因・・を呼んだんじゃないのかい？」
彼はしばらくの間怪訝そうにディートリヒとエルの顔を交互に見ていたが、言葉の意味を理解するにつれ、むしろ怪訝な表情が深まってゆく。
「待て、ディートリヒ。それだと銀色坊主が原因でグゥエールが壊れたように聞こえるぞ」
「えっ？ その通りじゃないか………もしかして、知らずに呼んだのかい？」
「いや、そもそも呼び出したんじゃなくここに勝手に居たんだがな」
「「……え？」」
微妙に噛み合わない会話に全員が首を捻る。
数瞬の間を空けて、ディートリヒがぽん、と手を打った。
「ああ、これはひょっとして非常に余計なことを口走ったのかね？」
「見事にその通りだと思いますよ」
「まぁ、何でも良いが」
親方は長く伸ばした髭を撫でつけながら、二人に向けてギロリと鋭い視線を送る。
「この際、洗いざらい説明してもらおうか」
全身の筋肉を唸らせながらにたりと笑う親方に反論できる者は、その場にはいなかった。
エルがグゥエールを操縦していた時、ディートリヒもその場にはいたものの、彼はエルが行った操作の具体的な内容を把握しているわけではない。結局は説明の大半をエルが受け持つことになった。
しかしいざ説明を進めると、間を置かず問題へと突き当たる。
「…………すまんがもう一度言ってくれ」
「ええ、ですから。僕が乗っても操縦桿や鐙に手足が届きませんから。
魔導演算機マギウスエンジン内の魔法術式スクリプトを転写して、自分で演算して・・・・・・・幻晶騎士を動かしたのですけど」
豊かな髭を蓄え、普段から厳いかめしい表情を崩さない親方が珍しいことに目を見開いて驚愕している。
それも無理なからぬことで、そもそも幻晶騎士を動かす魔法術式は到底人一人の力では制御しきれないからこそ魔導演算機というものが存在するのである。
それを使わず自力だけなどと言われても、普通は信じられるものではない。
実際に背後でグゥエールの動きを見たディートリヒはともかく、親方が半信半疑の表情となってゆくのを誰が止めれようか。
「……百歩譲って、それはまぁいいとしよう。
それで？ それとこいつが魔力マナの途絶で自壊してるのと、どういう関係があるんだ？」
「つまり魔導演算機を代替すると言う事は、ありとあらゆる機能を自由に操作できると言うことです。
それでベヘモスにトドメをさす際に安全装置リミッターを解除して、機体の持つ全ての魔力を攻撃に回しまして。
構造の強化を維持できないほど魔力を使ってしまったのですよね」
「無茶苦茶じゃねぇか！！ そんなもん如何やって対策しろって言うんだ！！
そもそもが対策としての安全装置だってのに」
口調は荒くとも、親方はエルのしでかした無茶にしきりに頭を振っている。
彼が吐いた、諦めを多量に含む吐息はどこまでも深かった。
「確かに。それについてはこの操作は僕くらいしかやらないでしょうし、対策はいいのでは？」
「当たり前だ！ そんなもんぽんぽんと出来てたまるか！！
ああもういい、後は、だ。脚の結晶筋肉が疲労断裂してやがったが、アレもお前のせいか。
いやお前のせいだな？」
「間違っては居ませんが……何だか言い方が釈然としません」
「うるせぇ、やっぱりお前のせいか！！」
「あれは、直接制御フルコントロールの反動ですよ。
幻晶騎士のレスポンスを最大にして、普段想定される以上の負荷をかけてしまったために限界を超えて、断裂してしまったのです」
「お前なぁ……全身張り替えなんぞやった日にゃ、普通一月は無事に動くってのによ」
親方はついに額に手を当て天を仰いだ。もはやここまで来ては処置なし、の一言に尽きる。
この時点でも十分に頭が痛いが、彼はふと最悪の可能性に気付いてしまった。
「するってぇと何か、坊主が本気出せばどいつもこいつも壊れるってのか？」
「現時点ではその可能性が高いですね。
騎士団のカルダトアならば結晶筋肉の品質が高いので、もう少し長持ちはするかもしれませんけど」
結局は負荷の問題ですしね、などとのんびりと呟くエルを横目に、親方は渋い表情になる。
「ちっ、そいつぁ改善しねぇと鍛冶師の面目ってもんが立ちゃしねぇ。
とは言えそんなもんを今すぐどうにかする手段なんてねぇしな」
これまでにこんな無茶をした騎操士など存在しないため、対策が存在しないのも当然と言えば当然の話だ。
その上これほどの問題に対応するためには応急処置ではなく、相当根本的な部分での対策が必要となる。とても一朝一夕に改善できるものではなかった。
一先ずは今回の修理での対策は見合わせよう、後から対応策を練れば良い……そう親方は現実的な方針を心の中で決めようとしていたが、あいにくとその場には非現実的を地でいく存在が居る。
「ある程度の対策は考えてあります。要は結晶筋肉の耐久性を上げればいいのですから」
さらりと言ってのけたエルに、全員の視
「そら、見つけたぜ」
「エル君確保ー！！」
「えーと、キッド、アディ？ 何故こんなところにいるのですか」
バトソンと別れ、ライヒアラ騎操士学園を目指して移動していたエルは、途中でオルター兄妹に捕まっていた。
二人とも現時点でエルより頭一つ分背が高いため、両腕をそれぞれ持ち上げるようにして捕まえるとエルの体が完全に宙に浮く。
エルの銀髪も相まって、まるで連行される某宇宙人状態だ。この世界に宇宙人がいるかは不明だが。
「いや、此処にいるのは単に偶然なんだけどよ」
「見つけたからには捕まえないとね！」
「え？ 僕は珍獣か何かですか？」
「似たようなもんだろ。あー、んで、どこに行こうとしてたんだ？」
二人の間でぶらーんと浮いたエルが観念したように溜息を吐く。
「いま学園では壊れた幻晶騎士シルエットナイトの修理が行われているはずですから。
ちょっと見学に行こうかと言うところです」
「そうなんだ。じゃ、このまま学園まで行っちゃおう！」
「二人とも、行くのはいいですけどその前に離してください」
そうして３人は授業のある日でもないのに学園へと辿り着いていた。
しばしば騎操士学科に出入りしているエルにとって、この場所は勝手知ったる何とやらである。
迷いなく目的地にたどり着くと、慌しく作業に勤しむ整備科の生徒達の邪魔をしないように、こっそりと工房の内部へと侵入する。
工房の内部は喧騒に満ちていた。
槌を振るう音、部品を吊り上げるクレーンの滑車の音、怒鳴り声、そして幻晶騎士の駆動音。
エルにとっては組み上げ作業を近くで見学したいのはやまやまだったが、鬼気迫る様子で作業する整備科の生徒達を見ていると、邪魔をするのは流石の彼でも気が引ける。
そのため、勢い作業の行われていない方向へと進むことになる。
彼らはまだ作業の行われていない機体の前に来ていた。
そこに据えられた幻晶騎士整備用の巨大な椅子の上には、天井からクレーンで吊るされた残骸としか表現できない金属の塊が鎮座している。
恐らくは幻晶騎士の胴体部なのだろう。
しかし外装がひしゃげ中身は骨格から歪んでいるため、エルはともかく双子はそれが一体何なのか、即座には把握できなかった。
それが置かれた場所、そしてこびり付くように僅かに残る装甲の紅い塗装がヒントとなり、彼らは漸くそれの正体に思い至る。
「こいつが……その、エルが乗ったグゥエール、ってやつか？」
じっと残骸を見上げるエルの横顔を伺いつつ、キッドがぽつりと問いかける。
「ええ。この装甲や、壊れ方には見覚えがあります。
本当に派手に壊れたことで……さすがに修理は後回しにされたようですね」
アディは言葉もなく、その完膚なきまでに破壊された残骸に見入っていた。
目の前のそれは、万の言葉よりも尚雄弁に、陸皇亀ベヘモスとの戦いの激しさを物語っている。
それは幻晶騎士を操ったことのない双子にも、容易に想像できるほどだった。
キッドもアディも、以前にエルの話を聞いて、彼がどれほどの危険に立ち向かってきたか、わかっているつもりだった。
しかし現実に目の前に示された残骸を見て、その想像以上の姿に言葉を失っていた。
まるで飴細工のように滅茶苦茶に歪んだ巨大な金属の塊。
それを為しえる力とは、果たしてどれ程強力なことであろうか。
それに立ち向かうという事は、果たしてどれ程危険なことであろうか――。
キッドは自分がいつの間にか血が引き真っ白になるほど強く拳を握り締めていた事に気付いた。
アディの目には、うっすらと涙すら浮かんでいる。
ほんの少し何かが違っていれば、エルはあの戦いで死んでいたかも知れない。
唐突に思い至ったその考えは、彼らの背筋を一瞬で寒からしめた。
何よりも、エルがそれだけの危険に立ち向かっている間、知らなかったとはいえ何もせずに居た自身への憤りが、彼らを内側から圧迫する。
言葉を失ったかのような二人の耳へと、エルの漏らした微かな呟きが届く。
「……しい」
「え？」
「壊れた機体もまた、美しい……」
「「……」」
ほう、と溜息をつくエルの横顔はまさに恍惚のそれ。
二人の表情が一気に曰く言いがたい微妙なものになっていく事に気付かず、エルは言葉を続けている。
「そう、形あるものが崩れ、後には残骸だけが残る……これが詫び寂びというもの。
この漂う寂寥感、廃れたものの想い……ふつくしい……」
双子の視線が一瞬だけ交錯し、第１３２回オルター兄妹会議は満場一致を見て無言のままにエルへの攻撃を決定した。
「！？ いっ……いひゃいいひゃい、いひはりらにするんれふは」
両側から頬をつねられたエルは珍しく涙目で抗議の声を上げる。
それを聞く双子は無表情で頬をつねり続けていた。
「やれやれ、どこのどいつだ、こんなとこではしゃいでやがるガキは」
しばらく頬をつねり続けられた後、漸く開放されたエルが両頬を押さえて二人に抗議していると後ろから声がかかる。
彼らが振り返るとそこには、頑強な体躯のドワーフ族……親方の姿があった。
野太い親方の声は、騒音の絶えない工房内でもよく響く。
「なんだ、銀色坊主エルネスティじゃねぇか、まった入り込んでやがるのか。
おめぇも好きだな、おい。あんま作業の邪魔すんじゃねぇぞ」
しかし、エルはやや呆れた雰囲気の親方を見てもおらず、その視線は親方の隣にいる人物へと注がれていた。
そこに居るのは幽鬼も斯くやとばかりの蒼白な顔色を浮かべ、目の下には色濃く隈が残り、以前は丁寧に撫で付けられていた金髪は見る影もなくボサボサとなった――ディートリヒだった。
一瞬記憶の中のディートリヒと印象が合わず、エルは思わず目を擦るものの、何度見直しても目の前のディートリヒはボロボロだった。
その雰囲気にも覇気はおろか、尊大ともいえた自信の一欠けらも残ってはおらず、ただ焦燥だけが感じられる有様だ。
「え、えーと……ディートリヒ……先輩？」
微妙に引き攣った笑顔で問うエルも自信がなさそうだ。
それくらい、今のディートリヒは変わり果ててしまっている。
「…………ああ、エルネスティか」
「え、えっと、一体何があったのですか？」
エルの言葉にディーは軋むように笑顔を作り、錆び付いたような声で話し始める。
「ふ、ふふ……少し……そう、少し、ちょっと、だ。
最近よく悪夢を見るんだよ……医務室の悪魔が、来る……。
おかげで、最近、寝不足でね。
そう、気を抜くと、奴が、く、やつが、奴がぐぶべっ」
喋っている間に悪夢の記憶がよみがえったのか、徐々に目の焦点が怪しくなり、世界の向こう岸へと届きかけたディートリヒを親方のチョップが引き戻す。
ディートリヒはしばらくその場で悶絶していたが、親方の一撃が効いたのかちゃんと正気に返っていた。
「ぬごぉぉぉ……ハッ、私は今どこへ……。
うおっほん！
まぁ私の事は良い。それで、エルネスティも居るという事は、君も説明に呼ばれたのか。
それなら手間が省けそうだな」
「ああ？ 銀色坊主が何を説明するんだ？」
「何って、グゥエールが壊れた原因が知りたいのだろう？
だからその原因・・を呼んだんじゃないのかい？」
彼はしばらくの間怪訝そうにディートリヒとエルの顔を交互に見ていたが、言葉の意味を理解するにつれ、むしろ怪訝な表情が深まってゆく。
「待て、ディートリヒ。それだと銀色坊主が原因でグゥエールが壊れたように聞こえるぞ」
「えっ？ その通りじゃないか………もしかして、知らずに呼んだのかい？」
「いや、そもそも呼び出したんじゃなくここに勝手に居たんだがな」
「「……え？」」
微妙に噛み合わない会話に全員が首を捻る。
数瞬の間を空けて、ディートリヒがぽん、と手を打った。
「ああ、これはひょっとして非常に余計なことを口走ったのかね？」
「見事にその通りだと思いますよ」
「まぁ、何でも良いが」
親方は長く伸ばした髭を撫でつけながら、二人に向けてギロリと鋭い視線を送る。
「この際、洗いざらい説明してもらおうか」
全身の筋肉を唸らせながらにたりと笑う親方に反論できる者は、その場にはいなかった。
エルがグゥエールを操縦していた時、ディートリヒもその場にはいたものの、彼はエルが行った操作の具体的な内容を把握しているわけではない。結局は説明の大半をエルが受け持つことになった。
しかしいざ説明を進めると、間を置かず問題へと突き当たる。
「…………すまんがもう一度言ってくれ」
「ええ、ですから。僕が乗っても操縦桿や鐙に手足が届きませんから。
魔導演算機マギウスエンジン内の魔法術式スクリプトを転写して、自分で演算して・・・・・・・幻晶騎士を動かしたのですけど」
豊かな髭を蓄え、普段から厳いかめしい表情を崩さない親方が珍しいことに目を見開いて驚愕している。
それも無理なからぬことで、そもそも幻晶騎士を動かす魔法術式は到底人一人の力では制御しきれないからこそ魔導演算機というものが存在するのである。
それを使わず自力だけなどと言われても、普通は信じられるものではない。
実際に背後でグゥエールの動きを見たディートリヒはともかく、親方が半信半疑の表情となってゆくのを誰が止めれようか。
「……百歩譲って、それはまぁいいとしよう。
それで？ それとこいつが魔力マナの途絶で自壊してるのと、どういう関係があるんだ？」
「つまり魔導演算機を代替すると言う事は、ありとあらゆる機能を自由に操作できると言うことです。
それでベヘモスにトドメをさす際に安全装置リミッターを解除して、機体の持つ全ての魔力を攻撃に回しまして。
構造の強化を維持できないほど魔力を使ってしまったのですよね」
「無茶苦茶じゃねぇか！！ そんなもん如何やって対策しろって言うんだ！！
そもそもが対策としての安全装置だってのに」
口調は荒くとも、親方はエルのしでかした無茶にしきりに頭を振っている。
彼が吐いた、諦めを多量に含む吐息はどこまでも深かった。
「確かに。それについてはこの操作は僕くらいしかやらないでしょうし、対策はいいのでは？」
「当たり前だ！ そんなもんぽんぽんと出来てたまるか！！
ああもういい、後は、だ。脚の結晶筋肉が疲労断裂してやがったが、アレもお前のせいか。
いやお前のせいだな？」
「間違っては居ませんが……何だか言い方が釈然としません」
「うるせぇ、やっぱりお前のせいか！！」
「あれは、直接制御フルコントロールの反動ですよ。
幻晶騎士のレスポンスを最大にして、普段想定される以上の負荷をかけてしまったために限界を超えて、断裂してしまったのです」
「お前なぁ……全身張り替えなんぞやった日にゃ、普通一月は無事に動くってのによ」
親方はついに額に手を当て天を仰いだ。もはやここまで来ては処置なし、の一言に尽きる。
この時点でも十分に頭が痛いが、彼はふと最悪の可能性に気付いてしまった。
「するってぇと何か、坊主が本気出せばどいつもこいつも壊れるってのか？」
「現時点ではその可能性が高いですね。
騎士団のカルダトアならば結晶筋肉の品質が高いので、もう少し長持ちはするかもしれませんけど」
結局は負荷の問題ですしね、などとのんびりと呟くエルを横目に、親方は渋い表情になる。
「ちっ、そいつぁ改善しねぇと鍛冶師の面目ってもんが立ちゃしねぇ。
とは言えそんなもんを今すぐどうにかする手段なんてねぇしな」
これまでにこんな無茶をした騎操士など存在しないため、対策が存在しないのも当然と言えば当然の話だ。
その上これほどの問題に対応するためには応急処置ではなく、相当根本的な部分での対策が必要となる。とても一朝一夕に改善できるものではなかった。
一先ずは今回の修理での対策は見合わせよう、後から対応策を練れば良い……そう親方は現実的な方針を心の中で決めようとしていたが、あいにくとその場には非現実的を地でいく存在が居る。
「ある程度の対策は考えてあります。要は結晶筋肉の耐久性を上げればいいのですから」
さらりと言ってのけたエルに、全員の視
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Let's go to # 26
「 studio Sora, ensuring you 」
「 l thank you!! " Well,
「 adipocytokine, kid? 」
Batson and why you are here, which has moved toward the school El La ayahito Reich soldiers, which was altered. For two more El at high head, arms are lifted to the El catch body floats in the air. At El with silver hair, as if taken in a certain space.It is unclear whether people in this world. No,
「 here is simply an accident, you will find that you don't catch 」
「! "
「? What is my name? " I would like
「. So, uh, where are going? " Resigned sigh ぶらーんと El floated out between of them. It will be broken in the school is now
「 phantom silhouette crystal Knight night repair. 1993) is to say just go and visit"Yes. Well, let's go to a school like this! "
「, but also good, please go away before and 」
3 people of teaching is not to get to school. At the entrance to the soldiers often ayahito of El, this place is and know what to do. At the lost and make it to the destination, so as not to strive for the students of the way to work, and getting into the interior of the workshop. TooInside the studio full of hustle and bustle. At the sound of the hammer to lift crane pulley, yell, and parts of the drive sound crystal knight. At the L I was made to work I want to visit the nearby, watching the students of the Department of maintenance work, all of the dreadful the way he feel guilty about it. Therefore, at the course of the work carried out in advance and no direction. They are made up of work has not yet come in front of the machine body. AtA huge improvement for Phantom Crystal Knight chair mounted on the ceiling can be expressed only in the wreckage and hanging crane which is located a lump of metal. Will probably phantom Knight at the crystal body. However, the contents of the exterior crush from skeletal distorted, but the twins that what can not grasp immediately. At the place where it is located, and stick to that painted red armor remain slightly hints, they gradually realize the nature of it.
「... This is... The superstar ale on El, man? " To stay up to see the remains of the profile that kid, just ask.
「 well. And this is the way to recognize. In the big broken... Really... It seems like the repair to postpone 」
additive without words, without exception to break into the wreckage. At the front of it, than a million words in a speechA violent fight against Rio ベヘモス turtle. In the twin at it without manipulating the Phantom Crystal knight, as you can imagine. Well, if the kid ady before l hear him? How dangerous, was going to be okay. But look at the reality in front of the wreckage, imagine that was lost for words. A huge chunk of metal to get distorted like candy. It can be done at the power and theReally? How powerful it is. At that face is how much it would be dangerous. I noticed he was pulling up kid in the blood as his fists tightly. In the eyes of tears, and even slightly floating. If it is a little bit of something, she died in that battle. Suddenly the idea to have the 寒から them back in a moment. More than anything,.El hazard so much while facing own indignation to be nothing in it, but I didn't know them to pressure from the inside. And to the two ears like a lost, a faint murmur at any of the EL.
「…… New: 」
「? " The aircraft broken
「 beautiful... "
「「……」」 Well, that's just sigh and profile of ecstasy. Notice of becoming a subtle thing to say at once that they lookShe continued. So,
「 form, leaving only the remains... Then... This is a humble simplicity. This feeling of loneliness in the heart... It is going out of... No comb... " The twins look up for a moment with a mixture of two alter the 132nd Annual Conference unanimously to remain silent to El attack.
「！？ Such as... I said, "I said, ゃいいひゃい RIRA from both sides to the 」
cheeks pinched El rare tears in protest. AtListen to it on the twin cheek pinch expressionless.
「 too well, who on earth, in a place like this for a while and let the kids 」
cheek pinch continues after the open, and finally to protest to the cheeks, but ell from behind. Looking back at them, and there are a group of dwarf stature... Strong... There was a master. The boss of a deep voice carries well, no noise in the workshop. What
「, Ernestine, silver boyIn entering and waited. Love you but at the. The work is done the way very much. However, she 」
seen master slightly horrible atmosphere, its eyes to the person next to the boss. If there is a ghost at the pale, and therefore there is the color, with strong shadows under the eyes, blond, before which is not polite shadow -- was unkempt and Dietrich. AtFor a moment, and Dietrich impression in my memory, I rub the eyes El many times, but it was out of sight Dietrich review. The spirit in the atmosphere at that stupid and arrogant, though the piece remains confident, did not feel it is just only.
「, well... Dietrich... Senior? " El is subtle smile to ask my cramped diffidently. As it is now, Dietrich is changed. Too"... Oh, you 」
「 Ernestine, eh, what happened with you? " In the words of l d like to make my smile, like a rusty start speaking voice.
「, ha ha... A little... So, just a little. At last, I see a nightmare... Well... In the infirmary, the devil will come... In recently, thanks to a lack of sleep. So, the guy at the air out of the man, and brought back memories of a nightmare while speaking, all ten Zen priests of the 」
guyGradually becomes the focus of the weird boss chop Dietrich to reach to the other side of the world. Dietrich, at that time, so the boss blow back because it was insane. I was
「 for... Now, where am I to... Twitter is too! Well, my thing is good. So, that's the Ernestine, you may be called to account. It saves me the trouble that I 」
「 ah?What will I be shaven silver? "
「, what would you want to know the cause of broken superstar ale? The cause of so - called, isn't it? " Well he's looking alternately so puzzled for a while, and Dietrich El as the understanding of the meaning of words, the deepening rather puzzled expression. Wait,
「 Dietrich. 」
「 gosh it sounds like a superstar ale broken caused by silver, boy? Isn't that... Isn't it?To call it? "
「 at all calls are not here to stay there 」
「「…… "What?" Not all the conversation with the subtle to think hard. Number of blinks at the open, but Dietrich pop hit. Oh, this is
「? He very possibly too? " I think he
「 and 」
「 well, whatever they may be 」
master long beard is wound with a sharp glance and Guiro for two people. AtIn this case, the
「 who wish to tell the boss will be impressed with the 」
grinned at the whole body muscle can laugh, not in their field. El too too when operated at Yale, Dietrich superstar in situ, he doesn't have to understand the concrete content of the operation performed by the EL. In the end, most of which will take charge of the EL. But when it comes to promote at the problem to come into contact with and without a pause. Too"... Excuse me, but tell me again, 」
「. I could not reach the control stick and stirrups on the limbs. With the transfer of the magic in the magic formula calculating machine magus script engine operation, is calculated by myself... To rich reserves, but 」
crystal Knight moves, the boss always maintain a stern look rare Yan opened his eyes wide, surprise. It is a natural at itIn the operative to move the illusion magic crystal Knight of magic are calculated from the machine is out of control in the power of being alone. At said that without the use of it, and usually is not believable. To actually see the movement of Dietrich behind superstar Yale anyway, who is the master of go and dubious expression as you can.
「…… He is little, it is good oh. At the then? And you and I in the disintegration of the disruption of magicWhat kind of relationship? " The alternative is to say
「 mage processing machine, and say all kinds of functions and can be operated freely. The limiter is released when the safety device to finish off ベヘモス. So he was one of the machine, turn on all magic attacks. Don't keep strengthening structure is unreasonable 」
「 you had so magic!! Such measures as how I do I say!! AtBecause the safety device as a countermeasure, the rough 」
tone master wagging head frequently done el. He spat at the resigned sigh heavily to deeper.
「 certainly. I will have no choice but to do much about it, this is good for? " It is quite natural
「! And the friendliest accumulate so much!! Oh, it is already good at, after. Crystal of leg muscle fatigue and fracture, but it is because of you. AtNo, it is because of you? "
「 wrong not... Be... It can be said that 」
「 I don't satisfied with all of you!! "
「, direct control of full control of reaction. To maximize spectral response of crystal knight, is usually assumed to exceed the limit load for you, I 」
「 with tears... What day did systemic re-covering, usually a month without moving to 」
to youThe boss finally saw the hand on the forehead. No longer make it this far without treatment, in a word. At this point in the well head is painful, he suddenly noticed the worst possibilities. What do you
「 and earnest priest, but I always break out of it? " At the present time is
「 possibility is high. The Knights of the カルダトア if the quality of the crystal is high, but the muscles may be a bit more at the end of last 」
fluid is the problem of the loadIn laid-back El leer, murmured and become a master. It is
「, improvement, and with the face of a blacksmith's green-bamboo. And say for you so much right now, that means you are not such a reckless men ever to 」
ayahito. There is no story, of course, of course, and measures do not exist. At the top in order to deal with this problem, first aid, but not in fundamental part and the countermeasures are necessary.It wasn't very much can be improved in a short time. We stopped at once so that the repair measures from the following measures may be even-tempered... The boss is so realistic policies in mind to decide, but unfortunately and in situ unreal to take place there. Have a certain amount of
「 measures. In short, the durability of the crystal muscle of raising 」
lightly off all the visual el
「 studio Sora, ensuring you 」
「 l thank you!! " Well,
「 adipocytokine, kid? 」
Batson and why you are here, which has moved toward the school El La ayahito Reich soldiers, which was altered. For two more El at high head, arms are lifted to the El catch body floats in the air. At El with silver hair, as if taken in a certain space.It is unclear whether people in this world. No,
「 here is simply an accident, you will find that you don't catch 」
「! "
「? What is my name? " I would like
「. So, uh, where are going? " Resigned sigh ぶらーんと El floated out between of them. It will be broken in the school is now
「 phantom silhouette crystal Knight night repair. 1993) is to say just go and visit"Yes. Well, let's go to a school like this! "
「, but also good, please go away before and 」
3 people of teaching is not to get to school. At the entrance to the soldiers often ayahito of El, this place is and know what to do. At the lost and make it to the destination, so as not to strive for the students of the way to work, and getting into the interior of the workshop. TooInside the studio full of hustle and bustle. At the sound of the hammer to lift crane pulley, yell, and parts of the drive sound crystal knight. At the L I was made to work I want to visit the nearby, watching the students of the Department of maintenance work, all of the dreadful the way he feel guilty about it. Therefore, at the course of the work carried out in advance and no direction. They are made up of work has not yet come in front of the machine body. AtA huge improvement for Phantom Crystal Knight chair mounted on the ceiling can be expressed only in the wreckage and hanging crane which is located a lump of metal. Will probably phantom Knight at the crystal body. However, the contents of the exterior crush from skeletal distorted, but the twins that what can not grasp immediately. At the place where it is located, and stick to that painted red armor remain slightly hints, they gradually realize the nature of it.
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